見出し画像

新しさとフレッシュ感

小説家の石田衣良さんと、何度かお話させていただいたことがあります。
いろいろ創作についての質問をさせていただいたのですが、自分的に一番ほっとしたというか、納得したアドバイスを得られた話を書いておこうと思います。

「大まかなプロットを立ててみるのですが、どこかで見たような気もするし、目新しさは感じない。二番煎じになってしまいそうで怖くて、結局振り出しに戻ることをくり返しています」
という話をすると、石田さんは、
「新しい物語を書くことと、フレッシュな物語を書くことは別物です。もうこの世に、あらゆる物語のパターンは出尽くしていると言ってもいいかもしれない。大事なのは、まったく新しいものを書くことよりも、いかに自分らしい手法で展開させ、面白いものを書くか、です」
ハッとさせられました。
今までにない全く新しい構造の物語を作ることにばかリこだわるのではなく、たとえ王道だと言われるものであっても、自分独自の手法で面白くしていけばいいのだと。もちろん、そこが難しいところであるのは充分わかっていますが、勇気というか、活力を貰った気がしました。

もう一つ、印象的だったやり取りを置いて行きます。

私「ミステリーなどで専門的な話を織り込みたいと思うのですが、自分に知識がないので、半ばあきらめています」
石田さん「知識はいりませんよ」
私「え」
石田さん「知識なんか、いりません」(と、にっこり)
私「あ」

その後、もっと深く訊けばよかったのですが、訊けず。
たぶん、知りたいことはその都度調べればいいだけだとおっしゃったのでしょうね。
それでも、「知識はいらない」の強い言葉に、なんだかとてもホッとしたのを覚えています。