「何者か」になりたい貴方へ

『ワナビ』という言葉がある。正直、私は好きな言葉ではない。
 意味としては、「want to be(○○になりたい)」を略したネットスラング。何故か小説家・作家志望者に使われることが多く、また、「理想が高いくせに未熟である者」や、「非現実的なあがきをしている者」という、揶揄を込めた意味もある……らしい(故に、私はこの言葉が好きではない)。

 さて、どうして私が唐突にこのような文章を書き始めたかと言うと、ある方の言動が、どうしても許せなかった故の行動である。
 直接彼に言って聞かせ、諭すほど親しい仲ではないし、正直見ていて腹が立つどころの話では無いので、何も言わず、一方的にブロックしてしまったので、後はもう、彼の存在を、忘れればいいだけの話ではあるのだけれど。

 私は趣味で小説を書いている。もっとも、今からプロを目指すほどもう若くは無いけれど、かといって、せっかく書いたのだから誰かにちょこっとでも見てもらいたいとか、どのくらい実力がついたかなと思う事もあるので、たまーに公募に出してみたりとか。そんな感じの趣味。

 そんなわけで、私のTwitterには、似たような立場の方が、たくさんいる。
 中には実際プロになられた方もいらっしゃるし、小説だけではなくイラストも描いてることもあり、様々なジャンルの方と、ありがたいことにつながらせていただき、色々為になる情報を得させてもらっている。

 彼とは、どういう経緯でつながったかは、正直覚えていない。
 もしかしたら繋がりたいタグに反応してくれたのかもしれないし、私の作品を読んでくれたのかもしれないし、まったく別の理由かもしれない。
 こちらからフォローした可能性は……たぶん無い。と思う。

 彼は、youtubeにチャンネルを持っている方で、他にも小説を書いている……らしいのだけれど、正直私は(映像作品としてはMMDを作ってはいるものの)ゆーちゅーばーという存在にあまり興味が無いため、申し訳ないけれど、結局、どんな活動されている方なのかはよくわからない。
 Twitterでは、いつも「誰かとコラボしたい」と呟かれているものの、一体何の、どんな内容のコラボなのかも、正直わからない。

 ただ、時々、妙な事を呟く。

「○月までにフォロワーさんが○○人達成できなければ死にます」

 もちろん、ただのフォロワー稼ぎのセルフ炎上マーケティングの可能性もある。
  逐一他人の狂言を、本気にする必要が無いこともわかっている。

 ただ、クリエイター云々以前に人間として、ものすごーく不快極まりないつぶやきであるとは常々思っており、一言モノ申した方がいいのでは……? と思いつつも、コレは相手にしたほうが負けなヤツ……と思って、我慢を続けていた。
 ……昨日までは。

 その日、彼は呟いた。

「○月までにフォロワーさんが○○人達成できなければ死にます。それが嫌なら、応援してください」

 反射的に、ブロックボタンを押していた。

 ぶっちゃけると、クリエイターの端くれとして、この発言は絶対駄目だと思っている。

 彼のやっていることは創作でもなんでもなく、自分の命を盾にした、ファンに対する脅迫だ。
 正直言うと、私は彼の創作をまったくもって理解できないが、それでも、そんな彼を良いと思って、YouTubeのチャンネルを登録している人が(たぶん)いるわけで(……うん、たぶん)。

 冒頭の『ワナビ』がダメとは、私は言わない。一般的な認識だと、叶いそうもない身分不相応な夢でも、本人が幸せであるなら、見続ければ良いと思うし、他者がどうこう口出しするべきではないと思う。

 けれど。コレは、コレだけは、絶対に違う。
 私は、目的と手段が入れ替わり、あんな言動をする彼を、クリエーターと、認めたくない。

 あと、せめて有名になりたいのなら、それ相応の努力を自分でしろと。
「誰かとコラボがしたい」と言うのは、コラボ相手の名前(と相手のファン)を使った、他力本願の自分の売名の為ではないかと、ここまでくると勘ぐってしまう。 

 これを見ている、彼のような「何者か」になりたい貴方へ。
 フォロワーやPVを、ただの「数字」で、終わらせないでください。
 フォロワーやPVの向こう側に、貴方と同じ、「人間」がいることを、忘れないでください。
 そして、自分の作ったものを楽しむ人たちを、想像して、より良いモノを作ってください。
 決して、彼らを悲しませるような行動だけは、しないでください。

 最後に。
 正直、これを書くことで、私の気持ちとは相反し、彼が注目を集めてしまうのではないかと危惧はしているのだが、私ごときの発信力ではたかが知れていると思い、書かせていただいた。

 ……決して、彼を探さないでください。絶対に。

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