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タイの駐妻が働くために登らないといけない壁

駐在員の妻、いわゆる「駐妻」がどのような環境に置かれているか、日本にいる友人やタイでできたタイ人の友人に話すと毎回びっくりされる。
時代錯誤だ、と。その度に「そうだよね、今は令和だよね、2020年だよね」と毎回思う。

状況は国によって違うので、今回はタイ駐妻の置かれている立場、働くためにはどのような壁を乗り越える必要があるかを説明したい。

※「駐夫」(駐在員の夫)として海外に暮らしている方もいらっしゃると思いますが、私自身が女性で、どうしても女性目線の話になってしまうので、記事内では「駐妻」というワードで進めます。

配偶者ビザでは働けない

タイで駐在員の配偶者としてタイに住む場合、通常「Non Immigrant O」(通称Oビザ)というビザを取得することになる。いわゆる配偶者ビザ。
駐在員に限らずタイで働く人の家族としてタイに住む場合に取得できるビザで、おそらく多くの駐妻は言われるがままOビザを取得してからタイに渡航するケースがほとんどだと思う。
Oビザを持っているだけでタイに住めるんだから本当にありがたい。

そんなOビザのデメリットが一つ、タイでの就労が禁止されていること。

タイは自国民の労働機会を守ろうとする考えが強く、「外国人が(合法で)働くこと」に対するハードルが結構高い。
タイで合法に働くためには「Non Immigrant B」(通称Bビザ)という別の種類のビザを取る必要があり、Oビザでタイに住んでいる限りは働くことができない。

つまりOビザを取得して駐妻になった場合、タイで働くことは100%不可能。
中には違法にアルバイトをしている方もいるけど、そういう人はここでは論外。

私の場合は働きたい気持ちが強すぎたのと渡航までに時間があったから、Oビザでは働けないことを事前に知っていたけれど、お子さんがいる方や渡航までに時間の余裕がない方は、Oビザで渡航してから働けないことを知ってびっくり!という方もいるよう。
実際私にも何度か質問をいただくことがあった。

駐妻が働くにはどうすれば良いのか

では、そんな苦しい立場に置かれた駐妻がタイで働くにはどうすればいいか、方法は一つだけ。

それは、Bビザを取ること。

Bビザの取り方についてもよく質問をいただくのでまた別の記事で詳しく書こうと思っているが、流れとしては以下の2パターンが多いはず。
①日本でタイの勤務先を決めて、日本でBビザを取ってタイに渡航する。
②タイでタイの勤務先を決めて、日本もしくは近隣国でOビザからBビザに切り替える。
※ちなみに私は②のパターンでした。それもまた今度。

外国人がタイで働くのにもう一つ必要なワークパーミット(労働許可書)も、Bビザを取って始めて取得する権利が生まれる。
よく勘違いしている方がいるが、「駐在員の配偶者が働いてはいけない」という法律はタイには存在しない。
Bビザとワークパーミットが揃えば正式にタイで働く許可が下りたということになる。そこからはもうお咎めなしだ。

一番高い壁は夫の会社の前にある

Bビザを取れば働けるなら、仕事さえ見つかればハードルは高くなさそう!
と思った方も多いと思うが、ここからがこの話の本題。

なんと、規定で「駐在員の配偶者のタイでの就労を認めない」としている会社が山ほどあるという。
Instagramのアンケート機能を使ってタイに住む駐妻と駐在員100人ほどにアンケートを取った結果、24%が配偶者の就労が可能、76%が規定により就労不可という事実がわかった。

その理由も聞いてみたところ、安全性が担保できないから・何かトラブルが起こった時に誰が責任を負うのかはっきりしないから・環境の悪さからどうしても働けない国もある中でタイだけ働くことを許可するのは不公平だから、などの理由が挙げられた。

私の知り合いでも、タイでの仕事は見つかったが駐在員の夫が勤務する会社を説得できず、泣く泣くせっかくもらった内定を諦めた方がいた。

事前に合意に至って文書で残してサインをもらうべき、というツッコミを心の中でこっそりしてしまったことは置いといて、一応事前に相談したらしい。ところが、内定をもらって報告した途端に上司の考えが変わってしまったそう。

転職活動の大変さは会社もわかっていると思う。それなのにそんなひどい仕打ち…と私まで本当に悲しくなってしまって、かける言葉がなかった。

彼女は事前に相談していたから良かったものの、規定に就労不可と書いてあるから最初から諦めている、という声も何度も聞いた。

まずは夫の会社を味方につけよう

このように、タイの法律では駐在員の配偶者の就労が禁止されていないにも関わらず(というかそういう国ってあるのかな。知りたい)、駐在員である夫の会社の規定で働けないケースが多いのが、タイ駐妻が置かれている現状だ。

「駐妻」という言葉はなんとなく優雅な響きがあるかもしれない。
その響きの通りに生活している人ももちろんいると思う。

ただ同時に、「駐妻」という立場のせいで働くことを許されていない人がかなりの数いることを知っておいてほしい。

タイや配偶者の駐在国で働きたい皆様、本当に働きたかったら、まずは夫の会社に相談しましょう。
もし拒否されてもすぐに食い下がらず、正当かつ納得できる理由が聞けるまで話し合いましょう。

働きたくても働けない駐妻の状況が、少しでも変わっていくといいなあ。

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