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知ったかぶりの反対方向を測定する

次のそれぞれの文章にどれくらい当てはまるかを,答えてみてください。全く当てはまらないときは「1点」,どちらでもないときは「4点」,とてみよく当てはまるときは「7点」です。それぞれの文章について,1点から7点で得点をつけてください。

(A)
1. 自分と意見が違う人に注意を向けるのは時間の無駄だと思う(*)
2. 自分より詳しく知っている人から学ぶのは恥ずかしいことではない
3. 自分よりも地位の低い人から学んでも気にならない
4. 自分と意見が大きく違う人がいたら,その人のことを無視する(*)

(B)
5. 人より頭がいいことは,自分にとっては重要ではない
6. 誰も理解していないようなアイデアを説明するところを他の人に見せたい(*)
7. 他の人よりも多くのことを知るのは喜びだ(*)
8. 自分が非常に知的な人間だということを知ってもらいたい(*)

(C)
9. 知識の間違いを指摘されるといらっとする(*)
10. 間違えたときに訂正されるのはありがたいことだ
11. 自分の間違いを誰かに訂正されるのは恥ずかしいことではない
12. 自分よりも多くのことを知っている人がいると,悔しくて恥ずかしい(*)

(D)
13. 違う文化のことを考えるのは楽しい
14. 自分とは違う意見の本を読むのは苦痛ではない
15. 自分が理解していないことを議論するのはつまらない(*)
16. 意見が違うというのは,戦争のようなものだ(*)

16の文章があります。記号(*)がついた項目については,得点を逆に(1点なら7点,2点なら6点,3点は5点,7点なら1点です)つけてください。

また,(A)(B)(C)(D)それぞれについて,合計得点を計算してみるとよいと思います。(A)から(D)のうち,どこの得点が高かったでしょうか。

知的謙虚さ

この文章で測定されているのは,知的謙虚さ(intellectual humility)という傾向です。知的謙虚さの定義はいくつかのものがあるようなのですが,たとえば不適切な認識論的な態度をとるのではなく,より適切な認識論的な態度をとることとされます。自分と同じくらいものごとに詳しい人がいて,自分の意見とは反対の意見をもっているとき,判断を保留したり自分の意見をとにかく変えるということよりも,まず自分の意見が正しいという考えを捨てて謙虚に学ぼうとする姿勢を示すことが,知的謙虚さだということのようです。

また,自分の個人的な信念には誤りがあるかもしれないと認識して,そこには根拠の不十分さや自分自身の限界に注意を向けることを伴うという,知的謙虚さの定義もあるようです。

いずれにしても,自分が知っていることについてどのように捉えるか,その姿勢が謙虚で反対の情報からも学んでいこうとする態度が,知的謙虚さというもののようです。

知的謙虚さを測定する

というわけで,最初の測定項目です。

最初に示した測定項目は,この論文に載っている質問項目をおおよその感覚で日本語に訳したものです。完全な翻訳ではありませんので,ご注意ください。また,項目数も違っています。4項目ずつにしてありますが,本物はもっと項目数が多いですので,その点もご了承ください。

こちらの論文です(Development and validation of a multi-dimensional measure of intellectual humility)。

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