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【オーディオ】マルチなアイツがパワーアップ/iFi audio NEO iDSD2レビュー【DAC/アンプ】


【はじめに】


本記事は、2023年11月に発売されたifi audhioのUSBDAC/アンプ、「NEO iDSD2」についてのレビューである。
筆者はこの製品の前機種にあたる「NEO iDSD」を1年半ほど使用しており、その性能には非常に満足していた。後継機種が発表され、はたして買い替える価値のあるアップデートはなされているか?と気になって購入した。結果としては非常に満足の行く出来で、正統な改良版と言っていいと思う。
目次に(読み飛ばし可)と書いているものは、レビューとして必すしもすべての読者に必要な情報ではないため、必要に応じて読むか判断してください。

【NEO iDSD2について】


NEO iDSD2は、イギリスのオーディオブランド「iFi Audio」が展開しているDAC内蔵型ヘッドホンアンプの最新機種だ。
DACはdigital analog converter、すなわちデジタル信号をアナログ信号(音声データ)に変換する装置で、当製品はそれにアンプ回路を組み込んでおり、音声データの信号の変換と増幅を同時に行う機器となる。
DACアンプは廉価なものから非常に高額なハイエンド機まで、とても幅広い価格帯で多くのメーカーから発売されており、その中において当機はいわゆる「ミドル価格帯」に位置する、10万円~20万円以下の製品群に位置する。定価15,4000円。


【まとめの箇条書き】


本文は長くなりそうなので、ざっくり必要な情報だけ知りたい人向けに、箇条書きで要点だけ書き出しておく。

☆多機能で高音質。でありながら10万円台に価格が収まっており、非常におすすめできる、完成度の高い製品。
☆マルチに使えるので、デスクトップオーディオのシステム構築の幅がぐんと広がる。
☆最も重要な「音作り」は申し分がない。ほとんどフラットで、ナチュラルな出音。音場は適切な広さ、定位は及第点。解像度は非常に高い。
クール寄り・繊細な特性。機能の使用により少しはウォームに寄せられるが、基本は寒色系である。
☆デジタルフィルターと4段階のゲインとXSPACEとXBASSⅡにより、あらゆる特性のヘッドホンに適応できる。
・パワー十分。
・リモコンが便利。
☆縦置きが出来るのが最高
・アプリの完成度は低い。会員登録とログイン要る?
・デジタルフィルターのGTOによるアップサンプリングがとにかく優秀で、ごくごく自然に音源に聞き良い補正をかけてくれる。
・他、全体としてビルドクオリティは高く、ボタンの操作感やノブの回しやすさ、デザインの良さなどは価格帯からしても十分だろう。
・Bluetoothのレシーバーとして対応。LDAC、AACほかほとんどのコーデックに対応しており、接続安定性も高い。本機目玉の最新コーデック「aptX lossless」に対応。
・高出力だがほとんど発熱しない。回路が優秀。

【検証環境の紹介(読み飛ばし可)】


レビューに再現性を持たせるため、かつ公正さを保つため、筆者の使用機材などを紹介しておく。DACアンプはその特性上、他の使用機器や音源により性能の評価に誤謬が発生しやすいため。
なお、レビューそのものには重要性が低いため読み飛ばして大丈夫。

①音源


手持ちのダウンロード販売音源:すべてロスレス以上、ハイレゾ含む。
Windows10→ソフトは「Tune Browser」によりWASAPI再生。dpeaklimによりピークリミッター解除。
DAP→アプリは「Neutron Music Player」を使用。
CDからの直接再生は今回使っていない。CDプレイヤーに十分な性能のものを所持していないため。
Apple music:windows10のPCによる再生→公式ソフトウェア、サンプルレートは最大値(192kHz)ビット/サンプル24。
DAPによる再生→全てロスレス再生以上、ハイレゾロスレス含む。

②再生機器


PCはデスクトップのwindows10機。ピークリミッターを解除して使用。
詳細スペックはおそらく再生性能に関係せず記事を冗長にするため記載しない。
DAPはshanling M6 Ultra。

③接続・電源


PCはUSB接続。ケーブルは「NEO by OYAIDE Elec d+ USB class S rev.2」にハムノイズ除去機材「iFi iDefender+」を接続したうえで、USB端子に接続。
DAPとの接続には同じくオヤイデのBクラス、USB C接続。
電源アダプタは付属のiPowerⅡ(12V)

④使用したヘッドホン・イヤホン


・HIFIMAN edition XS :リケーブル・nobunaga labs 霧降(OFC錫メッキ)バランス4.4
・SENNHEISER HD800S:ケーブルは純正のバランス4.4
・SHURE SE846 :リケーブル・nobunaga labs 澪標(銀線金メッキ)バランス4.4 イヤーピースはspinfit W1

【かんたんな仕様と機能の紹介】


詳細なスペックに関しては、公式サイトのマニュアルを参照していただきた
い。

https://ifi-audio.jp/neo/neo_idsd2.html

機能:DAC、プリアンプ、ヘッドホンアンプ。Bluetooth5.4搭載。
PCM768kHz/32bit、DSD512、MQAフルデコードに対応。
出力は4.4バランス、6.3アンバランス、バランスXLRアナログライン出力、アンバランスRCAアナログライン出力。
入力はUSB3.0(2.0互換)、3.5mmアナログライン、同軸デジタル、光デジタル、クロック・シンク入力、Bluetooth接続による入力
ヘッドホン出力のパワー:4.4mmバランスは650mW600Ω、5,551mW@32Ω
6.3mmシングルエンドは184mW@600Ω、2,832mW
S/N比:-120dB(A)@3.3Vシングルエンド、6.2Vバランス
サイズ:214x158x41mm
重量:916g


以下、レビュー

【音質について】


特性はやや寒色系。フラット・ナチュラルな出音を意識して作られているのが伝わってくる。音場のひろさは適切で、大げさに間延びすることはない。定位感も優れているが、ハイエンド機に及ぶほどではなく、ヘッドホンの性能に左右されると思う。解像度は非常に高く、ヘッドホンの性能を十分に引き出してくれるだろう。分析的すぎるという印象はない。
各音域しっかりと組み立てられているが、ほんの僅かにドンシャリ(高音と低音がやや多く出る)。高音のヌケ◎。しかし、ボーカルは決して埋もれることがなく、ほぼフラットといってもいいだろう。
出音に”味付け”をして差別化を図るような設計は全くする気がないのは個人的に非常に高評価。機能性だけでなく、音作りもマルチに広いジャンルに対応できるようにとの姿勢だろう。
リスニングサウンドとして心地よく聞き入れる。

(1はバーブラウンらしく、ウォーミーで厚みのあるサウンドが特徴だったが、1は1年半のバーンインを経ての状態なので、2を今後使い込む中で変化があれば追記する。)


【音質以外について】


まず、縦置きが出来るのが最高。デスクトップオーディオの悩みどころのスペース問題だが、本機はその点極めて優秀だ。他に縦置きできるDACアンプにfiio K9 Proがあるが、性能や価格帯的にも強力なライバルだろう。縦置きの有用さにつき、今後も採用する機種が増えそう。
パワーは必要十分。鳴らしにくい(300Ω)ヘッドホンのHD800Sも余裕で鳴らしきれている。
パワーのゲインの選択が4段階であり、これが使い勝手が良い。特に、最もローゲインの「iEMachモード」が大変よい。超低インピーダンス(9Ω)イヤホンのSE846を自然な出音で駆動する。ギャングエラーはまったくない。ホワイトノイズもゼロ。素晴らしい。
BT入力は多くのコーデックを採用しており、LDACで聞いてみると非常に音質は高い。これがまた便利で、運用の幅が広がる。目玉機能のコーデック「aptX lossless」はまだ対応機種を持っていないので使用できなかった。
「Xspace」機能は音場が更に広がり、臨場感が増す。不自然な補正感がない。音はややウォームになる。
「XbassⅡ」は優秀な重低音補正機能。従来の低音強調に終止する単純なBASS機能ではなく、中高音域にも補正をかけることにより、中音域が埋もれず自然な音となる。XbassⅡの他に2パターンの補正機能があり、①単純な低音補正「XBASS」②中高音補正の「Presence」。
①は少しボワつく。低音がわかりやすく増す。②は中音がわかりやすく増す。ボーカルはぐっと前に出るが、なんか音像がやや不自然に感じた。
XbassⅡは非常に優れた機能で、やや低音が苦手はヘッドホン(平面駆動など)だと恩恵が大きい。①と②がやや不自然さがあったが、XbassⅡありきの機能のようだ。そのためこの2つは出番が少ないかもしれない。XbassⅡは常にONにしてもいいくらいの自然さ。
デジタルフィルターは、BP(Bit perfect)、STD(standard)、MIN(Minimum Phase)、GTO(Gibbs Transient-Optimised)の4種類から選択する。GTOはアップサンプリング機能だが、これがとにかく優秀で、ごくごく自然に音源を聞きよく補正をかけてくれる。前機種もGTOモードは同じく大変自然で驚いたので、引き続き採用されてよかった。
先述の4つのデジタルフィルターと4つのゲインと2つの補正により、あらゆる特性のヘッドホン・イヤホンに適応できるだろう。
専用アプリ「Nexis app」に対応しているが、このアプリは完成度が低いと感じた。会員登録もいるので、導入しなくてもいいかもしれない。
心配な点は、前機種は画面が焼け付きやすかったのだが、2はどうだろうか。長期使用してみないとわからない。
また、付属品としてACアダプターのiPower2が同梱されているが、これは電源のノイズを逆位相の信号で打消し除去する機器だ。1個14000円もするので付属するのはありがたい。

【前世代機(NEO iDSD)との比較(読み飛ばし可)】





・見た目はそっくり。アンテナは内部に収納された。
・1はほんのりかまぼこだったが、2は高音低音が自然に量感増しており、よりフラットに近くなった。ボーカルは自然な感じであるが、埋もれることはない。
☆パワー(電力供給量)が5倍になっている!1は低能率機器では正直ドライブしきれてないかな?という事もあったが、その心配は全くなくなった。単にパワーアップしただけでなく、ローゲインモードでの超低インピイヤホン駆動でのノイズ・ギャングエラーのなさから、回路の改善が目覚ましい。大変素晴らしい。
・少しだけ音がビビットになっている。ウオームさが取れて寒色系に近くなった。同じ特性のヘッドホンと組み合わせると、やや分析的なサウンドになってしまうかもしれない。
・音の粒立ちがよく、非常に解像感が増している。
・音場は、ノーマルだと自然な感じ。1より広がりがあるが、音の定位がもともとしっかりしているので分散感はない。
・追加機能はゲイン機能、Xspace、XBASSⅡが大きい。より多機能となって、組み合わせ機種や楽曲ジャンルも増えた。

【おわりに】


以上がNEO iDSD2のレビューとなる。
総評として、非常に満足度が高い多機能DACアンプだと思う。機能拡張とアンプ回路の改善から、まさに正統進化系の後継機といっていいだろう。
これ一台でいろいろできるので、デスクトップオーディオの楽しみもぐっと増える、おすすめのDACアンプだ。


【おまけ・今回の検証で聞いたリファレンス曲紹介(読み飛ばし可)】


最後に、今回の検証で聞いた曲を紹介することで、筆者の視聴傾向から本レビューがどの程度ご自身の音楽鑑賞に合致するかの参考としていただきたい。今回聞いていない音楽ジャンルによっては、レビューの内容も変わると思われるので、購入された方はぜひレビューしてみてほしい。

ANTIHERO/DUSTCELL、あるふぁYOU(prompt αU ver.)/花譜&EMA、海が褪せる頃/Inu、えろいむ/理芽、地球儀/米津玄師、馴れ合いサーブ/ずっと真夜中でいいのに。、Terminal/パソコン音楽クラブ、
鰐/オーラルヴァンパイア、Lute Suite In e Minor, BWV 996 : V. Bourree/ヤコブ・リンドベリ、法王のワルツ/THE PINBALLS、アンノウン・ワールドマップ/やくしまるえつこ、Dmt (Shpongle Static Mix) [Live]/Shpongle&Eat Static、Ga1ahad and Scientific Witchery/Mili、
中2病の神ドロシー ~筋肉少女帯メジャーデビュー25th記念曲(LIVE)/筋肉少女帯、ビヨルン/Diggy-MO'、One Last Kiss/宇多田ヒカル、Bass Me Baby/Annella、Science Fiction Double Feature/リチャード・オブライエン、Beat It/マイケル・ジャクソン、misterioso/Kalafina、アディオス/ダズビー、People=Shit/スリップノット、ダンスフロアとカボチャのおばけ/さよならポニーテール、かみさま/さユり、Yellow Calx/エイフェックス・ツイン、破損したファイル10010001/yanagamiyuki、WE ARE BACK/KMNZ、提灯暗航/HIMEHINA、HAPPY/group_inou
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