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FC岐阜vsヴァンラーレ八戸 試合前考察

はじめに

6月5日の第11節でFC岐阜はホーム岐阜メモリアルセンター長良川競技場でヴァンラーレ八戸と対戦する。岐阜は監督交代後3戦2勝1分と好調を維持。前節は難しいアウェイでのAC長野パルセイロ戦。前半に先制点を奪うものの、ビハインドに強い長野の勢いを止められず一時逆転を許した。しかし後半終盤の得点力がついてきた岐阜は後半アディショナルタイムに村田透馬のクロスを窪田稜が押し込み土壇場で同点に追いつき、勝ち点1を獲得した。その後、中2日で迎えた天皇杯2回戦J1のガンバ大阪との一戦は、岐阜がガンバディフェンスを崩し前半早い時間に2点を奪ったが、ここからガンバの怒涛の攻撃を防ぐことができず、ミスも絡み同点に。試合は延長戦の末、2-4で敗れた。それでもJ1クラブ相手に2点を先行し、90分では2-2のドローゲームで終えるなど、リードしてからの戦い方など新しい課題と共に粘り強さとガンバ相手にパスで崩しゴールを奪ったことは今後の戦いに向けて大きな収穫を得たと言える。ガンバ戦から中3日で八戸戦と過密日程だが、チーム一丸で勝利を収めたい。

両チームのスタッツ比較
[八戸戦 両チームの主なスタッツ]

上表はこれまでの戦いによる両チームのスタッツを比較したものだ。J3は第10節まで終了しているが、八戸は新型コロナウイルスによる影響により1試合未消化となっている。
 
スタッツを比較すると、すべての数値において岐阜が八戸を上回っている。パスポイントでは、八戸のほぼ2倍となる114.98とリーグ3位の数値を記録。パス回しが岐阜の攻撃を支えていることがわかる。パス、ドリブルポイントなど攻撃に関する数値を合計した岐阜の攻撃ポイントは、158.28でリーグ2位の数値となっている。一方で八戸は、攻撃ポイントはリーグ最下位の103.67、守備ポイントも123.79とこちらもリーグ最下位の数値となっている。ボール支配率はやはり岐阜が54.4%で上回っているが、三浦監督時代の常に自分たちでボールを支配するスタイルから少しずつ変わってきているため、前節長野戦までの数値から下がっている。

[八戸戦 両チームのホットゾーン]

上図は両チームのこれまでの戦いによるプレーエリアを示すホットゾーンを表したものだ。お互い同じようにサイドからの攻撃を主としていることがわかる。岐阜はボランチからサイドハーフの位置が色濃くなっていて、両サイド同じような色合いをしている。一方の八戸も色合いはほぼ同じだが、どちらかというと、右サイド高い位置がより色濃くなっている。さらに、最終ラインからサイドの位置にかけて色がついていて、ボランチ陣は中央というよりも、ウィングバックや前線のフォローを主とするため、本来の立ち位置のあたりはそこまで色が濃く出ていない。

両チームの予想布陣
[八戸戦 予想スタメン①]

スタメンの予想については、今回も2パターンを考えてみた。メインで予想するパターンと八戸、岐阜それぞれのオプションとして考えられるパターンを用意した。まずは①。岐阜は3-4-2-1を予想。120分戦い抜いた天皇杯のガンバ大阪戦から中3日での試合のため、そこから大幅にメンバー変更が予想される。GKは変わらず松本拓也。3バックは右に大西遼太郎、左に舩津徹也、中央に服部康平の3人。ここには本石捺の起用も考えられる。ボランチにはヘニキと柏木陽介を予想。庄司悦大や石坂亮人の抜擢も考えられるが、庄司に関しては、ガンバ戦長い時間プレーしたため、ベンチを予想する。ウィングバックと前線に関しては、強みである豊富な選手層から主力組は休養万全と考えられる。まずウィングバックでは、右に菊池大介、左に宇賀神友弥を予想。右は窪田稜のスタメンも考えられる。トップには石津大介、その下に藤岡浩介とンドカ・チャールスがシャドーで入る。シャドーには吉濱遼平の起用もあるだろう。
 
一方の八戸は、3-3-2-2を予想。こちらはミッドウィークに試合がなかったため、前節をベースにスタメンを予想した。GKは蔦颯。ただここ最近失点が増えていることから、服部一輝や小池大喜の抜擢も予想できる。3バックは右に板倉洸、左に小林大智、中央に下堂竜聖を予想する。アンカーに山田尚幸。ここには相田勇樹、佐藤和樹らも予想できる。ウィングバックの右に丹羽一陽、左に國分将。トップ下2枚には、江幡俊介と渡邊龍を予想する。ここにはミスター・ヴァンラーレの新井山祥智も考えられる。2トップには萱沼優聖と岐阜に相性が良い有間潤を予想した。有間のところには島田拓海も予想できる。

[八戸戦 予想スタメン②]

上図が2パターン目の予想スタメン。岐阜は4バックシステムの場合を想定。この場合には、右サイドバックに舩津、左に宇賀神。センターバックに大西と服部。ボランチに柏木とヘニキ、右に窪田、左に藤岡。そしてトップ下に吉濱遼平を予想し、トップには石津が入る。横山体制でも藤岡は左サイドでスタートすることが多く、4バックの場合には左に入るだろう。サブとして、両サイドとトップをこなせる富樫佑太やトップでポストプレーに長けている田中順也らも起用が予想される。両者ともにガンバ戦では存在感を示していた。
 
一方の八戸は3-4-1-2のパターンも考えられる。メンバーとしては大きな変更はないが、ボランチに山田と相田を予想した。前節得点を決めた佐藤もドイスボランチの場合はスタメン起用が多い。

八戸戦に向けた個人的見解による岐阜の戦い方

スタッツを比較しても、基本的にボールを保持するのは岐阜になるだろう。その中でどのように八戸ディフェンスを崩していくか。個人的に感じる1つの攻撃作が、岐阜も得意としているサイド攻撃からのクロスだ。
 
八戸はここまで15失点のうち、セットプレーとクロスから8失点を喫している。セットプレーも直接からは失点しておらず、ファールによるFKから蹴り込まれ、ゴール前で競り負ける失点がほとんどだった。クロスボールに対して、ゾーンディフェンスで守る八戸のディフェンス陣が、少しボールウォッチャーになることが多い。つまり、岐阜もサイド深い位置に進入しクロス、アタッキングサードでファールをもらいそこからのセットプレーが大きなチャンスとなる。

[八戸戦 八戸の守備陣形]

ではどのようにサイド深い位置まで進入するか。まずは八戸の守備陣形を整理する。基本的には3-3-2-2でも3-4-1-2でも同じように5-2-1-2のような形で守備し、サイドよりも中央を固めている。両ウィングバックが上下動をおこなってサイドにボールが渡った時に対応する。サイドで人数をかけてディフェンスするというよりも、中央での組み立てに対して人数をかけてプレスしていくディフェンスで対応する。
 
サイド深い位置からクロスが供給される時、もう1点意識したいのが、ペナルティーエリア内に人数をかけることだ。その1つのポイントが、ボランチのポジショニング。攻撃時は、シャドーの藤岡・ンドカがサイドのフォローに向かいたいので、トップ下のスペースが開く。ボランチが縦関係になって、このスペースを図上ではヘニキが埋める。そこからサイド深く到達した時に、ボランチもゴール前に迫り、人数をかけることができれば、八戸のマークが整理できず、セカンドボールも岐阜が拾いやすい。

[八戸戦 サイドでの崩し方]

もう1点意識したいのが、中央で組み立てて押し上げるよりも、最終ラインからサイドに渡し、サイドに人数をかけて、敵陣深い位置に進入することだ。つまり、最終ラインからサイドにかけての組み立てが鍵を握る。上図はそのポイントを表したものだ。ここでは、3バックで臨んでいる場合を例としている。両ワイドのセンターバックがサイド高い位置まで持ち上がり、ウィングバックの選手はより高い位置でプレーしたい。上図は右サイドでの場合。大西がハーフライン近くにポジショニングをとる。ただ、その時に八戸はボールホルダーに対して、パスコースを限定してくる。岐阜としては、そのパスコースを塞ぐディフェンス陣の間に進入し、そこに積極的にパスを供給したい。ボールが渡った後は、ワンタッチ・ツータッチで展開できるように、ボールホルダー以外の選手のオフザボールの動きが大事だ。
 
ただここで、重要なのが、リスクヘッジすること。大西がサイドラインに近いところまで開くため、中央のスペースをしっかり埋める必要がある。大西が上がった場合には、服部・舩津がしっかりとスライドして、逆サイドのウィングバックはより低い位置に下がることも重要となる。また大西から服部に下げ攻撃をやり直した時には、GK松本が服部と舩津の間にポジションを取り、舩津は左サイドラインに素早くポジションを移したい。この辺りの動きを素早くすることで、八戸のスライドが間に合う前に、逆サイドで図のような同じ形を作ることを意識したい。

[八戸戦 岐阜の守備の形]

一方で、ディフェンスの時間帯も警戒すべき点がある。八戸は攻撃時最終ライン含めてほとんどがハーフラインまで上がってくる。ボランチがより下がり気味でパスの供給役となり、ワイドのセンターバックがハーフライン付近でサイド幅をとる。また特長なのが、この板倉・小林にボールが渡ったとき、ドリブルでサイド打開してくることがある。両ウィングバックが岐阜のウィングバックを引きつけ、内側のスペースを開けて、そこに入り込んでくるため、藤岡・ンドカらがしっかりこのドリブルに最後までついていきたい。
 
長野戦同様に、最終ラインは両WBが飛び出した場合には、しっかり最終ラインがスライドして4バックの形を構成することがこの試合も求められる。(3バックで臨む場合)ただ八戸は中央から組み立てるため、長野戦の後半にやっていたようなシャドーが中央でパスコースを切ってからサイドに流れるディフェンスが有効に感じる。つまり、5-4-1でセットするよりも、5-2-2-1の形でセットする方が八戸対策にはなるように感じる。
 
さらに、警戒すべきプレイヤーが、トップ下での起用が予想される渡邊龍だ。彼は後ろ向きでボールを受けてから前を向く能力が高い。この中央で縦パスを受けて素早く前を向き、サイドに開いたウィングバックや裏抜けを狙うFWにパスを供給する。この対策として、個人的に期待するのが、ヘニキだ。対人、特に後ろ向きでボールを受けるプレイヤーに対して間合いを詰めて対応することが上手いヘニキが渡邊を厳しくマークしたい。彼に良い形でボールを受けさせなければ、八戸の攻撃を停滞させることができる。加えて、やはり若い選手のドリブルに対して、長野戦の失点のように、後追いではなく、ドリブルコースを予測して対応したい。

さいごに

ガンバ大阪との対戦で、岐阜はJ1ガンバのディフェンスを崩して2得点を決めた。攻撃に関しては、公式戦ここ6試合で15得点とかなり好調を維持している。守備では失点が重なっているものの、ガンバ戦で自分達のミスが失点に直結してしまうことが露見した。天皇杯の旅は終わったが、そういった攻守において多くの収穫を得た。この収穫した材料を必ずリーグ戦に活かさなければならない。逆に言うと、ここから数試合は、後半戦に向けても、非常に重要となる。このガンバ戦で得た学びを活かし、さらに「新化」した岐阜を創り上げ、J2昇格を叶えたい。

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