不妊さまと妊婦さまと教祖さま 1

私は今、深夜の騒音に悩まされている。

上の階に住む2歳の男の子が昼夜構わず走り回り叫び飛び跳ねるのだ。

その状況で考えたことをここに記したいと思う。


私はまもなく37歳になる専業主婦で、夫の仕事の都合でロンドンに住んでいる。

子供はいない。

結婚した当初は子供が欲しいと思っていた。しかし夫は非常に慎重な性格で、自分の海外転勤が決まるまで結婚を決意しなかった。

その時は私はすでに30歳。

海外転勤が決まり、急遽双方の親に挨拶に行き、顔合わせをして、籍を入れた。

結婚式は間に合わなかったのでフォトスタジオで写真だけ撮った直後、彼は慌ただしくイギリスに旅立っていった。

私もその後、仕事の引き継ぎをしながら、VISA申請や船便の手配、海外赴任者向け健康診断などをこなし、彼に遅れること3ヶ月でイギリス生活を始めることになった。

一緒の生活が始まってからも、夫は毎日深夜に帰宅、休日も駐在員特有?の同僚家族を含めた集まり、私自身も慣れない生活の中でストレスと貯めていた。

この人と一生一緒にやっていけるのか、正直信じられない心持ちになったが、飛行機に乗って逃げるわけにもいかず鬱々とした日々を過ごしていた。

そうこうする中で、1回目の赴任期間の1年が終わり、日本に帰国することになった。

日本に帰ってからも、家探し、家具探し、職探し、出来ていなかった結婚式、、と毎日忙しかった。

そんな折、義母の末期がんが発覚する。

夫の家族はもしかしたら前々から知っていたのかもしれない。

私たちの結婚式が控えているおめでたい空気の中で、内緒にしていたのかもしれないと思う。

発覚してから手術や放射線治療、抗がん剤治療を行った。

胃がんと大腸がんだったからだろうか、食欲が湧かないようでみるみる痩せていってしまった。発覚から3ヶ月で義母は亡くなってしまった。

夫はひどく落ち込んでいたと思う。

しかし感情を外に出さない性格の彼は、淡々とただ淡々と必要事項をこなしていた。泣きたかったと思うし、どこかで一人泣いたんだろうとは思う。けど、私の前では決して涙を見せたりはしなかった。

とにかく結婚して2年ほどは環境が目まぐるしく変わり、子供について考える余裕など一切なかった。しかも、ようやく生活が落ち着いたかと思った矢先に、2回目のイギリス赴任が決まったのである。

2回目のイギリス生活が落ち着いた頃には、私は34歳、高齢出産認定目前となっていた。

2へ続く


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