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ブランドの伝え方 #notemeetup

「ブランドの伝え方」をテーマにしたnote creator meetupの6回目に参加してきたので、イベントレポート(というより書き起こし)を書きました✍すごく長いです。イベント概要は↓こちらご参照ください。

パネラー紹介

Minimal -Bean to Bar Chocolate - 代表・山下貴嗣さん

0:0から起業した。サラリーマン(not飲食)やってた。
1:国際品評会で部門別でNo.1。
2:カカオとお砂糖の2つだけしか材料を使っていない。
3:デザイン賞、イノベーション賞を3つ受賞。
4:年間4ヶ月強は赤道直下のカカオ産地へ。
5:5店舗目を代々木上原にオープンする(2019年3月)。

F3Desing株式会社 代表取締役 田村浩二さん

去年の夏までフランス料理のシェフをやっていた。今は個人で活動しつつ、Mr.CHEESECAKEアタラシイヒモノFRAGLACEカモンサラダなどを作っている。今まで自分が培ってきた料理人の知識を深掘りするのではなく、必要なところに対して、横に展開するような仕事のやり方をしている。薔薇を使ったアイス(FRAGLACE)は、そのまま薔薇を渡しても手にとってもらえないので、身近な形にして提供してみた。

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ここからパネルになります。名前は敬称略にて。

第一部:ブランドを立ち上げるまで

Q. どのようなきっかけで「食」に関わるようになったのか?

山下:岐阜出身で実家が栗山農家だった。母親は管理栄養士。パンは自分でこねて作るものだと思ってた。小さい頃の体験、母親がちゃんと食を作ってくれた体験が原体験だと思う。素材の力はすごいと思っていて、今はカカオという素材に向き合っている。社会人なりたては食以外のことをやっていた。起業することを決めた時は、食をテーマにするとは思っていなかった。自分が今まで会ってきた人に改めて会ってチョコに出会い、面白いと思った。

田村:小中校で野球をやっていて、プロになれればと思ってた。大学の野球入試に落ちた時に、野球は縁がないと思ってやめた。そのすぐ後、友人の誕生日になぜかケーキを作ろうと思った。そしたら食べてくれた人がすごく喜んでくれて、これを仕事にできたらと思った。親がよく料理やお菓子を作ってくれて、ものを作るというのは身近なことだった。ネットで調べて自分で作ってやっていた。野球を諦めた体験が悔しく、料理をやるなら上の方までいきたいと思い、フランスの厳しいところに入った。お菓子屋さんになろうと思ったが、甘いものだけで生きていくのは…と思った。


Q. どうして自分でブランドをつくろうと思ったのか。決め手、モチベーションなど。

山下:起業することに抵抗はなかった。日本は少子高齢化、GDPが下がる傾向にある。日本は戦争で負けた後頑張って豊かな国になったが、それを食いつぶしていると思った。日本人の良さを生かして外貨を取りたいと思った。自分の仕事とそれがリンクしたらいいなと思った。そこから、ものを作っている人がそれだけに集中して作ったら外貨取れるかもしれないと思った。自分がものづくりの人たちを支えてあげられればと思った。ロンドンに出店しようとしていたこともあった。ものづくりで世界に発信できるものがやりたい、その最初がチョコレートだった。

田村:シェフという仕事自体、自分をブランド化する仕事だった。最初のお店で「世界に通用する技術を身に付けろ」「履歴書をどうやって作るかを考えなさい」と言われた。どの店を渡り歩くかを考え、それに対して明確な答えを持つ。フランスから帰ってきて日本で働いた時に、新規オープンだと取りあげてくれるのに、お店のシェフが変わったところで注目してくれないという場面に直面した。そこでどう発信するかを考えた。Twitterやインスタなどをやり始めて、いろんな人にあって、自分の存在を知ってもらってブランドを作っていった。当時は3,4時間睡眠でやっていた。その時期に頑張らないと世に出れないと思った。そこから、一緒に会社をやろうと言ってくれる人がいたので独立。レストランで出したアイスが評判良かったので、一つの商品として出した。シェフとしてのブランドと商品とリンクさせ、商品を通して自分を知ってもらえるような形になった。実際のところ、ブランドを作らないと生きていけなかった。シェフとして働いているだけでは難しい。普段やっている仕事はお金をもらうためで、最低限のこと。プラスαをやらないと他の人との差は出ない。レストランに来る人は特殊。お金と時間に余裕があって、経験値がある人。レストラン業界で有名になっても一般の人には知ってもらえない。井の中の蛙状態。もっと知ってもらうには、レストラン業界にとどまっていても意味がない。自分をいかに知ってもらうかを考えた。

山下:今までMinimalが知ってもらうことに力を入れていた。しかし自分を知ってもらうことがMinimalを知ってもらう一つの切り口だと思った。


Q. ブランドを立ち上げ時に特に力をいれたこと、大切にしてきたこと

山下:ぶれないことシンプルにすること。東京で商売していて思うのは、東京は何でもあるからエッジを立てる必要がある。シンプルにすることは難しいが、それができると広がっていく。美味しいものを食べて人に勧める時に「〇〇で美味しかった」の〇〇の部分が、自分たちが伝えなくても残っているということは、先鋭化されているということ。それゆえわかりづらい味は却下している。今この商品に求められているものを考え、ブランドのコンセプトを大切にしている

田村:とにかく美味しいものを作る。自分が美味しいと思うのもと、世の中の人が美味しいと思うものは違う。自分の中で当たり前だと思っている組み合わせが、他の人にとっては奇抜だったり。薔薇×アイスも異色。そこでマーケットに求められるものとの帳尻合わせを大切にした。誰かに食べてもらって味を決めることはない。そこがぶれてしまうと直しようがない。どうわかりやすく届けるかが大事。シンプル=単純ではない。入り口から複雑なことを説明する必要はない。聞かれた時に奥深さを伝えるようなかんじ。


Q. 商品開発において一番重要視している部分

田村:いち商品に絞ることの機会損失は感じない。みんなが食べて、感想を共有できたほうがレビューの精度が上がる。レビューが分散するとブランドの価値が上がりにくい。今作っているサラダは3種類しかない。

山下:先鋭化すること3つ以上選択肢を与えない。選ぶと離脱してしまう。


Q. 食べなければわからないものに対して、デザインや写真で心がけたこと

山下:デザインは問題解決であり、情報のきっかけ。一から十まで与えると、あとから忘れる。後から気づけるようにすることが重要。このロゴいいね、と言われたら由来を説明する。奥行きに気づいてもらう、話しかけてもらえるようにする。流行り廃りはあると思っている。時代ごとに価値観は異なる。デザインは、自分たちが一番伝えたい人に対して響くものにするように

田村:食べないとわからないようにしている。インスタ映えというのが嫌い。見た目で食べた気になる。例えばお皿の上に5種類素材があってどう食べてもらいたいかを考えた時、盛り付けは自然に決まる。デザインはあまりいらない。ショートケーキは尖っている方から食べる人が多い。右利きの人は左から右に食べるので、右に向かって味が変わるように盛り付ければ味の変化を楽しめる。最初に味が複雑だと飽きてしまうので、同じだけど3回味が変わるなどの工夫をしている。見た目だけではわからず、食べてみると今までと明確に違うという体験に価値を置きたい。写真を撮る時、草を置きたがる人がいる。商品の味より、デザインを伝える状態になってしまい、情報が薄くなる。


第二部:ブランドの伝え方・発信

Q. 意図するターゲットに自分のブランドの良さを知って興味を持ってもらうために心がけたこと

山下:会って、食べてもらう。口コミが重要。

田村:余計なことをしない。自分が作っているもの=真っ直ぐに届くものにしたい。商品を作る時に、美味しいものを作ろうと思って始めることはあまりない。生産者の素晴らしさをどう届けたらいいか、日本の文化をどう伝えるかという課題が先にあって、それをどのように伝えるかという順番。商品の背景を伝えるにしても、最初にそれを出すとtoo much。美味しいと思ってもらった後に、どう興味を持ってもらうかを考えている。


Q. ブランドづくりにおいて一番譲れないことは?

山下:チョコは世の中に溢れているので、自分たちらしさを大切にしている。素材をダイレクトに、いろんな切り口で出す。美味しいチョコはたくさんある。人によって美味しさは違うから難しいけど、カカオの香りにこだわっているということは絶対に譲らない。豆の味はよく知っているので、豆のキャラがどのように活きているかチェックしている。

田村:美味しさ。美味しさというのは曖昧。育った環境によっても違う。健康な商品はそう言われても続かない。美味しいものは食べちゃだめだと思っても食べてしまう。体にいいものを作るにしても、美味しくないと意味がない。曖昧な美味しさをなるべく言語化して伝えるようにしている。

山下:話題になって消える店の共通点は、「ベーシックな機能を外している」こと。食であれば美味しさ。ある一定の美味しさがないと長く続かない。ファッションも機能性が押されることがあるが、最低限のおしゃれがクリアできてないとNG。ベーシックを見極めないといけない。意外にこれができていないものが結構ある。1週目はあっても、2週目は来ない。


Q. 発売前後のマーケティングで一番力を入れたのは?

山下:マーケティングを意識したことはない。シンプルにしていることがマーケティング。1つだけやったこと。プレスだけで300媒体くらい出た。伝える人によって言い方、切り口を変えている。

田村:アイスの話で、レストラン自体のお客には評判が良かった。が、従兄弟には表現が悪かった。アイスは普遍的だが、薔薇が載った瞬間に奇抜なものになる。どのようなものが受け入れられやすいかを考えた時に、みんながある程度経験値があるものが条件だと思った。そこでチーズケーキが出てきた。食べたことない人はほとんどいない。チーズケーキで心から感動したことがある人はほとんどいない。であれば人生最高の部分を取りにいけるのではと思った。あとは老若男女、あまり属性を選ばないものがいいと思った。


Q. 食のブランディングにおいて、「自分たちで書いて伝えること」のメリット、デメリット

山下:メリットは、自分たちの言葉で伝えられること。デメリット?は、個人でTwitterのアカウントを持ったのは最近だが、個人的な考えを発信するのは苦手。自分の名前を出すほど良くも悪くも反応がある。何度も心が折れそうになっている。

田村:シェフって壁があるイメージがあると思う。崇められるかんじ。でもシェフが先にあるわけではなく、田村が先にある。壁ができると温かみがなくなる。チーズケーキはおいしいものができたからインスタのストーリーに上げた。それを買った一人がブログに上げてくれた。その人のフォロワーがそれを見てインスタのフォロワーが一気に増えた。DMのやり取りをして広がった。このストーリーを知らず、ビジネス目線で始まったと思われると印象が違ってくる。このようなストーリーを伝えられるのは良い。自分は結構考え方が変わるので、発言の整合性が取れなくなってそれを指摘されることがある。シェフと言うと勝手に偶像を作られてしまうので、壊して行く作業をnoteでしている。内容によって、シェフ目線、田村目線と自然に切り替えている。

山下:Minimalのジャーナルはあって、よくそれを書いていた。Twitterは完全に個人。ジャーナルコアファンに受けるけど外に広がっていかない。1対nは広がらない。ブームにしようと思ったらn対nをしないといけない。板チョコのブームはそのうち終わってしまうだろうけど、全国の人達とやった方が面白い。

田村:ヨーグルトとマンゴーのツイートで9000フォロワーくらい増えた。シェフでTwitterというのもあまりいないからか。今は週1でnoteを書いている。決まった時間を確保しているわけではない。土俵際のパワーでやっている。自分のTwitterのフォロワーは幅が広いと思う。シェフと知っている人と、小ネタを出してくれる料理好きな人くらいに思っている人と。そのためなるべくわかりやすく簡単で、見たらわかるようなものをツイートをする一方で、コアな話をすることも。noteもそれに近いことをしていて、料理を知りたい人、フリーの料理人としての働き方を知りたい人もいる。一定の層に発信するのは飽きるので適宜やっている。

山下:いろんな魅せ方をしている。ジャングルまで買い付けている人、ブランドのスタートアップをやっている経営者、食にこだわる人などの顔がある。得意で書けそうなことをリストアップして、回遊させようとしている。ものづくりが好きで、服の好きなブランドは2つくらいしかないが、どのようなものづくりをしているかめっちゃ知っている。好きなことは深く書ける。自分が好きなものから学んで、いろんな切り口で書く。


Q. 個人として、企業としてこれから取り組んでみたいこと

田村:そば。別に食べるの好きではない。予約とってまで行きたいわけではない。作るのが好き。前はいろんな料理を食べないと経験値が上がらないので、仕事として食べていた。下手に行くと「自分だったらこうするのに」と思って疲れてしまう。最近チーズケーキのレシピの撮影をしていてチーズケーキをひたすら食べてた。そんな時に食べたそばが美味しかった。その体験が新鮮だった。そばはシンプル。そばの域を出ないギリギリのラインを攻めてみるのも面白いと思った。そばに限らず料理をすることを趣味にしたい。料理でお金をもらうのはストレス。自分がおいしいと思っても批判する人がいる。60歳まで続けられないと思った。料理を楽しめる環境を作るにはビジネスを作る。単純に美味しいものを食べたい人を集める方がハッピー。

山下:企業としてやりたいことは渋谷にチャーリーとチョコレート工場を作りたい。ECで何でも買えるが、場は人と人が触れ合うところ。単純に楽しい。店舗はお金が吸われて難しい。個人としてはテクノロジーのオタクなので、オムニチャネルやECと店舗の行方などに興味がある。テクノロジーが発達して、すべてログが取れるのが面白い。もっと面白い顧客体験が作れるはず。人間ってどういうふうに動くんだっけ?に興味がある。社長を辞めてマニアックに分析したい。


Q. 競合だと考えているモノやコト

田村:競合はあまり気にしていない。時間に対する価値というのに興味がある。レストランに行くと2〜4時間かかるが、スポーツ観戦だと2万の10分の1くらいで楽しめる。レストランでもエンターテイメントや勉強になること込みで体験にしたらいいのかなど考えてみた。時間という軸で考えるといろんなコンテンツがあり、そことどう戦っていくかは興味がある。自分の働き方は誰かと比較できるものではなく、競合が見えにくい。チーズケーキ単体で見たら、チェックしているところはある。同じレシピを他の人が作ったところで同じようにはいかない。ストーリーがない。新しい商品を作る時はリサーチする。

山下:競合というより気になるものはいろいろある。その共通性は狂っていること。この人採算とか考えてないだろとか。新政の佐藤さんはやばい。お互いで合わせようと言ってペアリングをやろうとしたことがある。が、何かと合わせるという意識で作ってないなと思った。それだけで完成している。何のプロダクトだろうが狂ったものがあれば調べるし、学びたいと思っている。


Q. これから日本で流行りそうな食文化

田村:あまり興味ない。流行ってるから、と言ってやると負けた気がする。流行っているということはすでに存在するということ。誰も知らないものを作りたい。アメリカでブームになっているものを日本にもっていくとかも感覚がわからない。シェフでも行き詰まると海外行ってそれを反映したりする。でもそれではストーリーがなくてただのコピペ。自分が料理を作る時は思い入れがあるものを使って料理を作る。食べた人の記憶に残るものを。

山下:発酵が注目されていると思う。チョコも発酵をやる。発酵を研究生として学んでいる。菌という目に見えないものが面白いと思った。全部関係性で、因果がわからない。やればやるほど理解できないことが増えていく。チョコは発酵を変えると味が変わる。そうすると素材の豆ってなんなの?ってなってそれも面白い。


商品紹介等

Minimal's Special Valentine's day 2019

普通のチョコレート屋では出てこないようなパッケージになっている。パッケージの絵の具部分は砂利を入れてみたり、塗る面積を考えてみたり。チョコレート単体ではなく、周辺にあるものにもライトを当てている。

フレンチシェフが作る「人生最高! 」の肉じゃが

料理というものをもっといろんな人に身近に感じてもらいたいと思っている。時間をかけずに食事はできるが、あえて時間をかけて料理を作ることで人生が豊かになれば。ちょっとしたテクニックで仕上がりが変わる。1日3回が毎日ちょっとずつ豊かになると人生がハッピーになる。小さな成功体験を積み重ねると他のコトもよくなっていくかも。


質疑応答

Q. DMで会ったことない人からメッセージが来た時に、一緒に何かやりたいと思う人は?

田村:文脈が丁寧に説明されている自分のことを調べてくれたとわかる / 何が気に入ったかを伝えてくれる 人。Twitterだと、顔が載っていなかったり、名前がない人はやりにくい。連絡するときだけでも名前と顔がわかるようにした方が。人 / 何が好きかを伝えてくれる人。Twitterだと、顔が載っていなかったり、名前がない人はやりにくい。連絡するときだけでも名前と顔がわかるようにした方が。

Q. 来年からバリスタの専門学校に行くが、学生時代にやっておくといいことは?

山下:目の前のことを一生懸命にやるのがいい。10人に1人、100人に1人になれればいい。とにかくやりきる。

田村:技術を付ける仕事なので、ひたすらやってみること。現場に入る時、雇う側としては、入ってきたからにはある程度わかるよねという感覚が強い。職場は教えてもらう場所ではない。自分でやってみて、わからないことがあったら聞く。いろんなコーヒーを飲んで好みのゾーンを探して、その人たちがどんなことをしているのかを探る。本を読むのも大事だが、1回やってみた方が。

試食タイム

こんな素敵なものを試食でいただきました…。おいしかった…。

素敵なひとときをありがとうございました✨とても勉強になりました!

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