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3者で共創するZINE作成プロジェクト◆第2号

この記事では、atelier grayの取り組みを紹介します。

写真家の西澤丞さんとのZINE制作プロジェクトが、第2回を迎えました!

このプロジェクトは、西澤さんと当社、お互いのPRツールになる写真集ZINEの作成を通して、本づくりにまつわるさまざまな疑問に答えていくものです。(第1回の記事はこちら

当社はプロジェクトを通して、みなさんに本づくりのヒントを見つけていただければと思っています。

2回目となる今回のテーマは、「」。
このテーマのもと、今回からは紙商社の平和紙業さんにもご協力いただくことになりました。

紙は本自体の印象や印刷の仕上がりに影響する、大切な要素のひとつです。
しかし西澤さんには「いろんな種類の紙があるのはわかるけど、どんな違いがあるのかわからないし、どう選べばいいのかもわからない」という疑問がありました。

そこで今回は西澤さん、平和紙業さん、加藤文明社の3者の視点で紙をじっくり選び、手にした人にも「紙選び」を体験してもらえるようなZINEを作ることにしました。

紙を選ぶ

平和紙業さんが主に取り扱っているファンシーペーパーは、コート紙やマットコート紙などのポピュラーな紙に比べて色や模様・風合いがあり、それぞれの個性が強い紙です。そして西澤さん撮影の写真は、ボリューム感がありコントラストもはっきりとしています。それを踏まえて、まずは紙のプロである平和紙業さんの目線でいくつかの紙をピックアップしてもらいました。

①紙の風合い・手触りに個性があるもの
・ベィビーフェイス スーパーホワイト 四六判/135kg
・ジェントル ロック 四六判/135kg

②ホワイトの色味に個性があるもの
・Aプラン ピュアホワイト/アイボリーホワイト 四六判/135kg

③紙肌に模様があり、見た目にわかりやすい個性があるもの
・パターンズF エグシェル 四六判/厚口
・WPHOエンボス 絹目 四六判/135kg

どの紙も個性豊かで、写真集に使ったらおもしろそうです!

ちなみに「四六判/135kg」という表記は、紙の厚さを表しています。
紙は「原紙という大きなサイズ(四六判・菊判などいろんな規格があります)の状態で1000枚あるときの重さ」で厚さを表し、同じ1000枚でも厚い紙は重く、薄い紙は軽くなります。
「四六判/135kg」の紙は、本文としては結構しっかりした厚みです。

紙の基礎知識についてもっと詳しく知りたい!という方は、平和紙業さんの公式サイトにて解説されていますのでぜひご覧ください。

こうして、ZINE2号の候補の紙が揃いました。はたして、印刷するとどんな違いが出るのでしょうか?ここからは、私たち印刷会社の目線で絞っていきます。

7種の紙で試し刷り

平和紙業さんのご協力のもと、今回はなんと7種の紙で試し刷りしてみました!
候補に上がった6種の紙にZINE1号でも使用したマットコート紙というポピュラーな紙を加え、その違いを比べてみます。
こんなに多種の紙で印刷する機会はなかなかありません…!

使用する印刷機は、JetPress720sというデジタル印刷機です。環境によって色が転ぶこともあるオフセット印刷機に比べ、常に同じ色味で印刷することができます。全く同じ写真を違う紙に印刷してみることで、紙による印刷の仕上がりの差を比べてみました。

△西澤さん(左)、平和紙業の西谷さん(中央)・髙塚さん(右)と印刷したものをじっくり検討中

デジタル印刷機はオフセット印刷機のように印刷時に圧をかけないので、デコボコした紙ではインクが浸透しづらい点があります。反面、それが紙の風合いとなり味のある仕上がりになることも…。

印刷との相性を考えながら、どの紙を使用するか考えました。

平和紙業 西谷さん「デジタル印刷機との組み合わせを考えると、ベィビーフェイスは多くの人がキレイと思いそうな優等生。他の紙は、写真によってはインクの乗らない紙もあるが風合いとしてどこまで考えるかというところだと思います。そういう目線だと、ジェントルロックもありかも。予想以上に大きな違いが出ました。」

西澤さん「紙によってこんなに差が出るとは驚きました。マットコートは単純に綺麗な印刷はできるかもしれないけど、情報を伝えるための紙という感じで個性がない。せっかくモノとして作るんだから、手触りや質感のあるおもしろい紙を使って、何か引っかかりの残る本にしたい。ジェントルロックは質感が強めでいいですね。」

写真ではお伝え出来ないのですが、ザラッとしていたりなめらかだったり、手触りもそれぞれ違います。見た目だけでなく、ページをめくるときの感覚も紙選びのポイントの一つです。

打ち合わせはさまざまな意見で盛り上がりましたが、最終的にZINE2号の仕様は下記のように決まりました。

◆表紙
ジェントル ロック 四六判/175kg

◆本文
ベイビーフェイス スーパーホワイト 四六判/135kg

◆印刷サンプル4種
・Aプラン アイボリーホワイト 四六判/135kg
・ジェントル ロック 四六判/135kg
・パターンズF エグシェル 四六判/厚口
・WPHOエンボス 絹目 四六判/135kg

本文・表紙に採用しなかった紙も、印刷サンプルとして差し込みます。

本に仕上げる

こうして決まった紙を使用して、出来上がったZINEがこちら!

表紙に使用したジェントルロックは少しラフな風合い。触った感じもかなり存在感があります。

本文はベイビーフェイス スーパーホワイト。凹凸が少なくデジタル印刷機向きではありますが、紙の風合いもきちんとあります。西澤さんの重厚感のある写真を、しっかりと表現することができました。

差し込んでいる印刷サンプルには本文と同じ4種類の写真を印刷し、違いを比べられるようにしました。
中には印刷が粗く感じる紙もありますが、印刷の仕上がりも含めていろんな紙を読者に見て、比べてほしいと考えています。

「この写真の印象はこの紙が好き」「手触りはこれが好き」など、きっとさまざまな感想が生まれると思います。ぜひお手に取り、「紙選び」を体験してみてください!

ZINE2号を作ってみて

平和紙業 西谷さん「印刷の綺麗さだけで比べるならコート紙やマットコート紙は高得点になるかもしれませんが、紙・写真・印刷の組み合わせで、人によってはそれ以上に良いと思えるものができます。紙選びのおもしろさを含め、今回の取り組みを発信する場を設けたいです。」

西澤さん「印刷も紙の質感もとてもいいです!商業印刷の場合、売るために内容や仕様について様々な制約があるけれど、今回はそういうものを全部無視して『作りたいものを作った!』という本ができました。」

本は情報を伝えるためだけのものではなく、記憶にも残るものだと思います。 あらゆる方面でデジタル化が進んでいますが、本として形に残すことの意味を考えたとき、紙にもこだわってみることで生まれる手触りや印刷の質感によって、その本の「個性」がより強く表現できるのではないでしょうか。

ZINE2号やこの記事をお読みいただいて「自分の作りたい本には、どんな紙が向いているんだろう?」と思った方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

次の記事もお楽しみに。



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