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質問紙の項目数が多くなると問題が生じるか

最近は私の分野の研究でも,オンラインアンケートでの調査ばかりになっています。便利ですよね。何と言っても,書き込まれた数字を入力しなくてもいいのですから。

「ゼロ」を使わない理由

少し話は変わりますが,心理学では「あてはまらない」「どちらともいえない」「あてはまる」といったように,段階を設けた回答の選択肢を設定することが多いのです。そして,「あてはまらない」を「1点」として,そこから得点を高くしていくことがよくおこなわれています。

「あてはまらない」のですから,これを「0点」にしても「1点」にしても構わないはずです。「0」から始まれば,数字もわかりやすいような気がしますよね。

以前にも書いたことがあるような気がするのですが,これは「テンキーでデータを入力しやすいように」という配慮の名残りではないでしょうか。学生時代に「いちばん小さな数字は1にしておけ。そうしないと,テンキーでゼロを入力するのは指の位置を動かさないといけないから面倒」という話を聞いたことがあります。確かに,テンキーはゼロだけ下にありますからね。そして,学生時代は紙に印刷された質問紙の束をキーボードの横に置いて,数字を入力したものです。

他にもネット調査だとスライドバーを使うことができたり動画を見せることができたり,調査の方法は大きく変わってきました。

回答率

しかし,どうしても厄介なのが,回答率が低くなることです。ネット調査だと,アンケートに答えていて,途中でやめてしまうひとが多くなってしまうのです。

ひとつの対処方法は,質問項目数を少なくしてしまうことです。しかし一方でそれは,研究で用いることができる変数の数を制限することにもなります。ここにもトレードオフの関係があって,多くの質問をすることで調査したい範囲をカバーできるのに回答の労力から途中で離脱する人が増えてしまう,多くの人に答えてもらおうと質問の数を少なくすると研究で十分に検討できない可能性が出てくる……という関係が生じます。

では,どれくらいの質問なら答えてくれるのでしょうか。

3種類の長さ

長期の研究参加者認識調査(RPPS-L)という質問票がアメリカの国立衛生研究所で実施されています。RPPSはもともと72の質問項目があるのですが,回答のバラツキが問題になっていたそうです。そこでもっと質問数が少ないものも開発されているのですが,結果的に3種類の質問項目数の調査票ができたそうです。

この3種類で調査された結果を比較してみたという研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Impact of survey length and compensation on validity, reliability, and sample characteristics for Ultrashort-, Short-, and Long-Research Participant Perception Surveys)。

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