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FC岐阜vs鹿児島ユナイテッドFC 試合前考察

はじめに

6月12日の第12節でFC岐阜はホーム岐阜メモリアルセンター長良川競技場で鹿児島ユナイテッドFCと対戦する。岐阜はこれがホーム6試合目。ここまで3勝1分1敗とホームで勝ち点を積むことに成功している。ホームでは第6節の松本山雅FCで3失点を喫したが、それ以外の試合では無失点。横山体制になって以降は、リーグ戦4試合2勝2分。ホームでは3試合無失点を継続している。そんなホームで迎え撃つは、強力な攻撃力と守備力を兼ね備えた首位・鹿児島。強敵相手だが、八戸戦から中6日と全ての選手がフレッシュな状態でこの一戦に臨むことができる。かなり強力な相手だが、昇格争いに喰らいつくためにも、ここから始まる上位陣との連戦を総力戦で乗り切り、まずは首位撃破といきたい。
 
一方の鹿児島は、4連勝中、さらに、3試合連続完封勝利中とまさに絶好調で、「手がつけられない」状態だ。ここまで11試合全てで得点を奪い、リーグ3位の20得点。失点も複数失点を喫した試合は1試合のみで、わずか7失点とリーグトップタイの少なさ。攻撃時は前線に人数をかけ、必ずシュートまで到達するスタイルを貫き、常に10本以上のシュートを放ち、相手ゴールを脅かしている。
 
両チームの過去の対戦成績は、岐阜の2勝1分3敗と1つ負け越しているが、ほぼ互角の相性。ここ3試合は1点差のゲームが続いている。岐阜ホームでは、1勝1分1敗と全くのイーブン。昨季の長良川での対戦では、終盤に川西翔太(現カターレ富山)がゴールネットを揺らし、岐阜が1-0で勝利を収めている。

両チームのスタッツ比較
[両チームのスタッツ比較]

両チームのこれまでの戦いによるスタッツを比較すると、攻撃の数値では、全般的に岐阜が鹿児島を上回っている。パスポイントで比較すると、岐阜はリーグ3位の129.50、鹿児島はリーグ7位の121.46を記録している。そこまで差はついていないが、岐阜の方がパス回しの本数は多いといえる。ドリブルポイントも岐阜は16.17で鹿児島を上回っている。これはおそらく若いサイドアタッカーの2人が引き伸ばした数値だろう。攻撃の総ポイントでは、岐阜はリーグ2位、鹿児島はリーグ5位とどちらも上位にランクインしている。両チームの攻防はとても楽しみだ。
 
守備ポイントでは、鹿児島が大きく上回っている。やはりリーグトップの少なさを誇る鹿児島は守備で粘り強さを見せている。

[鹿児島のプレーエリア、リーグ平均との比較]

上図は、鹿児島のプレーエリアとリーグ平均との差分を表したものだ。これを見ると、全体的なプレーエリアは、鹿児島も岐阜同様にGKから中盤、そして両サイドの色合いが多い。リーグ平均と比べると、まず、最終ラインでのプレー時間が長い。ここでの組み立てが1つ鹿児島の攻撃を支えている。さらに、両サイドを比較すると、鹿児島は右サイドからの攻撃が他クラブに比べて、多いことを示している。左サイドのアタッカーである米澤令衣はゴール前に入り込む動きが多く、左サイドで組み立てるというよりは、右サイドで組み立て、クロスからゴール前に迫る形を主としている。さらに、ゴール前も薄い赤色、つまりリーグ平均よりも少し多い数値を示している。攻撃時は、ゴール前の守備がかなり鍵となるだろう。

両チームの予想布陣
[両チームの予想スタメン①]

今回も2パターンで予想してみた。まず①では、岐阜は4-4-2を予想した。GKは松本拓也。桐畑和繁も復帰が近いだろう。4バックの右に舩津徹也、左に宇賀神友弥を予想。センターバックの予想は難しいが、ここでは小山新と岡村和哉を予想した。サブとして、フレイレが怪我から復帰、大西遼太郎、服部康平も予想できる。中盤ボランチには柏木陽介と本田拓也を予想。パサーとなる柏木の相方には、怪我から復帰が予想される本田拓也を配置。サブとしては、柏木のポジションには庄司悦大、本田のポジションでは、大西遼太郎、ヘニキがいる。サイドハーフは右に窪田稜、左に村田透馬を予想。鹿児島の攻撃に対するディフェンス面も考えると、運動量が豊富な2人をスタートから起用することが良いと感じる。2トップには藤岡浩介と田中順也を予想した。ここまでこの2人のコンビは例がないが、ポストプレーの上手い田中が下がり気味のポジショニングをとり、藤岡が高い位置をキープする。ンドカ・チャールスや石津大介、そしてガンバ大阪戦で結果を残した富樫佑太のスタート起用も考えられる。
 
一方の鹿児島は、いつもの4-2-1-3を予想。鹿児島は相手によってシステムを変えるチームではないため、フォーメーションはこれで確実だろう。スタメンに関しても、現在好調のチームを大きくは変更しないはずだ。メンバーも基本的には前節のアスルクラロ沼津戦とほぼ同じと予想。GKに白坂楓馬。4バックの右に渡邉英祐、左に薩川淳貴。センターバックには広瀬健太と岡本将成。センターバックは不動、サイドバックのサブとして、星広太や砂森和也が控える。ボランチには木村祐志と中原秀人を予想。サブとして、野嶽寛也がいる。トップ下には圓道将良を予想。ここまで好調だったロメロ・フランクが前節負傷交代。怪我の程度は分からないが、岐阜戦は欠場が予想される。3トップはスタメン不動の3人。右に五領淳樹、左に米澤令衣、トップに有田光希が入るだろう。またサブには、ここまで途中から10試合に出場している山本駿亮や牛之濱拓らが控えている。

[両チームの予想スタメン②]

2パターン目では、岐阜の3バック、3-4-2-1のシステムで予想した。3バックの場合には、右に小山新、左に舩津徹也、中央に岡村和哉の8を予想。ウィングバックに窪田と宇賀神。トップに田中順也、シャドーの位置に藤岡浩介、そして吉濱遼平を予想する。中盤ボランチで配給役の柏木のような起点となるプレーヤーをもう1人柏木よりも前のポジションに配置することで、起点を複数作った。吉濱は守備時のプレスバックなどもこなせるので、ぜひスタートから試したい。

鹿児島戦に向けた個人的見解による岐阜の戦い方

鹿児島戦はまず何より守備で高い集中力を90分通して継続することが求められる。この試合もまずは「先制点」を岐阜が奪いたい。前半早い時間に鹿児島に主導権を握られると、かなり厳しい試合が予想される。さらに、先手を取ってから、受け身になることは避けなければならない。鹿児島がかなり攻撃的なスタイルである以上、先制点から2点目を先に奪うことで、相手に焦りのマインドを生み出したい。ポゼッションで複数人かけて攻撃するクラブに圧力をかけ、焦りを生むことができれば、パス・シュートにズレやミスが生まれるだろう。

[鹿児島戦 鹿児島のスタイル]

まずは鹿児島のスタイルを整理する。攻撃時は、サイドバックが高い位置に飛び出し、ボランチは縦関係になり、トップ下が最前線にまで上がる2-3-1-4のような超攻撃的なシステムに、高い戦術理解度が組み合わさり、質の高い攻撃を仕掛けてくる。特徴的な要素の1つが、サイドバックの運動量。サイドバックが中央気味にポジションを取ることで、最終ラインから直接ウィングにパスが供給される。ウィングがサイドに張って、相手のサイドバックをひきつけた裏のスペースにサイドバックが入り込む。この中から外への動きに対して、岐阜はサイドハーフが中盤低い位置まではついていき、上手くセンターバックやボランチとスイッチして常にマーキングしたい。つまり、岐阜の守備の1つのポイントが、サイドハーフがしっかりプレスバックしてくることだ。またサイドバックも裏のスペースをつくようなパスに対する警戒を常にもち、簡単に出させないような体の向きを意識したい。
 
もう1つ警戒したいポイントが、縦関係になったボランチから供給されるサイドに展開するパスや縦に入れる楔のパスだ。鹿児島のキーマンの1人が木村祐志。攻撃時彼から出されるパスは鹿児島の攻撃の1つのスイッチとなる。ここに対して最終ラインから出されるパスや横パスに対して、厳しくチェイスできる選手がこの試合ボランチのポジションで必要となる。万全の状態であれば、本田拓也がこういった危険な芽を摘む能力に1番長けているため、起用したい。
 
他に警戒したいプレイヤーはやはりFW陣。特に有田光希と米澤令衣は好調を維持している。有田は現在2試合連続ゴール中、リーグ屈指の決定力を誇る有田には、良い形でシュート体勢を作られたくない。米澤も得点力が高いが、警戒したいのは、低い位置に下がった時のゲームメイク能力だ。FWということもあり、得点力がフォーカスされやすいが、この米澤が攻守において鹿児島を支えている。ゲームメイク能力も高く、守備時はファーストディフェンスも厳しく行う。彼のモチベーションを上げるようなプレーはなるべくさせたくない。サイドバック、ボランチでイライラさせるくらい強く厳しくマークしたいプレイヤーだ。

[鹿児島戦 岐阜の攻撃のポイント]

一方で鹿児島のスタイルにも弱点はある。鹿児島はハイラインで、中盤をコンパクトに形成する。守備ブロックの間のスペースは付きづらいため、重要なのが、オフザボールの動き。その1つのポイントが、サイドバックの裏のスペース。攻撃時サイドバックが高い位置をとるため、その裏が開きやすい。当然、鹿児島もそこのケアはしてくる。基本的には、センターバックとボランチが同サイドの裏のスペースをケアする。岐阜が突きたいエリアは、そのボランチが下がったことで生まれる中央のエリア。ここで起点を作りたいため、予想では、ポストプレーが上手い田中をトップに配置した。田中が収め、ボランチが攻撃時は縦関係に、サイドバックが少し中央気味にポジションを取り、田中をフォローする。中央のエリアで1つ起点ができると、センターバックやサイドバックを釣り出すことができ、その裏にサイドハーフやトップの選手が入り込みやすい。
 
そういう意味でも、両サイドハーフの運動量が攻守において鍵を握る。オフザボールの動きからの裏抜け、高い位置からの仕掛け、プレスバックと複数の重要なタスクを担うことができるのは、やはり好調を維持している窪田・村田の2人ではないだろうか。この2人のスピードを生かすためにも、最近は相手に疲労が溜まる後半からの起用が多いが、今季の2人はスタートからでもしっかりタスクをこなす能力が携わっている。窪田をスタートで起用し、相手ディフェンスを掻き回したところで、得点力の高い畑潤基やクロスが得意な菊池大介らを投入も効果的だろう。

さいごに

下位に沈むヴァンラーレ八戸と痛いスコアレスドローに終わった岐阜だが、横山体制では未だ負けなし、ホームでは無失点を継続していることはポジティブな要素だ。岐阜はここから鹿児島(H)、福島ユナイテッド(A)、テゲバジャーロ宮崎(A)、FC今治(H)、いわきFC(H)と上位対決が5試合続く厳しい日程。ただこの上位対決で勝ち点を積み上げることができれば、現在昇格圏内の2位につけるいわきFCとの勝ち点差「9」を縮めることができる。前半戦の1つの山場となる首位・鹿児島戦で浮上のきっかけとなる「6ポイントマッチ」。ここで勝ち点3を積み上げ、上位連戦に弾みをつけたい。

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