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高校3年 卒業

滑り倒したけどセンター試験もなんとか終わり、

あとは前期の合格発表を待つばかり。

もし国公立に落ちたら京都の芸大に行こう。

もうやれることはない。

そんな気持ちで卒業式を迎えることになる。

2年生からずっと一緒のディズニーは、卒業式の日に同じクラスの女の子に告白するんだと張り切っていた。

なんの根拠もないけど、上手くいくよと肩を押した。

やらないよりは、やった方がいいじゃんね。


学ランを着るのも最後。

卒業式の直前、僕は地元の制服専門店に行って、裏ボタンを新調することにした。

学ランのボタンは全部で5つ。

このボタンは直接縫い付けられているのではなく、裏ボタンというボタンで後ろから留めている。

改造制服はあまりそそられなかったけど、そのままの学ランを着るのも嫌だった僕は

中学の頃の小さな学ランを短ランのように愛用し、上着の詰襟を外して地元ヤンキーたち御用達の改造制服専門店で販売している変な裏ボタンでデコレーションして学校に通っていた。

でも、もう最後だから新しい裏ボタンにしたい。

それまでは龍の図柄が入ったものだった。

これも正直そこまで好きではなかったが、ヤンキー文化がなくなっていた当時、改造制服は下火だったので、生産している工場がないらしく入手が本当に難しかったのだ。

久しぶりに改造制服専門店に行く。

制服コーナーに行くと、裏ボタンを見つけた。

裏ボタンはボタンに合わせて、5個で1セット。

一つ目を手に取る。

「香 工 静 藤 ⭐︎」

なんだこれは。

必死に考える。

あ!

工藤静香だ!

古い。

センスが古すぎる。

今どき学ラン着るやつのどこに工藤静香のファンがいるんだ。

候補から即外れる。

しかし、なぜか残っているのは"おニャン子クラブ"のメンバーの名前入りのものばかりで、ロクなデザインがない。

仕方なく裏ボタンから謎にチェーンが生えてる、厨二病オーラ満載のものを購入。

龍のやつよりはまだいいか。


卒業式の日。

これからの新生活のために、みんなが浮き足だっていた。

式を終えての教室から昇降口へ向かう。

途中、見たことのない下学年の女の子たちに呼び止められる。

「第二ボタンください!」

マジか!

おおぉぉ!

俺、実はモテてたんだなと嬉しい気持ちは浮かんだものの、アリに渡したいからと断る。

他のボタンでもいいからというので、ボタンを渡す。

僕に彼女がいることを知って、泣きながら去っていった。

ごめんよ。


でも、初めての会話が告白。

それは成功しないだろうよ。。。

泣き顔を見てしまい、とても悪いことをしてしまった気持ちで外に向かう。

昇降口では様々な後輩たちが待っていてくれた。

演劇部はもちろん、3年間の高校生活で出会った沢山の後輩たちから花束やお祝いの言葉をもらう。

入学した時はほんとにクソだなと思っていた高校だったけど、なんだかんだ3年も通うと思い出満載だ。

良き出会いをありがとう!

後輩たちに別れを伝えて、その後は演劇部の同級生メンズたちと顧問の角刈りメガネに会いに行く。

実は角刈りメガネの本名を僕らは知らなかった。

特殊な読み方をするらしいその名前の読み方を教えるのは、卒業する日だ!

そんなことを一年の頃から言っていたから、卒業式の日はなにがなんでも聞いてやる!と息巻いていた。

名前を教えてもらった。

とある地域ではあまり良い意味で使われない読み方の名前だった。

なるほど。でも、だからなんやねん。

記念撮影をして、お別れをした。

翌日、クラスで打ち上げをした。

学校近所の公民館でBBQをやる。

みんなの私服が新鮮だった。

ディズニーは姉の彼氏の服を全身借りてきたと息巻いていた。

これから告白するぞ!と張り切ってるもんだから、クラスの男達はテンションMAXだ。

BBQでお腹も満たされて、次はカラオケに行った。

誰ともなく、steady&coの春夏秋冬をかける。

これからはそれぞれの進路。

毎日一緒だった僕らも点でバラバラの道。

もう、お昼にお弁当を食べながらパンツを見ることもない。

同窓会しよう!

そんなことを言いながら、騒げるだけ騒いだ。

ふと気付くとディズニーと、ディズニーのお目当てのWちゃんがいなくなっていた。

これは告白しに行ってるな。

邪魔しないでおこう。

みんなでニヤニヤして行く末を待つと、なんにも気づいていないあそうたまきこーじは今日もポルノグラフィティのサウダージを熱唱していた。

大人しいやつがはっちゃける姿はやはり面白い。

めちゃくちゃ盛り上がった。

そうこうしてるとディズニーとWちゃんが手を繋いで戻ってきた。

みんなに冷やかされる。

2人はすっごく幸せそうな顔で照れていた。

遠距離だけど、変わらず仲良しでいてほしい。


そして僕も、彼女と仲良くい続けたいなと改めて思っいながら帰路に着いた。

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