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朝ドラ雑感

昨日から新しい朝ドラ「虎に翼」が始まった。
昨日はリアルタイムで、今日はさきほど配信で見た。
これはなんとなく私の好みに合う気がする。

まず、子役から始まらないのが気に入った。
事象を時系列にわかりやすく並べた展開は好きじゃない。
主人公がどんな子供時代を過ごしたかは、物語の中でわかっていくのがいい。
きっとこんなだよなぁと観ている人が想像できるのがいい。
子役が演じなくても、それが想像できるように描くのが脚本家の腕だと思う。

私が、モデルとなった人のことを全然知らないのも功を奏している。
有名人の成功譚に惹かれないのは、どんなに苦労を描いても「でも、結果的にうまくいったじゃん」という醒めた視線が自分の中にあって、テンションを下げてしまうから。

生まれが裕福で、困ったときには実家に頼ったり、何も言わなくても助けてくれるという設定だと、つい「ふん!」と思ってしまう。(「朝が来た」はそのシーンで途中離脱。)
これは、私の妬み僻みにほかならない。
かといって、「おしん」みたいなのも苦手。

人生の成功が何を指すかはわからない。
成功譚でも見る気になるのは、そこに「金儲け」の要素が薄いもの。
会社を大きくしたり富や権力を得たものではなくて、個人として当人が望む生き方ができたもの。(「花子とアン」は完走した。)

いろいろと注文がむつかしい私だけれど、その意味で「虎に翼」は見続けられる要素が結構ある。

転校によっていじめから逃れた小学校高学年から中学生にかけて、私の「内弁慶」は外向きに変化した。
不登校で引きこもっていたとは知らないクラスメートや担任は、私に向いている職業を弁護士だと言った。
理屈っぽかったし、言い負けなかった。
それまで抑え込んでいた何かが爆発したような時期だった。

幼児期や不登校時代は大人としか交流していなかったから、同年代が盛り上がる話題には疎くて興味も持てず(それはそれでコンプレックス)、政治や社会や文化の話をしたがった。
アニメやヒーローものよりも、国会中継の討論を楽しむような子供だった。
いわゆる「意識が高い」ということはないし、ただ興味の方向がみんなと違っていただけ。

「虎に翼」のヒロイン寅子は、見合いの席で社会に対する持論を述べるが、それは私にとってはとても真っ当なこと。
しかし、「女のくせに生意気」と相手の男に激昂される。
「そんなことを言う男なんかこっちから願い下げだ!あんな奴と結婚しなくて良かった!」と私は画面の向こう側に激励を送った。

そもそも、干支とはいえ娘の名に「寅」の字なんかつけるか?
大人しい穏やかな女性に育ってほしいなら、もっと違う選択もあったただろうに、何を願ってそう名付けたのか。

生意気だと言われながら「はて?」と首をかしげる伊藤沙莉がいい。
私なら「はて?」より「ムッ!」としてしまい、それを隠そうと引きつった作り笑いをしそうだ。

「ひよっこ」の米子も好きだったし、「いいね!光源氏くん」もお気に入り。
「ブギウギ」のヒロインに予想していたが大外れ。
でもこれで良かったと楽しみにしている。

私は基本的に「お仕事ドラマ」が好きなのだ。
家庭しかない良妻賢母みたいなヒロインは苦手。(物語としては)
母もそうだったし、私もたぶん、家のことより仕事をしているときのほうが生き生きしていると思う。
「料理が美味しい」と言われるより、仕事の出来栄えを褒められたほうが嬉しいかも。(「ゲゲゲの女房」は途中離脱。)

なので、友達から義理の姉になる花江ちゃんがちょっと苦手ではある。
この人、ずっとああいう声としゃべり方なのかしら。

尾野真千子さんのナレーションの声の引き加減が好み。
朝ドラを見続けられると、日々を過ごす楽しみがちょっと増える。

法律の条文を覚えられる脳ではないと早い段階で自覚していたので、そっちの勉強はしなかったけれど、家族全員の看護と介護にあたって病院や役所や施設と交渉できたのは、生来の理屈っぽさと絶対に言い負けないぞという覚悟があったからと思っている。
私しかいなかったし、最初で最後の砦だった。
理不尽や不公平に甘んじない。

仕事のうえで、結構たくさんの弁護士さんと関わりがあったが、弁護士さんの優劣は、私みたいな「言い負けなさ」ではけしてない。
言葉ではない。
ドラマでは、そこを描いてくれればいい。

「虎に翼」はいいけれど「鬼に金棒」はなんだかなぁと昔から思っている。
鬼くらいの力と怖い形相があれば、素手で勝負しろよ。
金棒持つのは卑怯じゃね?


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