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こどものリハビリを仕事にしている私のジレンマ

理学療法士として仕事を始めて17年。
私は来年、40歳になる。
この業界では、もはや中堅でもない。
でも、このままでいいのか、時々もやもやする。
その気持ちを、書くことで整理してみよう。
私の進むべき道を、真剣に考えてみようと思う。

私が理学療法士になったのは、特別な理由があるわけじゃなかった。
なんとなく、人のためになる医療職になりたかった。
病気やケガをした人の社会復帰のお手伝いができる仕事なんて、
やりがいがあって素敵じゃないか、高校生の私はそう信じて疑わなかった。

でも、それは大学の時のある出会いで一変した。

たまたま、バイトを探していて、障害のある方の介護のバイトを見つけた。
勉強にもなるし、ちょうどいいと思って始めた。
その方は、身体障害が重度で、24時間介護を必要としている30代の女性。
知的障害はなく、というかとても頭のよい方で、
自分でヘルパーさんやバイトのシフトを管理して、介護者をつけながら
1人暮らしをする、いわゆる「自立生活」をしていた。
「自立生活」とは、自分の身の回りのことを自分でやるという意味の自立ではなく、自分の生活を自分で決める、何を食べたいのか、どこへ行きたいのか、ということを自分で決めて生活するということ。
そんな彼女はとてもかっこいい人だった。

ある日。
その方の別の介護者さんから何気なく言われた一言が私の将来を変えた。
「リハビリって、自立生活の考えを否定してるよね」

え??
私はショックだった。
リハビリを悪とする考え方がこの世にあったなんて。

たしかに、理学療法は身体機能の改善を目指す。
たしかに、目の前の方はそれを目指してなくても、とても自分らしい生き方を楽しんでいる。

私は混乱した。

思わず、ご本人に聞いてみた。
「リハビリって、自立生活を否定していますか?」

彼女は、とても優しく、とても正直に話してくれた。
「小さなころから、色んな訓練に通ったよ。でも、嫌だった。
親が一生懸命なのはわかったけど、このままの、障害のある私を愛してくれていないんだって感じたから。でもね、そういう子どもの気持ちをわかってくれるリハビリの先生になればいいんじゃないかな」

私は小児の理学療法士になろうと決めた。
ほんとうに、その子の生活に必要とされるリハビリを提供できる理学療法士になろうと決めた。

その出来事から約20年がたった。

あのころの気持ちは変わってない。
でも、全然実現できてない。

現実は、
少しでも身体がよくなってほしいという親御さんの気持ちを無視することはできなかった。
それも愛だった。

親御さんには必要とされていると感じる。
でも子ども本人には?
大人になった子どもたちをみていても、
自分が提供していた理学療法が、
その子の生活に、人生に必要なものだったと、自信を持って言えない。
その親子の大事な時間をたくさん共有したのにも関わらず。

業界全体もエビデンスエビデンスと言われ、
学会ではそんなことが子どもの生活の何に役立つの?と感じる発表ばかり。
それ自体は必要なことだと思うけど、私の目指すところじゃない。

あの言葉を全面的に違うよ、と言うことがまだできない。

私は20年もなにやってるんだろう。

でも、色んな出会いの中で、よかったなと思えることもあった。
それをもう一回、紐解きながら、
進むべき道を探してみようと思う。





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