国立大学の抱える問題

国立大学の経営協議会の議事要録を平成29年から最新のものまで読んだ印象を纏めました。

長いです。


 学費値上げの検討を行っている大学は、おおよそ、学外委員から提案されて、大学側が慎重に検討をし始めていると感じます。
 例外として、授業料を下げることで優秀な学生を集めようという提案がある大学もありました。

 値上げの提案は、学生に充実した教育や研究機会の提供をしようといったことからではなく、財政的な問題からされるように思います。
 例えば運営費交付金の削減や、人事院勧告による人件費の増加、消費税の引き上げへの対応として、最終的な手段に授業料の値上げも考えられるという大学もありました。

 国からの予算については、見かけ上の削減は止まっているが、内訳として目的型の経費が増加しており、各国立大学の裁量で使用できる経費の減少は止まっていないといった指摘が複数ありました。
 具体的な指摘として、国立大学法人運営費交付金等は28年度比で25億円増となっているものの, 新たに国立大学法人機能強化促進費が45億円措置され,国立大学法人運営費交付金は20億円の減となっており,使途が自由な基幹経費は減額となっているといったものもありました。
 国大協を通じて、運営費交付金の削減を止めるよう訴える大学が幾つかありました。中には独自に経営協議会が声明を出し、学長もそれに賛同する形で、財務省に訴える大学さえありました。
 授業料値上げについて、大変良いことだと思うとの意見があった藝大の経営協議会とは大違いだと思います。

 人件費については、各大学が様々な方法で削減をしているようです。
 前年比で凡そ2億円の削減を行った大学や、70人近く教員を減らした大学もありました。
 よく見かける方法としては、定年等で退職した教員の後を補充せずに凍結したり、非常勤講師で穴埋めを行ったりすることや、5人の退職者が出たら1人補充するというものです。
 それでも、教育の質の担保を大事にしているといった配慮を思わせる記述もあり、大学運営に関わる人たちは難しい立場にあるのだなと思います。

 人件費削減に恐らく関係があるものとして、年俸制が挙げられます。
 簡単にいうと成果に応じて給与が増減するというものですが、実際のところ、こちらは人件費を削減することにはあまり役立っていない感じがします。
 新規教職員は必ずこの制度が適応されますが、現職の人たちについては推奨するにとどめている大学が多いです。現職が年俸制に変更すると、場合によっては減給となってしまう恐れがあるため、普及が遅いようです。
 能力のある人や若手の教職員を集めやすくなるといった狙いがあるようですが、雇用が不安定化する気がします。

 その他、研究経費を五年間で47億円から37億円に、補助金収益が半減以上になり激減、先生方に直接渡す教育研究基盤経費も年々減少傾向だという大学や、非常勤講師を削減し、約 1 千万円の経費削減を行ったところもありました。

 財務省が主導しているという一法人複数大学化、大学の統廃合は、経費削減の関係で検討されているように思います。
 学生へのメリットは二の次になっていて、統合が決定してから細かな検討が行われるところもあります。
 法人統合をした場合、相手の大学に決定権を握られないか危惧したり、自分の大学が優位に立つにはどうしたら良いか検討していたり、ぱっと見メリットよりもデメリットを多く感じてしまいますが、この統合の流れは避けられないと考える大学が少なくないようです。
 少子化を踏まえて検討するところもよく見ましたが、少子化への対策を訴えないと、大学は先細りするばかりではないかと感じます。
 人口減は、コントロール出来ない所が最大の問題点だとの指摘もありましたが、若者への投資が足りないことが問題ではないかと感じます。
 自然災害であって失政は原因ではないかのような印象を受けます。

 少子化に関連して高齢化がありますが、リカレント教育を重要視している大学が多いです。
 一度社会に出た人たちに、学習の機会を設けるといったものですが、これは自己収入の増加に繋げようというもののようです。
 また、留学生を多く集めようとする大学もありました。

 資金運用を行っている大学も多々あり、ハイリターンを得られるようにハイリスクな運用を勧める声もありました。
 円建て外国債券を購入している大学もあるという指摘や、比較的安全であるが利率が高い電力債の購入を検討しているといった大学もありました。

ひとまずここで区切ります。

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