見出し画像

10分間の官能小説集

『10分間の官能小説集』という本がある。さまざまな作家が書く10分程度で読める官能短編小説集で、講談社文庫から第3集まで出ている人気のシリーズだ。

書き手も錚々たる面子で、最初の書き手は石田衣良だ。石田衣良は、『娼年』でも知られるように官能小説(あの作品を官能小説に括ると怒る人もいるかもしれないが)の書き手でもある。自身の短編小説でも、この本でもその筆力を出し惜しみすることはない。

この本も、小説現代編ではなかなか攻めた企画だったに違いない。まず作家のラインナップが素晴らしい。
石田衣良や小手鞠るいといったさもありなんという作家もいれば、睦月影郎や勝目梓といった官能小説として手堅くも抑えつつ、岩井志麻子、前川麻子といった映像界から文芸に入った人までリーチが広い。
特筆すべきはあさのあつこだ。『バッテリー』があまりにも有名なために、児童文学作家の名をほしいままにする彼女が描く官能とは如何なるものか。気になって、手に取らずにはいられなかった。

さて、これから本に没頭しよう。
10分だけで読み通してしまうなんてもったいない。一字一句、作家が何を考え、どのように言葉を選んで、物語が、官能の世界が紡がれているかを、しかと味わおう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?