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(日記)公園の情事

「人間は10代の頃に手に入らなかったモノに執着する」

詠み人知らず

凄いものを見てしまった。

部活帰り女の子がパーカーにジーンズの出立ちの男の子とベンチに座っていた。背格好からして2人とも高校生だろうか。ベンチには背もたれがなく、端に女の子が座り、男の子は彼女に向かって跨ぐように座っていた。

ホテルにしけ込めない高校生カップルは出来る限りくっつこうと、特に男の方が女の子にすり寄っている形。
甘えているのか、男の子は女の子の肩に顔をうずめている。まあ、そういう年頃だよな、と眺めていたが、少し様子が違っていきた。

男の子が天を仰ぐように顔を上げた。それに伴って体から離れて2人に隙間が開く。
女の子の腕は男の子の背に回されているのかと思っていたのだが、男の子のパーカーの中にあるようで、裾がもそもそと動いている。
「これ触ってんな」
直感で、確信した。
どのレベルかは定かではない。
服の上から、下着の上から、あるいは直接。
しかし確実に、女の子の手で男の子の逸物の怒張を確認し、刺激している。
男の子は声を漏らしかけているのか、女の子はもう片方の手で男の子の口を塞いでいる。
まさかこんなにもあからさまな反応を外に曝け出しながら、局部は見せてないからセーフだと思っているのだろうか。もしそうであれば、随分とお花畑なカップルだし、そうでないなら性的嗜好の歪みが既に途轍もなく、いずれにせよ救いがない。そういうのは大好物だ。

スマホの画面を見ているフリをしているつもりだが、きっと出来ていない。
恍惚とした表情の男の子に比して、女の子の冷静で広い視野を俯瞰した眼光から目が離せない。なんでそんなことしてるのに冷静でいられるんだ? 見た目からして、遊んでいるタイプには見えない。むしろ学校では2軍。キラキラした1軍女子と話せなくもないけど、一緒に行動はしないレベルの。そんな女の子だからこそ、公園でのイチャつきにキャッキャするでもなく、ほどよく男の子のサルみを受け入れたりあしらったりしながら、周りに見せていい行動を選択し、かと思えば男の子の逸物を公園で握る大胆さも持ち合わせている。

男の子は何度かびくんびくんと小さな痙攣をしてぐったりしていたから、イカされたかなんかしたんだろう。
最初こそ、2人がどんなことまでして、何で満足してこの場を離れるのか、などと思っていたが、もはやその展開がどうでもいい。このミステリアスな女子高生に目が釘付けになってしまって、彼らのペッティングに気付いてから30分以上経っていた。

帰ろうと思っても、男の子はまた復活してイチャイチャしたがり、女の子は少しいなして、押されてまたパーカーの中に手を入れて、同じことが繰り返された。

見ながら、自分が彼らの行動から目が離せない理由のようなものがふと頭をよぎった。

「人間は10代の頃に手に入らなかったモノに執着する」

詠み人知らず

自分は高校時代は女性とはまるで縁がなく、大学になってまあ何とか色々と経験した人間だ。
もちろんそれはそれで申し分ないのだが、過去の恋愛遍歴の話になったりなんかして、高校時代の恋人が、なんて聞くと少しだけ胸がチクリとした。
誰も悪くないが、なんだか自分が途轍もなく重要なイベントを逃した気がしてしまったのだ。
そして、その思いが今も続いている。

きっと彼らはこの先、大きくなって、ああ、あんな馬鹿なこともしてたな、と思うだろう。思うだろうが、それを追い求めることは恐らくないのではなかろうか。
高校時代に恋人がいれば必ず公園でハメを外すとは限らないが、恋人とハメを外すためには恋人がいなければならない。
恋人がいなかった人間にとっての、もし恋人がいて、もし恋人とイチャイチャして、もし周りに人がいる中でペッティングをしたりされたりしていたら、という何重ものifを考えても到底しかたないのだけれど、そんなことがもし経験できていたら、彼らの行為にここまで釘付けにならなかっただろう。

だから、もう少し、もう少しだけ、どうなるかを見させて欲しい。


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