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灯り

入院してたころ、何もすることがないと外をみていた。

オフィス街に溶けていく人たちをみて、コロコロ変わる信号機を見て、都会は青の点滅長いなぁとかあの人横断歩道渡り切れるのかなぁとか色々。

夕方が進む頃に少しずつ明かりがともる窓をみる。数え切れない灯り中には、人がいて働いて、生活があって、家族がいる人はいる。それは夜中まで残っていて。私はひとりじゃないんだ。この灯りがある限り、夜は私だけじゃないんだ。いつしか、その灯りは不安な病院生活を安心させてくれていた。

先日、予定がありその病院の最寄り駅に降りた。すぐ目の前にある大きな建物がその病院だ。夜にみる病院は初めてで外観の色も暗くて思い出せなかった。

目の前にある数え切れない灯りの中には病気や怪我があって不安や希望があって。心配してくれる家族がいるかもしれない。それは不安の中で1日中灯っていて。

あの日々には戻ることはないけれど、わたしはあの灯りのあの温もりにはもう一度触れたい時がある。


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