檸檬~見えてきた人物像
梶井基次郎の写真を見て「きっとこんな感じで書き物をしていたのじゃないかな」と想像してスケッチを重ねてきましたが、なかなか彫る行為にまで時間がかかりました。どうしてかな?と思いながら彫る行為に向き合おうとしない私。ならば、もう少し彼を知ろうと調べたり、他の短編をいくつか読んでいくことにしました。
ある崖の上の感情という短編小説が何とも陰鬱でありながら、登場人物の崖から見下ろす景色、窓が私の頭の中に浮かんできます。それは新見南吉のおぢいさんのランプの最後のシーンとどこか重なるような澄み切った空気と灯のついた四角い窓の数々を想像します。そこで見えた「もののあはれ」の気持を超えた「ある意力のある無常感」に梶井基次郎の死の直前に自分というものをさらけ出した作品のようにも感じました。私はそれからすっと彫り始めることができました。
檸檬はカッコいい梶井基次郎の美学のようなものを感じますが、どこか土臭さがプ~んと匂う。隠し切れないものが染み出してしまっている気もしますが、ある崖の上の感情は彼自身を感じずにはいられない。そう思えた時、梶井基次郎という人間に惚れ込んで彫ろうと思たのかもしれません。
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