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急坂

ぼくが少し前からとても気になる漢字の読みがある。
それは「急坂」
皆さん、これを何とお読みなるだろう。
存外に「きゅうざか」とお読みなる方がおられるのではないか。

辞書を引くとわかるが、基本的に「さか」あるいは「ざか」は、固有名詞の場合の読みである。
では、その他はどうか。

『広辞苑』   
はんろ 【坂路 ・ 阪路】さかみち。   
きゅうはん 【急坂】  勾配 (こうばい) の急な坂。   
とうはん 【登坂】(トハンとも) (車両が) 坂を登ること。
⇒とうはんしゃせん 【登坂車線】   
とうはんしゃせん 【登坂車線】 道路の上り坂で速度の遅くなる車両のために特に設けられている車線。

つまり「はん」と読むのがおそらくは正しい。
ただ「坂」を「はん」と読むということを知らないと「急坂」は「きゅうはん」とは読めない。
分かりやすさからすれば「きゅうはん」よりも「きゅうざか」がわかりやすいのは否めないが、だったら何も「きゅうざか」などと略さず「急な坂」でいいのではないか。
「とはんしゃせん」を、まさか「のぼりざかしゃせん」とは言わないだろう。

「裏面 (りめん)」 ⇒ 「裏面 (うらめん)」、「肉汁 (にくじゅう)」 ⇒ 「肉汁(にくじる)」、「代替 (だいたい)」 ⇒ 「代替え (だいがえ)」

意外とこういう例は多い。
多くはあるが、基本的な漢字の読みは変わらないわけで、それを知ったうえで使うのであればいいと思うが、まるっきり勘違いしたまま使うと、それは結構残念なことなのではないだろうか。

日本語は難しい。
方言まで含めると、ありがとうだけでも50通り以上の表現があるのだ。
簡単で意味がわかりやすい、というのはコミュニケーションの手段においての言語では必要な条件だと思うが、その難解な言語を使いこなすことも日本語を母国語とするものの誇りではないかと思う。
これは年寄りの愚痴なのかも知れないが。

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