パーソナリティの再現性

パーソナリティ特性は実生活に関連するのでしょうか。このnoteの記事でも,いろいろな実生活上の行動や結果にパーソナリティ特性が関連する論文を紹介してきました。

こういう問題を扱うときの難しさは,
◎結果が再現されるのか
◎関連の大きさはどれくらいなのか

という点をちゃんと検討するところにあります。

パーソナリティと実生活のさまざまな問題との関連の大きさはやはりそれほど大きなものではないため,たまたまその関連が見られたわけではなく,繰り返し観察されるということを示すことに意義はあります。

近年,研究の再現性が取り沙汰される機会が多いこともあり,やはりこの研究領域でもこの問題をちゃんとしておこうという動きが見られるということです。

パーソナリティ係数

2018年に88歳で亡くなった,ウォルター・ミシェルは,『パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ』(誠信書房)の中でこの問題に触れています。

質問紙で測定されたパーソナリティと,異なる手法で測定された外部の変数との間の関連の大きさが「せいぜい0.20から0.30程度」であるという問題です。ミシェルはこれを「パーソナリティ係数」と呼びました。

小さい係数に意味はないか

ただし,小さな関連だから意味がない,というわけでもないのです。相関係数の大きさが0.1にも満たないような関連を問題にする研究の文脈もあります。

「小さいからその関連には意味がない」ということではなく,だったらそれが「何を意味するのか」を理解しているかどうかということが問題だと思います。大きな企業や国にとっては,相関係数0.1(つまり1%の予測力)の問題が何か改善されれば,大きな利益となる可能性があります。

そしてここでも,関連は小さくてもその関連は安定しているのか,頑健なのかがポイントになります。「繰り返し観察されるのか」という問題です。

ビッグ・ファイブ・パーソナリティの再現性

というわけで,ビッグ・ファイブ・パーソナリティと外部の変数との関連の再現性を検討した研究があります。この論文(How Replicable Are Links Between Personality Traits and Consequential Life Outcomes? The Life Outcomes of Personality Replication Project)です。

この研究では,LOOPR(The Life Outcomes Of Personality Replication Project)というプロジェクトを報告するものです。78種類の日常場面での結果とビッグ・ファイブ・パーソナリティとの関連を再検討すると,どれくらい結果が再現されるのかを検討したというプロジェクトです。

どんな行動?

ここから先は

1,083字

【最初の月は無料です】心理学を中心とする有料noteを全て読むことができます。過去の有料記事も順次読めるようにしていく予定です。

日々是好日・心理学ノート

¥450 / 月 初月無料

【最初の月は無料です】毎日更新予定の有料記事を全て読むことができます。このマガジン購入者を対象に順次,過去の有料記事を読むことができるよう…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?