見出し画像

個別の領域の自尊感情と全体の自尊感情の関係は

教科書によく出てくる自尊感情のモデルの一つに,階層構造モデルがあります。心理学者シェーベルソン(Shavelson)のモデルがよく知られているのではないでしょうか。このモデルでは,グローバルな自尊感情つまり個人の人間としての価値に対する総合的な評価と,領域別の自尊感情が設定されます。領域別の自尊感情は,学力や容姿,社会的関係など特定の領域における自分自身の評価のことを指します。

トップダウンかボトムアップか

全体と領域固有の自尊感情の関係を考える時に,下から上に影響があるのか,上から下に影響があるのか,どちらかという疑問が浮かびます。個別領域の自尊感情が全体の自尊感情に影響するというボトムアップのプロセスが見られるのか,それとも全体の自尊感情が個別の領域に影響するというトップダウンのプロセスが見られるのかです。

しかし,このどちらが正しいのかについて,明確な結論を得るのは簡単ではありません。ひとつの方法は,縦断的な調査(同じ人々に対してくり返し調査を行う)から,因果関係を推定することでしょう。しかしこれも,研究によって結論は一致しない傾向があるようです。

メタ分析

そこで,縦断的な研究を集めてメタ分析を試みたらどうなるか,というのが今回紹介する研究です。

自尊感情は個別領域から全体に影響するのでしょうか,それとも全体から個別領域に影響するのでしょうか。この論文で確認してみましょう(Testing the Bottom-Up and Top-Down Models of Self-Esteem: A Meta-Analysis of Longitudinal Studies)。

ここから先は

1,468字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?