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短歌評以外

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矛盾がつくるミラクル――ラップってなんなのかシリーズ② ラップバトル編

 ①はこちら。ラップがイズム・リズム・ライムの3つの要素において同時にプレイする表現であり、ラップバトルはその3つのルールで競い合うスポーツであることを確認した。 ルールたちの相互干渉:それが矛盾するとき 3つのルールは相互に干渉し、それはしばしば矛盾という形で現れる。ノリをよくしようとすると中身のないラップになったり、言いたいことを言ってると韻が踏めなくなったり、長すぎる韻がリズムを邪魔したり、という事象がしばしば起こるのである。わかりやすい例を見てみよう。  この

ラップが弾丸じゃなくて毒矢であることについて──ラップってなんなのかシリーズ① ラップバトル編

 とりあえず最初に、2018年でいちばんよかったバトルの一つを引用します。何年かあと、「あのK’illとあのU-mallowがここで戦ってたのかよ」って事態になるんじゃないかな。 ラップの面白さとはなんなのか 「フリースタイルダンジョン」放映開始時くらいに、歌人の間でラップバトルの視聴が流行したらしい。わたしが短歌を始めたころにはだいぶ落ち着いてしまっていたみたいで、「ヒップホップ好きなんです~」みたいな話をすると「以前はダンジョン見てたよ!」というリアクションが多かった記

評ではない文章(さいきん考えていること)

 短歌の評以外の文章を書くのは気が進まない。  しかしこうなってくると(実はすべてにおいてそうなのかもしれないが)、書かないことはあえて書かないことに近い。短歌は(諸説あるが、今のところ僕が考えるかぎり)つまるところ人間という存在と切り離すことのできないもので、人間は人間社会から絶えず影響を与え続けられるものである。したがって、短歌を読むためには人間社会に関する最低限の理解を持っていなくてはいけない。短歌と人間社会の接続を認めないためには、明らかにあらわれている何らかをあえ