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押すか押さぬか

秋の彼岸を過ぎたあたりから、会社の帰りはバスに乗っている。
行きは歩き。

本当はバスがあまり好きじゃなくて、旅先でやむなくという場合を除いてほとんど乗らなかった。
通勤でバスを使うなんて最初は念頭になかったのだが、やってみたらさほど悪くない。

子供のころは、よく車酔いをした。
本当かどうか知らないけれど「ゆで卵を食べると酔いやすい」と聞いたので、遠足の数日前から食べなかった。

15歳くらいでひとり旅をするようになってから、不思議なことに酔わなくなった。
そもそも遠足のような集団行動が嫌だったのだろうと思う。

半年近く片道のみのバス通勤をしているわけだが、どうしても慣れないことがある。
それは。
降車ボタンを押すこと。

私の降りるのは「〇〇駅前」という停留所。
電車に乗り換えるため、半数以上の乗客がそこで降りる・・・はず。
たまにすごく空いているときもあるが、少なくとも降りるのが私だけということはない。

車内アナウンスを聞くまでもなく、ほとんどの人が次に停まるところをそらんじていると思う。
自分が降りるところならなおさら。

でも、アナウンスがあったとき、降りるのが自分だけじゃないからきっと誰かが押すと思って、誰も押さないことがある。
そして、どんどん停留所が近づいてきて、ギリギリで誰かが焦れたような感じで押す。
この焦れるなかに私も入っている。

なら、とっとと押せばいいではないか。
中には、アナウンスの前から押す人だっている。
でも私は押せないのよなぁ。
「押すのを見られるのが恥ずかしい」みたいな変な気持ちがある。
で、誰か早く押してよ、みたいな。
なんで?
自分七不思議のひとつだと思っている。
あとの6つは何かはすぐには思いつかないけれど。

エレベータには一番先に乗りたい。
そして「開」ボタンを押して、ほかの人が乗り終わるのを確認して「閉」を押したい。
だから、ほかの人がボタン前の場所にいて、その人がボタンを押さないで誰かが乗り遅れたり挟まったりすると、すごく頭にくる。
ボタン押せよ、と思う。
降りるときも同じで、ドアの真ん前にいたら先に降りるけど(そのほうが効率的だから)、少しでも脇にそれていたらボタンのところの場所に移動して「開」を押し続けて最後の人が降りるまで確認する。

エレベータのボタンは我先に押せるのに、バスの降車ボタンは押せない。

昨日、この不可解行動を打破すべく、ほぼ初めて先に降車ボタンを押した。
というか、誰も押さないので我慢できなくなっただけなんだけど。

それで、バスが着くまでのわずかな時間、いつもよりちょっとラクな気分で過ごした。

読んでいただきありがとうございますm(__)m