不安な中で別の案を考える防衛的悲観主義
私たちは,できればネガティブな感情を避けたいと思いますし,ポジティブな感情を抱きたいと望むものです。うまく自尊感情を守り,感情をコントロールし,行動に結びつく動機づけを維持するために,さまざまな戦略を用いています。
そのなかでも,防衛的悲観主義(defensive pessimism)という戦略があります。
これは,評価されるような場面において,非現実的に低い期待値を設定して,起こりえる結果についてあれこれを考察することを意味します。物事を全体的に悲観的に捉えて,どのような対処ができるかを考えていくような戦略です。
そして,防衛的悲観主義の戦略を行った結果については,あまり悪いパフォーマンスを示さないことが知られています。むしろ,防衛的悲観主義を妨げられたときには,パフォーマンスが低下する人もいるそうです。おそらく,学校の定期試験や入試などでも,防衛的悲観主義の戦略を取りつつ乗り切った人は少なくないのではないでしょうか。
低い期待値
防衛的悲観主義は,結果や評価に対して低い期待を抱くことで,不安を引き起こすような状況で生じます。そして,頭の中でさまざまなシナリオについて考え続けて,対応しようと試みます。
通常,不安は避けるべきネガティブな感情なのですが,試験を前にしたときなどはむしろ,不安を抱くことで次への行動を生じさせることもあるのです。たとえば「一通り勉強したけれど,不安だからもう一度,見直しておこう」といったように。
入試前の調査
今回は,大学入試前の高校生を対象として,防衛的悲観主義に対してどのような要因が関係するかを検討したものです。不安や認知的な柔軟性,ビッグ・ファイブ・パーソナリティなど,いくつかの要因が検討されています。ただし,トルコ共和国で行われた研究です。
では,こちらの論文で内容を確認してみましょう(The predictors of defensive pessimism: Cognitive flexibility, anxiety, and big-five personality traits)。
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