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「晴れ」の私 別れの時に思うこと

転勤が決まった。
転勤は想定の遙か外で、
受け入れるのに時間がかかった。
「なんで私が?」
「なんで今?」
「なんでその学校に?」

次の学校は進学校だ。
ここ10年の私はどちらかというと
優秀な子よりも学校がしんどい子や
発達障害の生徒を支えることを
日々の仕事にしてきた。

全くの方向転換だ。

10年前も進学校からの方向転換で
自分の居場所作りに苦労した。
やっとやりがいと
頼ってもらえる武器を身につけたのに。
人生は無常だ。
変わらないものはない。
特に春は。

一ヶ月後私はここにいない。
という視点で学校内を歩く。

玄関脇に写真部の生徒が撮った
作品の展示がある。
そこには1年生の女子が
私を撮った作品が飾られている。

夏にあった学校祭の
準備期間の記憶がよみがえる。
ブルーカットの眼鏡にジャージ姿。
大きな荷物を肩からかけて、
ダブルピースしている笑顔の私。
名前を呼ばれて振り返り、
パッととったポーズだった。

題名は「晴れ」
まだ今日の日が来るとは知らない
笑顔の私がそこにいた。

涙が出た。
「晴れ」の名前を付けてくれたその彼女に
まだ名前の理由を聞いていない。
いつか聞こうと思いながら、
いつでも聞けると思いながら
何ヶ月も過ごしてしまった。

あのときやっておけば良かった。
あのとき話しておけば良かった。

そんな後悔をしないように
できるだけその時を大切に
生きてきたつもりだった。

私はいつも「つもり」で生きている。
チャンスは何度でもあったのに。
いつもそこにあったのに。

離任式でみんなに愛されている
私も大好きな先生がこんな話をしてくれた。

「人生には坂が3つある。
 上り坂。下り坂。まさか。
 「まさか」に耐えられるのは
 しんどいときにどれだけ辛抱できたか。
 今までの辛抱が問われている。
 だから、
 しんどい時を大事にしてください。』
こんな話だった。

私は今まさに、
その「まさか」を生きている。
今までどれだけ頑張ってきたかが、
4月から問われるだろう。
やってやろうじゃないかと思う。
でなければ、
愛した学校や先生や
何より生徒達に失礼だ。

今までやってこれたじゃないか。
これからだってきっとできるさ。
あの時もいつかのあの人の言葉が
私を支えてくれた。
いつかの頑張りが、今の私を励ます。
たくさんの失敗と
みんなの優しさが今の私を作っている。
それに気づけたことが幸せだ。
きっとこれからの私も大丈夫だと思える
そのことが幸せだ。

私の笑顔を「晴れ」だと言ってくれた
あの子に恥じない生き方をしようと思う。

そんな3月を私は生きています。

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