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最高速度が「目安」にしかならない世の中

免許を取って車の運転を始めて,最初に「こういうものなの?」と感じるのは,最高速度についてではないでしょうか。もしかしたら,運転を始める前に助手席や後部座席に座っているときから感じることかもしれません。

それは,多くの車が指定された最高速度を守って走行してはいないということです。

守らない

決まりとしては,「最高速度が指定されている道路ではその最高速度を超えて走行してはいけない」ということになっていますので,スピードが最高速度を超えたらアウトになるはずです。

とはいえ,速度の制限を守って走っていると,後ろにぴったりとつかれたり,煽られたり,抜かそうと左右に車体を揺らしたり……いろいろなことをされるのも事実です。

私の家の前の道路は狭く,最高速度は時速30kmに制限されています。でも,多くの車はその速度を守って走っているとは思えません。なかには時速50kmとか,60kmくらい出ている車もあるのではないかと思います。カーブも多いので,子どもが出歩くときには心配してしまいます……。

気持ちはわかる

とはいえ,最高速度を超えて運転する気持ちはわからなくもありません。家の前の道が狭いとはいえ,運転していると時速30kmというのは,たしかにあまりにも遅いような気がしてしまいます。

昔の車に比べ,最近の車は室内も静かですし運転している感覚も異なっています。体感としては,時速40kmくらいでちょうどいいくらいかな,という感じもします。

どうも日本では全般的に,最高速度が遅めに設定されているように思うのですよね。

アメリカでの経験

以前,アメリカに長期滞在していたときに日常的に自動車を運転していて,何日もかけて移動するロードトリップにも出かけました。

テキサス州に住んでいましたので,郊外のハイウェイを走っていると「70mph」(時速70マイル)という看板を見ます。時速に換算すると「約113km」です。日本の道路の感覚だと速いですよね。アメリカですのでハイウェイとはいえ,高架になっているわけではありません。

たとえばこの記事の見出し画像が,そんなテキサス州郊外のどこまでもまっすぐな道路の写真です。日本でこういう風景をみることができるのは,北海道くらいでしょうか。

さらにテキサス州では,もっと道路状況がよいところになると,この看板が「75mph」や「80mph」になるのです。そして私が住んでいたテキサス州オースティン郊外にはなんと「85mph」という看板もあるのです。

「85mph」というのは時速135km以上です。さすがにアメリカのなかでもいちばん高いスピードリミットのようです。テキサスは広くて(面積が日本全体の2倍弱),たぶん州にお金もあるのか(油田もありますしIT企業も多いですし),隣の州からテキサス州に入ると急に道路状況がよくなり速度制限が上がるという経験をしました。

とはいえ,さすがに時速135kmで走るというのは「怖い」と感じます。そして,多くの最高速度制限が,「ちょうどいいかな」とか「ちょっと怖い」とか,それくらいの速度になっているように感じました。もちろんそれは,私の限られた経験に過ぎませんけれども。

ただ,街中だと一気に速度制限が低くなります。街と街を結ぶ道路を走っていて住宅地が近づいていると,だんだん最高速度制限が下がっていきます。70mphから60mphになり50mphになり,30mphになるといった具合です。とはいえ30mphでも,時速48kmくらいなのですけどね。

これも,それぞれの街が陸の孤島のようになっているアメリカ南部の特徴かもしれません。北部だと住宅地が多いので,また状況は違っていそうです。

いずれにしても,日本の「低すぎるんじゃない?」という最高速度制限と,アメリカ(テキサス州)の「速すぎるんじゃない?」という最高速度制限,どっちの方がよいのでしょう。

超えようとはしない

アメリカだと,多くの車が最高速度制限を守ります。だって,最高速度制限を超えたらあの怖い警察がやってくるのかもしれないのです。ちなみに,アメリカで警察に車を止められたら,絶対に車から降りないようにして,ハンドルに両手を置いておくように注意しましょう。

少しでも速度制限をオーバーしたらやってきそうですから,結構きちんと多くの車が速度制限を守っているか,あるいは少しだけオーバーして走っています。もちろん,飛ばしていく車がいないわけではありませんけどね。

ただ,最高速度制限が高めに設定されているのですから,制限を守って走っても「そんなに遅くない」と感じるんじゃないかな,と運転しながら思ったのも確かです。日本の運転での「遅い!」という感覚とはちょっと違うことを感じていました。

日本だと,「速度制限プラス○キロだから許容範囲内じゃないか!」と思う人がいそうですよね。実際,少しだけ超えて走っていてもそうそう捕まるわけではありません。自由な裁量の部分が多く,不明瞭ですよね。そして,捕まえる方もほとんどの車が最高速度をオーバーしているのであれば,それは「誰をいつでも捕まえられる」状態になっているとも考えられるのです。それは,裁量権を捕まえる側に委ねている,とも言えるのではないでしょうか。

それを避けるために,レーダー探知機を車につけている人も少なくありません。速度測定器のレーダーを探知して,運転者に知らせる装置です。私もつけていたことはありましたが,なんだか釈然としないのも確かです。

原因を何に求めるか

すると,何が起きるかです。自分で「許容範囲内じゃないか」と考えているときに速度制限違反で捕まるのは,「運が悪いから」と原因を考えてしまいかねません。

運に原因を求めることは,自分には統制不可能で不安定な要因に原因を求めることを意味します。自分には統制不可能な要因に原因を求めることに対しては,「自分では何をやってもしょうがない」と考えがちです。これでは,行動の修正が生じにくいのではないかと予想されます。

つまり,最高速度制限を超えて捕まっても「運が悪かったからしょうがない」と考えてしまい,「次は速度制限を守って走ろう」というような反省には,なかなかつながらないだろうな,ということです。

多くの人が最高速度制限を超えたスピードで走っているという現実は,そのことを表しているのではないかと思ったのでした。

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