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人を判断するときは「あたたかさ」と「有能さ」で判断する

選挙の時にも特に思うのですが,私たちは誰かの姿を見て,一瞬で何かを判断しようとします。おそらく,授業が始まった瞬間に学生たちが教える教員の姿を見た時にも,「この先生はこんな感じ」と一瞬で判断します。

今年はオンラインの授業が多いでしょうから,ますますそういう印象の形成のしかたは変わってくるかもしれませんね。顔を見せるか見せないかとか,途中で止まってしまったり,声のボリュームや通信状況の問題などの影響も,第一印象の形成に影響を与えそうです。

このように書いてくると,こういった研究も面白そうだと思いました。就活もオンラインで行うことが増えていますので,多くの人にとってもこのような研究は意義があるのではないでしょうか。いや,きっともう誰かが研究をしていますよね。

判断基準

誰かをぱっと判断するときに,どのような軸で判断しているかという問題があります。

「軸」というのは,どのような判断基準なのかということです。もちろん,人によって,自分自身や他の人を判断する基準はそれぞれです。しかし,おおまかにまとめていくと,おおよそ多くの人が何を基準に判断しているのかがわかっていきます。

あたたかさ

どうやら,まずひとつの多くの人に共通する判断する軸は,「あたたかさ」(warmth)のようです。これは,社会的にうまくいきそうな人物かどうか,という判定の軸です。

具体的な内容としては,幸せそうか,明るそうか,社会性がありそうか,ユーモアがありそうか,誠実そうか,人を助けそうか,情にもろそうか……といったものです。

ビッグ・ファイブ・パーソナリティでいえば,協調性や調和性(agreeableness)に近い内容となります。

確かに,誰かをみたときに「やさしそうな雰囲気」という印象は,すぐに抱きそうです。

有能さ

もうひとつの評価軸は,「有能さ」(competence)です。これは,その人物が能力がありそうかどうかという判断の軸になります。

具体的には,科学的な意見を言うかどうか,決定力がありそうか,粘り強そうかどうか,スキルがありそうか,賢そうか,想像力がありそうか……といった内容です。本当に賢いかどうかは別にして,「賢そうかどうか」というイメージであることがポイントです。

これも確かに,人をパッと見たときに判断しそうな内容ではあります。

組み合わせ

この,あたたかさと賢さのイメージは,互いに独立しています。互いに独立というのは,片方の内容がもう片方の内容にあまり影響を及ぼさないということです。

わかりやすくいえば

◎あたたかく賢い
◎あたたかく賢くない
◎冷たく賢い
◎冷たく賢くない

というイメージの人物が,ほぼ同数くらいいる,ということを意味します。

皆さん自身や皆さんの周囲にいる人は,どのようなイメージでとらえることができるでしょうか。

そして,選挙などがあったときに,候補者を何となくのイメージで,「あたたかさ」と「賢さ」で分類したり,縦軸と横軸の図の中に配置してみると,人物像が明確になって面白いかもしれません。もちろんこれは,第一印象だけの話です。政策の内容や,本当に本人がどういう人物であるかということとは全く別の話です。

ステレオタイプ

このような第一印象の軸は,ステレオタイプにも結びつきます。「こういう人たちは,こういうイメージだ」という印象を形成するときに,このあたたかさと賢さの軸が使われやすいということです。そして,その印象の形成は,偏見を生み出したりステレオタイプを強めたりします。

たとえば「女性というのはやさしく,賢くないものだ」というステレオタイプは,日本人の中に根強くあるのではないでしょうか。そして,活躍する女性の研究者や女性の政治家,女性の実業家などを見たときには,「この女性は賢いけれど,やさしくなさそうだ」と判断しがちです。自分自身が持つステレオタイプと違う人物が目の前に現れたときに,もうひとつのポジティブさを低めることで,全体的な印象の好ましさを高めないようにすることで「女性はやはり優れていない」という最初の印象を維持しようとするというわけです。

そういうことはないでしょうか?ぜひ考えてみてください。

参考文献

◎Universal dimensions of social cognition: warmth and competence.

◎偏見や差別はなぜ起こる?

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