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【絵本レビュー】 『もとこども』

作者:富安陽子
絵:いとうひろし
出版社:ポプラ社
発行日:2016年5月

『もとこども』のあらすじ:


「世の中は、〈こども〉と〈もとこども〉でできている」

ぼくのおじいちゃん、わたしのママ、はたまたむかいのおねえちゃん。
先生だったり、看護師だったり、はたまた大工をやってたり。
今はいろいろ、でももっとむかしは、みーんなみんな―

〈もとこども〉!

『もとこども』を読んだ感想:


「君のママもね、昔はこどもだったんだよ」
スカイプから私の母の声が聞こえます。

「えええええ〜」とゲラゲラ笑う息子の声も聞こえます。信じていないようです。

でも母がこの絵本を読んで以来、息子から事あるごとに「ママもちいさいときてをあらわなかったからおなかいたくなったの?」などと聞かれるようになりました。

私は子供の時、自分が大人になるとは思っていませんでした。子供は子供で、大人は大人として生まれて来たと思っていたのです。猫や犬がペットであり続けるように、子供も子供のままなのです。だから誰かに、「大人になったら何になりたい?」と聞かれると、返事に困りました。小さな私の頭の中では、「働くのは大人のする事。私は子供だから」という考えが巡っていたのですが、どうも大人というのはこの質問が大好きなようです。

よく見ていると周囲の子達は、「野球選手」とか「消防士」とか「花屋」なんて答えがすらすらと出て来ていて、まるで覚えてあった台詞のようです。それを聞いてもやっぱり「子供は働けないのに。。。」と思っていた私。まあそんな考えも五、六年生になる頃には自然に消えていったんですけどね。親も一安心できるかといえばそうでもなく、なんと私は小説家宣言をしたのでかなりがっかりしたのではないでしょうか。「私楽できそうもないね〜」と母に言われたのは覚えています。

その後何十年も経ち、それなりに恋もし、悪さもし、旅もして、経験も積んで、私は母親になりました。ならないと思っていた大人にもいつの間にかなっていました。残念ながら小説家にはなりませんでしたけどね。それは次の人生の楽しみにとっておいてもいいかなと思います。

noteを初めて、良くも悪くも子供時代のことをよく考えるようになりました。見返すことで子供時代をもう一度生きている気持ちにもなれるけど、何より嫌だった思い出が少しずつ癒されていくような気もします。


『もとこども』の作者紹介:


富安陽子
1959年東京都に生まれる。児童文学作家。 『クヌギ林のザワザワ荘』で日本児童文学者協会賞新人賞、小学館文学賞受賞、『小さなスズナ姫』シリーズで新美南吉児童文学賞を受賞、『空へつづく神話』でサンケイ児童出版文化賞受賞、『やまんば山のモッコたち』でIBBYオナーリスト2002文学賞に、『盆まねき』で野間児童文芸賞を受賞。「ムジナ探偵局」シリーズ(童心社)、「シノダ!」シリーズ(偕成社)、「内科・オバケ科 ホオズキ医院」シリーズ(ポプラ社)、「やまんばあさん」シリーズ「妖怪一家 九十九さん」シリーズ(理論社)、YA作品に『ふたつの月の物語』など、著作は多い。



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