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見て、学んで、体験する!印刷と本づくりの工場見学会

この記事では、加藤文明社・atelier grayで行われたイベントについてお話します。

加藤文明社の新宿生産センターにある「atelier gray(アトリエグレー)」は、いつでも相談できてその場で製作できる印刷アトリエです。ものづくりの場所としてだけでなく、工場見学やセミナーなどのイベントスペースとしても活用いただいています。

2022年10月13日(木)には、阿佐ヶ谷美術専門学校 視覚デザインコースの学生のみなさんが工場見学にいらっしゃいました。

大きな機械と版を使うオフセット印刷機の見学、版のいらないデジタル印刷機の見学、製本工程のひとつである面付と折りのワークショップなど、学生のみなさんにとって初めての体験や発見に満ちた工場見学会となりました。

本づくりを見て、学んで、体験する工場見学会のレポートをお届けします。

はじめての印刷工場見学

今回工場を見学したのは、阿佐ヶ谷美術専門学校の視覚デザインコースでエディトリアルデザインを学ぶ学生11名。学校スタッフの方を含め、合計16名の方が参加しました。

引率する先生は、デザイナーの緒方裕子さんです。
以前書籍のお仕事でご一緒したのをきっかけに、今回の工場見学会が実現しました。

学校の授業では印刷や製本について学んだことがあるという学生のみなさんですが、実際に工場を見学するのは初めてだそう。みなさんワクワクされている様子です!

オフセット印刷機の見学

まず向かったのは、新宿生産センターの1階にあるオフセット印刷機のエリア。ここには4台のオフセット印刷機があります。その中の片面5色機を例に、オフセット印刷の仕組みについて紹介しました。

オフセット印刷機には、と呼ばれる四角い箱のようなものが付いています。ここにインクと版(刷版)が1色分ずつセットされ、紙がそれぞれの胴の中のローラーを通ることで1色ずつ重ねて印刷されるという仕組みです。この日印刷していたのは、CMYK+金の5色の印刷物。それぞれのインクが胴の中で波打って動くところは、印刷工場ならではの光景です。

次はの見学です。印刷機の中にセットされているので、外側からは見ることができません。そこで今回は、ヤレ版という印刷の終わった版をご用意しました。

真ん中の薄い板のようなものが版(刷版)です

菊全判というサイズの版ですが、1枚で大人でも身体が半分隠れるほどの大きさ。5色機では、それが5枚も使われているとは驚きですね!
オフセット印刷は版を使うからこそ、印刷物を速く大量に製造することができるんです。

紙を準備するところから印刷物を確認するところまで、オフセット印刷の一連の流れを見学したみなさん。機械の音やインクのにおいなど、工場の雰囲気を全身で体感しました。

学生のみなさんの声
「工場は想像しているよりも大きな音がしました」
「CMYKそれぞれの版が重なり合うことでフルカラーが再現されるということに、印刷技術のすごさを感じました」

デジタル印刷機の見学

次は2階のatelier grayへ移動し、デジタル印刷機を見学します。

デジタル印刷機の大きな特徴は、版がいらないこと!
デジタル印刷機では、紙にインクを直接噴射することで絵柄が印刷されます。そのため版が不要で、いろいろな種類のデータを一度に印刷することができるという特徴を持っています。

デジタル印刷機で印刷された森美術館の図録の表紙を眺める学生のみなさん

デジタル印刷機ならではの事例として注目を集めていたのが、3000種全てが異なるデザインで作られた森美術館の図録の表紙たちです。

学校で本のデザインを学んでいるみなさんは、大量のデザインデータがどうやって作られたのかとても気になった様子。その答えは、ぜひこちらの記事を読んでみてください!

学生のみなさんの声
「それぞれ異なるグラデーションがきれいで、自分の発想の引き出しが増えました」
「版がいらないのは便利だし、仕上がりも綺麗で自分の作品を印刷してみたいと思いました」

印刷と本づくりの仕組みをおさらい~面付を学ぶワークショップ

ここからは席に着いて、本づくりについてのちょっとした授業の時間です。
これまでに見学した印刷機のおさらいと、本が形になってみなさんの手元に届くまでの流れについてお話します。

1つの画像がCMYKに分かれたフィルムを使って、印刷順による見た目の違いを見てみます

学校で学ぶだけでは難しく感じていたという印刷の仕組みも、実際に工場を回ったことで理解が深まったようです。

後半はグループに分かれ、面付と折丁作りを学ぶためのワークショップに挑戦。
面付とは大きな紙に決まった順番でページを並べることを指し、面付された紙を決まった折り方で折ると折丁という冊子ができます。ひとつの本は、この折丁が集まることでできています。
このワークショップでは、ところどころ穴あきになった面付ページを貼り合わせ、きちんとページ順の通る折丁をつくってもらいました。

面付や折丁作りは、製本の重要な工程であるだけになかなか難しい作業です。グループ内で相談したり、ときには先生や私たちからのヒントを聞いたりしながら試行錯誤していました。

みなさん一生懸命考え、最後には全グループが折丁を作ることができました!
ワークショップを通じて、1枚の紙が折られて本が出来ていることや、製本にはさまざまな工程があることを体験してもらえたんじゃないでしょうか。

学生のみなさんの声
「最初は簡単なのでは?と思いましたが、やってみると難しく奥が深かったです」
「書店に並ぶ無数の本も、全て1枚の紙の集まりなんだとあらためて実感しました」

工場見学を終えて

およそ2時間の工場見学はあっという間に時間が過ぎ、終わりの時間を迎えました。

見学を終えた阿佐ヶ谷美術専門学校のみなさんから、ありがたいことにたくさんの感想を聞くことができました。

デザインの仕事のその先を見て聞いて知ることができ、とても貴重な体験でした」
「学校の授業を聞くだけでは上手くイメージすることができませんでしたが、工場を見学して印刷する様子がなんとなくイメージできるようになりました」
「自分にとっては言葉のみで知っている世界だったので、実物を見るのは刺激的な体験でした」
「本を読むときにどのように印刷されているか考えるようになり、自分も何か作ってみたいと思いました」

印刷工場ならではの驚きや発見をたくさん見つけてもらえたようで、とても嬉しく思います。本づくりには難しい工程が多いですが、この工場見学をきっかけにして学校での学びをもっと深めてもらえたらいいなと思っています。

さらに嬉しいのが、「自分も本を作りたい」「自分の本が形になるところを見てみたい」と思ってくれたことです。工場見学を通して、学生のみなさんが本を作ることのおもしろさを改めて感じてくれたことは、私たちにとっても励みになりました。

私たちは本づくりに携わる人たちを応援し、本づくりの文化を支え続けたいと思っています。そのための活動の1つとして、これからも学生のみなさんを招いた工場見学会を続けてまいります。活動の様子はnoteやTwitterで発信していきますので、ぜひチェックしてみてください。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

次の記事もお楽しみに。



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