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高校1年 秋③ フィアンセになりたいようなそうでもないような日

コミケとかじゃないと外に出なくなった彼女がある日

「映画を観に行きたい」

と言い出した。

外に連れ出すチャンスだとばかりに、喜び勇んで了承する

何を観たいの?

と聞くと

「少女革命ウテナがいい。これなら及川光博も出てるからみっちーも観たいでしょ?」

と。

全然何言ってんのかわからなかったけど、どうも及川光博が好きと公言していた俺に気を遣ってくれたセレクトだということは理解できた。

優しいところあるじゃん!

なんなのかわかんないけど、行ったろうじゃないの。

及川光博も出てるらしいしね。

余談だけど、僕が及川光博のことが好きなのは、彼は徹底して自分のことが好きだからだ。

自分を「王子」と自信を持って言える人はなかなかいない。

自分にいつも自信のなかった僕からするとぶっ飛んだ、でも憧れる対象でもあったのだ。

CDも何枚か持っていた。

曲はダサイなーというのが素直な感想だ。

でも、あのダサさも含めて彼の魅力なんだ。

僕は僕にないものを持った人が好きらしい。


映画館に着く。

明らかに異質な感じの人たちがたむろしている。

なんというか、そう。

多分、その映画のキャラクターのコスプレをしてる人たちなんだ。

でも、その映画を知らない僕からしたら、だいぶ浮いてる服装の人たちが集まってる危ない世界だった。


映画の中身は1ミリも理解できなかった。

及川光博の声をしている、ベルサイユの薔薇にでてきそうな王子様キャラが出てきたときだけが、

「及川光博が声優してるんだな」という意味で理解できる瞬間だった。

ストーリーなどは全く覚えていない。

あまりにわからなくて何度も時計を見てしまった。

中学生の時に見てクソつまんねーなと後悔した12モンキーズ以来の意味不明な映画だと思った。

いや、単に話を聞いてなかっただけかもしれないけど笑

そうこうしてるうちに映画もラストへ。

エンディングで流れたのは及川光博の フィアンセになりたい だった。

僕が知ってる フィアンセになりたい とえらい違いだった。

でも、及川光博らしい王子様っぷりが出てたし、彼女を外に連れ出せたしよかったなと思った。

今日は彼女とデートがてら及川光博の曲を映画館で聴くために来たのだ。

そうだ。

そうに決まってる。

映画は多分観てない。

そうに決まってる。

だから、感想聞かないでほしい。

ずっとそう思いながら帰路へ着いた。

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