見出し画像

ヘルシンキ、アアルトツアー 2 自邸(The Aalto House)

*前の記事はこちら ↓


フィンランドを代表する建築家アアルトが、亡くなるまで40年にわたり家族と暮らした自邸を訪ねました。 
アアルトは1933年に妻アイノと二人の子供たちとトゥルクからヘルシンキに転居し、1936年にこの自宅兼設計事務所が完成しました。 

アアルトの家はこちら・・みたいな道案内もなく、閑静な住宅街に佇むたたず1軒の白い家。
温もりを感じる小さな木のドアが、訪ねる人を招き入れてくれました。 


スタジオにもこちらにも、なぜかほうきが・・


アアルト邸は、元々の地形を生かして建てられています。フィンランドでは敷地全体を平らに整地するという発想があまり無いのかも知れません。素人の私の想像ですが、模型を見ると、最初からこの地形に対してどんな家を建てようかと発想しているような気がします。


庭からみたアアルト邸。 大豪邸ではなく、むしろこじんまりした印象なのに、室内にいて狭いとは感じません。
住む人の暮らしに寄り添った、温かみのある心地よい空間でした。


植栽の緑におおわれ、自然に溶け込んた家。


林を散策しているような庭の風景。 



素朴な花々。


リビングルーム。 
夫妻が作った家具や照明の名品がたくさん置かれています。 タンクチェア(アームチェア400)のゼブラ柄は、妻のアイノが好んだ柄でした。

奥はダニングルーム


リビングの窓には、日本のすだれがかかっていました。アアルトは日本を訪れたことはありませんが、日本大使と面識があったそうで、所々に日本の影響が見受けられます。 本棚には能面の作品集もありました。


観葉植物を置く棚は窓下のヒーターの上に作られています。 寒い冬でも緑を楽しむための細やかな配慮が感じられました。


若き日のアアルト夫妻。
アアルトは社交的で男性にも女性にも好かれたそうです。あら、顔立ちもカッコいい!! 妻にジゴロが必要だと言ってみたり、何だかやんちゃなアアルト?と、温かく燃える冬の暖炉みたいなアイノ・・・素敵なカップルです。

物事を楽天的にみるアアルトは、妻の病についても、また元気になると思っていたらしい・・・そう信じたかったのかも知れません。病の影が忍び寄る頃、アアルトはアメリカの仕事で不在がちでした。 映画「AALTO」では、生涯を通じて二人がやり取りしたたくさんの手紙の一節が語られています。離れたところにいてお互いを想う気持ち(そこには複雑な心境や孤独も含まれますが・・・)がにじみ出て、心を打たれました。
イタリア旅行の翌年、最愛の妻アイノは乳がんで54歳で世を去りました。(1894-1949年) 

画像:https://www.artek.fi/jp/company/designers/alvar-aaltoより


設計スタジオとリビングは木製の引き戸で仕切ることができ、開放したときは段差がスペースを分けてくれます。スタッフも家族の一員のように、子供たちも時には仕事机の間を駆け回ったりして、ひとつながりの空間を共有したのでしょう。
ピアノの上にはアイノの素敵なポートレートが飾られていました。


大きな窓から外光が入る吹き抜けの設計スタジオ。 当時の図面や設計道具が置かれ、今まさにここでプロジェクトが進んでいるかのような錯覚に陥ります。 目線の高さには窓がなく、集中して作業が出来そう。

長く光が入るように西側に面しています

 

スタジオの角にあるアアルトの白い仕事机。 二面の窓の外は緑が一杯で、樹々の向こうにグラウンドが見えました。 


スタジオからライブラリーに向かう階段。縦置きと暖炉の横置きのレンガがリズミカルで良いアクセントになっています。


ライブラリーで模型を見る親子。 ユーロ導入前の50マルッカ札にはアアルトの肖像が描かれ、フィンランドが誇る国民的な建築家でした。 


会いたくない訪問客が来ると、スタジオ脇の扉からこっそり2階に隠れてしまったとか・・・


リビングから続くダイニングルーム。
キッチンにつながる廊下に面した食器棚は、両面から使えるようになっています。ダイニングの椅子は、新婚旅行先のイタリアで買い求めたチロルチェア。 そのせいか部屋の雰囲気もどことなく山荘風です。 


食器棚に置かれたボルゲブリックは、アイノがデザインして国際的な評価を得たガラス器。水面に石を投げて広がる波紋をイメージしていて、スタッキングも出来る実用品です。フィンランドの家庭で必ず見かけるのではないでしょうか。
アイノは、良き妻・母であると同時に優れた建築家・デザイナーでもありました。アルテック社の初代アートディレクター、後に社長も務めています。キャリアウーマンやワーキングマザーという言葉などなかっただろう時代に、そんな生き方が出来たなんて驚きです。アアルトの人生最良のパートナーでした。

ボルゲブリックはイッタラのロングセラーで、現在アイノ・アアルトシリーズと呼ばれています


ギンガムチェックのカーテンが可愛らしいキッチン。 ちょっと昭和な感じも? 


キッチンの片隅も、私にはぷち萌えスポット♪


遊び心を感じます♪


リビングには再婚した妻エリッサが、アアルトの肩を抱いた写真もありました。二人の何ともいえない柔らかな表情が素敵です。アイノを失ったアアルトがこんな笑顔になれるなんて・・ エリッサもまた建築家で、アアルトの晩年を支えました。アイノとエリッサふたりの存在なくしては、アアルトの芸術は語れないでしょう。

23歳年下のエリッサとアルヴァ


2階はプライべートスペース。暖炉のある小さいリビングを中心に、寝室や子供部屋、ゲストルーム、バスルームがあります。


暖炉の上に置かれたアイノの肖像画。  


モダンで上品な室内。子供っぽくない子供部屋に驚きます。




バスルームの洗面ボウルは、バイミオのサナトリウムのために設計されたもの。水の音が静かなのだそうです。


主寝室


クローゼットすら素敵過ぎる! 旅行鞄とスツールが良い味出してます。


広々した2階のルーフテラス


外を回ってみると、意外と窓が小さいことに気づきます。窓は主に庭に面した側にあり、通り側はほとんど閉ざされています。厳しい冬を過ごすためだと思いますが、室内にいると差し込む光や外の気配を豊かに感じます。 


昔ならがの木の柵

暮らしと自然に寄り添うアアルトハウス。
暮らしが一番美しい
・・ そんなフレーズが浮かびました。


余韻に浸りながら歩いていると、カフェの看板が目に入りました。ちょうど小腹も空いてきたので、ランチを取ることにしました。

Munkkiniemen puistotie 22, Helsinki, 


まさに


雰囲気も良く、美味しかった♪


スタジオと自邸のあるムンキニエミは、ヘルシンキ中心部から北西に5kmほど。 少し歩くと海に出ます。アアルトとアイノ、エリッサも海辺まで散歩したのかしら。
アアルトと二人の妻が奏でた愛を感じる一日でもありました。


<公式サイト>