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2022暮「新しい曹流寺の青写真」

■ そもそも、お寺って何だろう?

 日本の寺院は、その数約7万7千。金閣寺や銀閣寺、東大寺のように歴史的文化的価値があり、観光寺院として国内外に知られる寺院もあれば、私が修行した永平寺や総持寺のように修行僧堂が併設された寺院もありますが、多くは、江戸時代に始まった檀家制度によってなんとか存続している、家族経営の小さな「お寺」です。
 
 慶長17(1612)年の清洲越で当地に移転した曹流寺も、お檀家さまの先祖供養を執り行い、亡くなった方を偲ぶお寺ですが、名古屋市中心部のお寺は、平和公園にお墓が集められているという事情もあり、お墓参りで気軽に立ち寄ることが叶いません。かつては、囲碁や生け花などの稽古場として開放し、賑わっていましたが、その数も徐々に減りました。約60年間にわたって小唄のお稽古をしてくれていた先生も、5月で90歳。ついに来年の3月でお辞めになります(本当にご大儀さまでした)。
 
 仏教をはじめとする宗教は、人を救うものです。しかし、現代ではその救いも科学に取って代わられ「神仏なんか信じたって、意味がない」というような唯物論的な考えに塗り替えられつつあります。同時に、高額の献金と引き換えに偽りの「救い」をちらつかせ、家族を崩壊させるような宗教団体が存在しているのも事実です。
 
 日本の寺院は、曹流寺は、心の底から救いを得られる場所だと言えるでしょうか。

■ 弔うお寺であり、救うお寺でもありたい

 私は、曹流寺を「先祖供養を執り行う場所」という形だけに収まらないお寺にしたいと考えています。供養と同時に、生きている人を救う場所にしたいのです。
 
 この曹流寺に生を受けた私は、お檀家さまに支えられて僧侶を続けることができています。僧侶としての覚悟を決め、坐禅の実践に邁進するとお約束した通り、日々のお勤めに加えて自身の修行もさせていただいております。正直に申し上げますと、欲に溺れてしまいたいと思うことや、生きるのが嫌になってしまうことも、かつてはありました(ほんのちょっとだけ、今も……)。時にはお檀家さまをハラハラさせながらも、僧侶であるという責任感をよすがに、ここまで歩みを進められました。
 
 対して、日本の自殺者は年間約2万人、孤独死は年間約3万人、小中学校の不登校児は約20万人、成人の5人に1人は結婚経験がありません。先行きの見えない時代で、人生の地図を見失った方々や、未来に希望を持てない子供たちが「救いなんか、あるわけがない」と、孤独を抱えたままうつむき、立ちすくんでいるのです。

 この数年、自分の修行を兼ねて開催している坐禅会や摂心へは、多くの方が参禅されています。遠く関東や九州から来られる方もあり、そのバックグラウンドも様々です。また、2020年11月から始めた「TikTok」アプリでの仏教法話には、多いときは2000件近くのコメントが寄せられます。中には、人生の苦しい胸の内を吐露される方も少なくありません。日本の仏教界と、それを取り巻く環境に歯がゆい思いをしてきた私ですが「お寺にもまだできることがある、そして、曹流寺は社会貢献ができるお寺としての可能性があるはずだ」という手応えを感じています。
 
 新栄という恵まれた立地の曹流寺は、多くの人が立ち寄れる公共施設として、お寺にしかできない「救いの場」としての機能を持てるでしょう。もっと開かれたお寺になれば、お檀家さまにも気軽に訪ねていただけます。これからの10年、20年でどのような発展ができるか、皆さまとも相談しながら計画していきたいです。
 
 お檀家さまが「我が家の菩提寺は、あの曹流寺なんだ」と誇りにしていただける場所にするのが、僧侶として挑戦するにふさわしいであろう、次なる私の目標です。

■ 旗振り役としての「仏教徒ちゃん」

 戦後の焼け野原の中、バラック小屋から再建し、70年かけて継ぎを当てるように維持してきた曹流寺は、皆さまもご存知の通り、立派な伽藍を誇れるようなお寺ではありません。いずれは改築なり建て替えなりを計画する必要があるだろうと、29代目から住職を務める堀部家が、3世代かけて家族で節約を重ねてきました。
 
 新たな目標ができた今、真剣に計画を進めていきます。経営者や会社員の方はご承知のように、一人でやれることには限界があります。定期的な坐禅会以外にも、どのような形で社会貢献ができるお寺にしていくか、どうか知恵をお貸しください。
 
 私の取り柄は「旗振り役」です。24万人を超えるフォロワーを抱えた日本一の僧侶TikToker「仏教徒ちゃん」という側面が、新しい曹流寺の実現に大いに役立つかと思います。お檀家さまにできるだけ負担がかからないようにするためにも、TikTokでの(少々型破りな)活動をご理解ください。
 
 僧侶としてのあり方に影響を与えてくれた「仏教のアレ編集部」の遊心和尚と道宣和尚を筆頭に、私を応援してくださる方々が全国にたくさんおられます。それも嬉しいことではありますが、身近なお檀家さまの方々の存在は別格です。その思いは、今後も揺るぐことは決してないということも、合わせてお伝えいたします。
 
※このお便りは、私の裏方作業を担ってくれているプロのライターさんに、数時間にわたって熱弁したものをまとめてもらいました。

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