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手紙

おまイの。しせ(出世)には。みなたまけ(驚き)ました。
わたくしもよろこんでをりまする。

なかた(中田)のかんのんさまに。さまにねん(毎年)。
よこもり(夜籠り)を。いたしました。

べん京なぼでも(勉強いくらしても)。きりかない。
いぼし(烏帽子:近所の地名)。ほわ(には)こまりをりますか。
おまいか。きたならば。もしわけ(申し訳)かてきましよ。

はるになるト。みなほかいド(北海道)に。いて(行って)しまいます。
わたしも。こころぼそくありまする。
ドカ(どうか)はやく。きてくだされ。

かねを。もろた。こトたれにもきかせません。
それをきかせるトみなのれて(飲まれて)。しまいます。

はやくきてくたされ。

はやくきてくたされ

はやくきてくたされ。

はやくきてくたされ。

いしよの(一生の)たのみて。ありまする

にし(西)さむいてわ。おかみ(拝み)。
ひかし(東)さむいてわおかみ。しております。

きた(北)さむいてわおかみおります。
みなみ(南)たむいてわおかんておりまする。

ついたち(一日)にわしをたち(塩絶ち)をしております。
ゐ少さま(栄晶様:修験道の僧侶の名前)に。ついたちにわ
おかんてもろておりまする。

なにおわすれても。これわすれません。

さしん(写真)おみるト。いただいておりまする。(神様に捧げるように頂く)

はやくきてくたされ。いつくるトおせて(教えて)くたされ。
これのへんちち(返事を)まちてをりまする。

ねてもねむられません

この手紙は、米ロックフェラー研究所で研究を始め目覚ましい成果を挙げ始めた野口英世に、郷里の母シカが送った手紙である。
シカは文字が書けなかったのだけれど、息子に会いたい一心で囲炉裏の灰を指につけ練習したという。
(写真は2021年8月福島/野口英世記念館を訪れた時のもの)

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