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今と未来、どっちが大事?

私は就学前の重症心身障害児に関わる仕事をしている。
学校へ行くまでという、期限付き。
長くて3、4年、短ければ1年。
今年ももうすぐ、年長さんを見送る時期だ。

今回は、医療的ケアのある子の話。

医療的ケアとは、「日常生活に必要とされる医療的な生活援助行為」とされている。通常は医師や看護師などの医療者にしか許されない行為である医療行為のうち、在宅で暮らすために必要な痰の吸引や経管栄養の注入などを医師の指導のもと家族が行っているものを医療的ケアという。

程度の差はあるが、医療的ケアのある子どもを家で育てるというのは、家族にとって大変なことだ。24時間命と向き合うことが必要な子どももいる。それだけでも十分大変なのだが、その子が保育園や幼稚園に通いたいと思っても、看護師がいなければ通うことはできないという壁もある。(たとえ園に看護師がいても、その子専属の看護師であるわけではないので難しいことが多い)どうするかといえば、お母さんが付き添うか、看護師配置のある児童発達支援事業所に通うか、家にいるか。

私が働く児童発達支援事業所は、重症心身障害児を対象としているので看護師がいる。しかも複数。重症心身障害児で医療的ケアのある子が通うと想定されている場所だ。(重症心身障害でない医療的ケアのある子が通う場所がなく、それは大きな問題であるのだが、その話題はまたいつか)

それならいいじゃないか、と思うかもしれないが、私がいつも悩むのは、「今」と「未来」のこと。
そう、通えるのは学校に入るまでの年齢。
学校に入ると、また医療的ケア問題が復活する。
特別支援学校であっても保護者の付き添いを求められる場合があるのだ。(地域差はあるし、昔は絶対付き添いだったのが時々になったりしてるし、ケアの種類によってはほとんど付き添わなくてもいいこともあるけれど)

子どもが生まれてからずっと、医療的ケアに追われて身も心もへとへとになってしまったお母さん。
なんで泣いているのか、なんで熱を出すのか、なんで吐くのか、わからないことだらけで、すやすやと眠っていてくれるならその方が安心するくらい不安な毎日。
そんな親子が家庭以外にも安心できる場所になってほしい。子どもが子どもらしく楽しく過ごせる場所になってほしい。大変なお母さんに少しでも休んでほしい。今という時は今しかないから。

そう願って、できることは何でもやってしまうと、学校に入ったときに、また大変な思いをすることになる。そして、その時にはそばにいて助けてあげられることがあまりない。

「楽を覚えさせたから」そんな風に言う人もいる。

「今」を乗り越えなければ、「未来」は来ない。
でも、苦労する未来が見えているのに「今」だけよければいいはずない。
でも、「未来」を考えられないほど余裕のない人もいる。

社会が変われば。
それはその通りだし、そうなってほしいし、そのために訴えていかなければならないけれど、でも、目の前にいる親子に対して何ができるのか、を考えないといけない。

「今」も「未来」もどっちも大事だから。
「今」を支援しつつ「未来」への準備もする。そんな理想に向かって今日できることをやろう。


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