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メモ読) 気候カジノ_第Ⅳ部 気候変動の抑制 ー 政策と制度(後半)

第20章国家レベルでの気候変動政策

経済学が、地球温暖化政策に対して教えてくれること

  1. 個人や企業の行動を低炭素活動へと誘うためには、経済的インセンティブが欠かせない

  2. 市場の力だけでは地球温暖化問題を解決できない

炭素価格設定のための二つの制度

キャップ・アンド・トレード
二酸化炭素に基調性を持たせることによって、二酸化炭素排出の価格を引き下げる
まず政府が、自国の二酸化炭素やその他温室効果ガスにキャップ(制限)を設ける法律を制定する
その上で、二酸化炭素やその他温室効果ガスを極まった量だけ排出する権利を付与する「排出枠」を、限られた数だけ発行する
企業は排出権の所有に加えて、売買もできる
排出枠市場を構築するメリットは、二酸化炭素が最も生産的な形で使用されるようになること
キャップ・アンド・トレード制度は、限られた排出量から最大限の経済価値を引き出す
EU域内排出量取引制度の中で実施された

炭素税
政府が二酸化炭素の排出に対して直接課税を行う
初期の頃の気候変動対策に関する議論にたびたび登場した
1990年代の後半になると、量的制限の方が世論や各国政府にとってわかりやすく、受け入れやすいと考えた国際会議の政策交渉担当者によって脇に追いやられる
1997年以降は、規制策に加えてキャップ・アンド・トレードが議論の中心となる
西ヨーロッパ諸国の中には、書籍に炭素税あるいはエネルギー税と炭素税を組み合わせた税を課しているところもある
インド、中国も石炭に炭素税を課している
2012年現在、経済全体に適用される高税率の炭素税を導入している国はない

炭素税とキャップ・アンド・トレード ー 重要な共通点、違い

この二つは根本的には同じ

経済学者は炭素税を好ましいアプローチとして支持し、交渉担当や環境専門家はキャップ・アンド・トレードを支持する
炭素税支持派は、「税」の普遍的な政策システムであること、多くの国々が莫大な財政赤字を抱えていること、一方でキャップ・アンド・トレードに実績が事実上ゼロであることを主張している
また、キャップ・アンド・トレードは価格変動により、民間部門の意思決定社に不安なシグナルを送る。炭素税は安定した価格シグナルを提供する
大きな違いの一つは、誰が支払い、誰がその収入を得るのか
炭素税アプローチでは、収入は政府が手にし、消費者に還元されたり、有用な公共財を購入するのに使われる
キャップ・アンド・トレードの過去の例では、規制される企業に無償で割り当てられるため、企業の利益となる。ただし、最新の提案の中には競争入札による排出権の売却を政府に求めるものもあり、その場合2つの制度は同じ財政効果を持つ

炭素税のデメリット
・炭素税のもとでは排出量が不安定になる
キャップ・アンド・トレードのもとでは、炭素価格は変動するが、二酸化炭素排出量は安定する
炭素税のもとでは、炭素価格は安定するが、二酸化炭素排出量は変動する
→ 定期的に税率を変えられない限り、炭素税は地球が気候システムに対する「危険な人為的干渉」の安全域にいることを必ずしも保証してはくれない
・政治的訴求力と継続性に劣る
キャップ・アンド・トレードの方が、排出枠を無償で割り当てることで、規制強化によって不利益を被る業界団体から政治的的功を抑えることができる(ただし、競争入札にした場合、この魅力は失われる)
税金は導入しやすく、廃止しやすい。政治の風向きによって180度転換が起こりうる

最も重要なゴールは、二酸化炭素やその他の温室効果ガスの価格引き上げである

ハイブリッド制度

最も有望なアプローチは、下限価格と上限価格を併用したハイブリッド制度

国際的な温室効果ガス排出抑制制度に森林を含めると、ややこしい問題が生じる
国境を越えた温室効果ガスの流入評価もまた複雑な問題の1つ

第21章 国家政策から国際協調政策へ

地球規模の外部性への対応

気候変動という地球規模の外部性に対処するための案と具体的な制度へ4つのアプローチ
(1)何もしない
(2)単独行動
   各国独自の目標と政策を打ち出すが、他国と協調させることはない
(3)地域的アプローチ
   代表例、EUの排出量取引制度
(4)国際協定に参加し、規制と課税の両方を使って温室効果ガスの排出を制限する

気候変動協定の略史

1994年 国連気候変動枠組条約において、気候変動の危険性が認められた
「気候系に対して、危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において待機中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とする」
1997年 京都議定書
高所得国は2008〜2012年における二酸化炭素の排出量を1990年水準から5%削減することで合意
経済的魅力を見出せず、アメリカが離脱
2012年時点で、全体の5分の1にかろうじて届く程度だった
2009年 コペンハーゲン会議
コペンハーゲン合意「世界全体の気温の上昇が摂氏2度より下にとどまるべきであるとの科学的見解」のもとで、世界的な温度目標が採択された

今日、国際社会による取り組みは、経済的費用便益分析で示された気温上昇3℃いないに抑えるために必要な対策にも遠く及ばない
コペンハーゲンで採択された野心的な2℃目標に至っては、おそらく実現が難しい

国際協定の仕組み

効率的な地球温暖化政策には、国家間の政策協調が不可欠
政策協調とは、各国の限界排出削減費用を均等化すること
国際的に政策を協調させる2通りのアプローチ
1) 国際的キャップ・アンド・トレード
2) 協調最低炭素価格に合意し、二酸化炭素の排出にペナルティを科す

炭素価格制度

まず、目標炭素価格に合意する(2.5℃という温度目標に沿った価格)
炭素価格協定の中で、国々が追うべき義務の合意する
最低価格制度は、各国がすでに参加している関税協定や租税条約に近く、親しみやすいアプローチ
国家主義的な警戒心やタブーを引き起こす可能性も低い

富裕国と貧困国の義務

高所得国は排出制限に向け速やかに措置を講じる
中所得国は協定に参加して、近い未来排出削減を実現する
低所得国は参加を先延ばしにするか、自国の排出量を削減するための支援を受けることができる
野心的な温度目標を達成するためには、とりわけ中国とインドを巻き込む必要がある
低所得国の参加を促進する1番の方法は、低炭素技術の導入に向けた経済的、技術的支援を行うことである

強制メカニズムによるただ乗りの抑制

参加とコンプライアンスを国際貿易に結びつける
・不遵守国からの全ての輸入品に定率関税を課すこと
・輸入品の炭素含有量に応じて関税を課す

効果的な地球温暖化政策の策定
ステップ1 市場における二酸化炭素やその他温室効果ガス価格を引き上げること
ステップ2 国々がキャップ・アンド・トレードか炭素税制度を使って炭素価格を引き上げる
ステップ3 国際レベルでお互いの政策を協調される
ステップ4 国際的な気候変動協定が、ただ乗りを抑制するための効果的なメカニズムを持つ

第22章 最善策に次ぐアプローチ

キャップ・アンド・トレード、炭素税以外のアプローチ

  • 自動車、電化製品、建物など、エネルギーを使用する主な資本の省エネルギー化を義務化する規制策

  • 「グリーン技術」に対する補助金の支給(風力、太陽光発電、ハイブリッド車など)

  • エネルギーへの税金(ガソリン税など)

  • 各国の自主的な取り組み

厚生損失:放棄した財やサービスという観点から見た時の、社会にとっての正味の損失

規制政策のケース ー 自動車燃費基準

莫大なコストを伴う政策
2012年 オバマ政権が発表した自動車燃費基準(CAFA基準)
「完全な市場」において、経済的に効率のよ良い政策(キャップ・アンド・トレードや炭素税)の排出削減費用が12ドル/トンに対して、CAFE基準は85ドル/トン
規制政策コストが高い理由
①自動車メーカーは、ガソリン価格を製品設計の中に組み込むと考えられ、ガソリンを追加的に1ガロン消費するためのコストが、燃費の改善によって節減される1ガロンあたりのコストとちょうど釣り合うように最適化される
②2012年の新基準では、1ガロンあたりの走行距離の変更があまりにも大きかったため、最後の1単位の燃費にかかる費用が極端に高くなる
負の影響をもたらす政策の例_エタノール補助金
ガソリンにエタノールを混合している業者に対して、1ガロンあたり45セントを補助する制度(2011年末に廃止)
原料のトウモロコシを生産する際に使われる化石燃料や、温室効果ガスを発生させる肥料などを全て合わせると、エタノールが排出する温室効果ガスの二酸化炭素換算量はガソリンとそれほど変わらない

規制以外のアプローチ

「クリーン開発メカニズム」
開発途上国が先進国に排出削減量を売却し、先進国はそれをキャップ・アンド・トレードの排出枠とすることができる制度
中国が石炭火力発電所の代わりに、水力発電所を建設
31,261トン分の炭素クレジットをオランダに売却
しかし、中国が水力発電所を建設しているのかは知る術がない
正味の影響をもたらしているかどうかは、誰にも分からない

「グリーンエネルギー」「グリーンジョブ」に対する補助金
補助金は、低炭素活動を一層魅力的にすることによって、炭素集約度の高い活動を抑制しようというもの
補助金の難しさは、その対象となる低炭素活動の特定である
補助金の効果は均一ではない
最終的には二酸化炭素を排出しない全ての活動に補助金を支給するよりも、排出にペナルティを科す方が遥かに効率的

  1. 炭素価格政策に比べると、規制などの代替政策はどれも二酸化炭素1単位あたりの排出削減費用が高い

  2. 厳しい規制を課しても、コペンハーゲン会議で設定されたような野心的な目標達成はおそらく難しい

  3. 規制政策の選択は難しい

経済学的視点から見ると、気候への危険な干渉を阻止するための最良のアプローチは、世界の国々が、二酸化炭素やその他温室効果ガス排出に高水準で右肩上がりの価格設定をすること

エネルギーコストに対する近視眼的思考

人々が将来のエネルギーコスト削減額を過小評価するために、エネルギー効率への投資に対して消極的になる傾向を指す
規制を慎重に活用することで、我々は人命を救ったり(エアバック)、費用や二酸化炭素を削減したりすることができる
なぜ、人々がそのようない行動パターンを示すのかがはっきりわからない
「完全な市場」に対して「市場の完全な失敗(消費者が高い割引率を用いる場合)」のもとで排出削減費用を比較する
自動車の燃費基準のケースで、消費者が将来のエネルギーコスト削減額を年20%で割り引いた場合、二酸化炭素が1トン削減されるごとに22ドルの負の費用が発生する
消費者が将来のコスト削減額を過度に割引く場合、自動車燃料規制は二酸化炭素排出を削減し、お金の節約にもなる

代替アプローチのバランスシート

規制への過剰な依存には重大な欠点がある

  1. 規制によって排出削減の大部分を実現するには、南禅という技術と何百万という意思決定が必要

  2. 規制政策だけでは温暖化問題の解決に近づくことはできない

  3. 規制は慎重に設計されない限り、莫大なコストを発生させたり、逆効果を生んだりする可能性もある

政府が規制を好む理由の一つは規制のコストは消費者の目につきやすいこと
炭素価格のように市場を基盤としたアプローチを用いることの重要性を理解してもらうことは、気候変動の科学を説明するのと同じくら大切な教育プロセスである

第23章 低炭素経済に向けた先進技術

この経済を「脱炭素化」させるのは、どれくらい難しい挑戦なのか?
現代経済を牽引する主力エネルギーに代わるものとは何か?
先端技術を企業が開発、生産し、消費者が購入、利用するようになるためには何が必要か?

現実には、積極的な政策が失敗に終わった場合、ハッピーエンドに向けて残された道は、エネルギー技術の画期的な変化である

政府の政策無くして技術革新の実現は期待できない
アメリカの政策が目指す排出削減、そしてコペンハーゲン合意の2℃目標に沿った排出削減を達成するためには、ほとんどの業界が経験したことのないような、急激な技術革新が求められる

今日のアメリカのエネルギーのおよそ80%が化石燃料から作られている

低炭素社会への技術的道のり

大規模利用が可能で実績のある非化石燃料が原子力
発電には利用ができるが、飛行機等での経済的利用方がない
化石燃料よりコストが高い
安全性に対する社会的関心の高まり、いくつかの国が脱原発を掲げる中での推進の現実的厳しさ

低炭素な未来への移行には、未だ実績のない先進技術か、コストの高い従来技術が必要である

再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱など)
化石燃料よりもはるかに高価で主に巨額の補助金のおかげで普及している

主要地域のエネルギー部門における詳細なモデルを統合した世界モデルGCAMと、アメリカの電力部門に関する高解像度モデルReEDSを用いて、アメリカ電力業界における温度目標の達成に必要な劇的変化について分析した

  • 今日発電に使われている最も一般的な技術(従来型の石炭火力や天然ガス火力)は、2050年までに段階的に廃止される

  • 原子力の伸びは緩やかで、そう発電量に占める割合は今日とほぼ同水準を維持する

  • 2050年時点で電力市場のおよそ半分は、今日完全に発展途上段階にある技術(二酸化炭素回収・貯留(CCS)を装備した石炭やガス)によって占められる

  • 2050年時点での電力市場の約4分の1は、風力発電によって占められる

  • さらに4分の1は、さまざまなタイプの先進再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、バイオマス、地熱)によって占められる

  • CCSを装備した石炭火力と風力に関する予測については、コストと将来の利用可能性に関する問題から、二つのモデルの間で大きな違いが見られた

これらのモデルは、急激な排出削減の実現に向けた資本の再構築を電力会社に促すために、非常に高水準の炭素価格を課すことを求めている
今日電力生産の7割を構成する技術(石炭と天然ガス)は、ほぼ全ての他のものにとって代わられなくてはならない
4分の1を生産するとされている原子力は、一般にアメリカ国民に受け入れられない技術

実際にはこれほどの規模の技術転換となると、技術的な承認、政治的な承認、規制許可、経済的承認をさまざまな段階を踏むのに長い年月がかかる上、その過程で社会的需要性と私的収益性という審査をクリアしなければならない
この研究は、気候問題に対処るる上で、考えられる技術的解決策に触れているに過ぎない

イノベーションの特徴

技術革新は、たいてい、個人の卓越した才能、粘り強さ、経済的インセンティブ、市場の需要が複雑に作用しあって起こる
イノベーションの歴史において、ほぼ全ての発明には「基礎科学」「応用研究」「経済的利益」「出だしの失敗」「改良」「成功時の市場での利益」の間でよく似た相互作用があった
イノベーションは大きな外部性を有する
歴史上の有名な発明家たちのほとんどは、自分達のアイデアが生んだ果実を手にすることができなかったために、貧困の中で最期を迎えている
低炭素イノベーションの支援には、政府による基礎研究への支援と、営利企業からの投資が必要である
民間投資は二重の外部性によって抑制されてしまう
・発明家たちがイノベーションによる社会的収益のほんの一部しか手にできない
・二酸化炭素の排出に価格が設定されない状況での、地球温暖化の環境外部性

「死の谷」を越える

「死の谷」研究室で生まれたアイデアが、資金の欠乏によって市場にたどり着く前に力尽きてしまう中間点

基礎研究と新たな製品・製造技術の開発という二極の間には、商業的に利用するには十分に成熟していないものの、具体的な展開への道を切り拓く技術革新への投資が存在する。このような「競争段階前のノーブランドな実現技術」への投資は、基礎研究への投資と同じくらい深刻に、民間市場の失敗の影響を受けると考えられている。商業利用が可能な段階まで技術を育てるには相当の投資が必要だ。にもかかわらず、ひとたび決定的な進歩が成し遂げられれば、その本質は広く知られ、他者に無断で利用される可能性が高い。特許制度はあまりにも弱く、ほかのプロジェクトにそうした技術が使用されるのを阻止できない恐れがある

F・M・シェーラ

適正な炭素価格を設け、地球温暖化の外部性を相殺する
また、追加のインセンティブとして、政府が競争段階前の技術を特別税額控除の対象とする

まとめ

  • エネルギーやその他の関連分野の基礎科学技術に対し、政府が支援を続けることは絶対不可欠

  • 先進技術の開発における、民間部門の重要性の認識が必要

  • 低炭素経済への移行の中で、急速な技術革新が果たすべき中心的役割


読んで少しでもあなたの世界を豊かにできたならそれだけで幸せです❤