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ExtrOversionとExtrAversionの違い

外向性というパーソナリティ特性を表す英単語には,2つの「バージョン」があります。このことについては以前にも記事を書いたことがあるのですが,今回はその続きです。

AとO

2つのバージョンというのは,

◎Extraversion
◎Extroversion

です。AバージョンとOバージョンですね。

海外の記事

この問題について,海外の記事を見かけましたので,今回はその内容を見てみようと思います。こちらの記事です(The Difference between ExtrAversion and ExtrOversion)。

この著者も,ある記事を書いたときに「extraversion」と書いたら「スペルが間違っているのではないか?」と言われたそうなのです。

ユング

外向性—内向性という組み合わせを最初に提唱したのは,精神分析家のカール・ユングです。ではユングは「A」と「O」の,どちらを使っていたのでしょうか。

正解は「extrAversion」です。もっとも,英語ではなくドイツ語で書いていたと思うのですけれども。「extravertierte」と書くようです。

どうして「O」?

しかし,英語を使う人々の間では,「extrOversion」がよく使われています。以前の記事では,Google Ngram Viewerで検索することで,「extrOversion」はイギリスよりもアメリカでよく使われるのではないかというグラフを提示しました。アメリカ英語とイギリス英語の本の中から単語を検索できますからね。

それもそのはず,現在でも「extrOversion」は,アメリカ英語でよく使われる表現なのだそうです。

introversionに合わせた?

オンライン辞書によると,「extro」という表現が登場しはじめたのは1918年なのだそうです。

記事のなかではこの綴りをはじめたのではないかという著作についても紹介されているのですが,どうして「o」を使うようになってしまったのでしょうか。

もしかしたら,内向性(introversion)に合わせて外向性(extroversion)のスペルを変えた,もしくはミスをしたではないかと推測されています。

ラテン語はA

もともとのラテン語で考えれば,introは「o」,extraは「a」がやはり正しいそうです。ユングの表現は正しく,introversionとextraversionが本来の綴りです。ここを「o」に合わせることには,あまり説得力がなさそうです。

いまや辞書にも,「オリジナルの綴りである「Extravert」は,現在では一般的に使われることはまれだが,心理学の専門的な使用では見られる」とすら書かれているそうです……なんということでしょうか。「o」が「a」を駆逐してしまったようです。

さらに皮肉なことに,ユング理論に基づいたことを書いているのに「extrOversion」と記載している記事や書籍も少ないようで。ユングに忠実なら,ちゃんとオリジナルの記述に従って「A」を使った方がいいですよね。

なんだか,日本語でよく見る「外向性」を「外交性」と書いてしまう問題を彷彿とさせる混乱ぶりでした。少なくとも心理学で外向性について書くときには,extraversionを使った方がよさそうです。

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