見出し画像

一級建築士製図試験の勝算

割引あり

はじめに

先日、「2024年一級建築士学科試験合格者数予想、製図受験有資格者数について」という記事を書く中で「学科に合格した人は最終的にどの程度製図に合格しているのだろうか」と思い数字を調べました。
直近の製図合格率は33%、総合合格率は10%なので非常に難しい試験という印象はありますが実際には学科合格者の70%以上が最終的に一級建築士になっています。カド落後に再度チャレンジする方もいることから諦めて試験から撤退する人はそこまで多くないのではないか、と思います。
本記事はこういった内容をまとめたものになります。

そもそもの、学科の難易度の目安

学科試験の難易度については「学科試験について」という記事に簡単にまとめていますがその記事とは違う角度で難易度の目安について考えてみたいと思います。
例年、学科試験の合格率は15%〜20%程度ですがこれは偏差値に換算するとだいたい60くらいになります(上位15%の目安が偏差値60)。偏差値60といえば大学受験では難関大学合格に必要な偏差値のためかなりの難しさを感じるかもしれませんが偏差値とは母集団に置ける立ち位置を表す数字です。そのため大学受験に置ける60とは意味合いが異なります。感覚的に最も母集団レベルが近いのが高校受験だと思います。これは客観的な説明が出来る訳ではないのですが自分自身の高校受験とその偏差値、大学受験とその偏差値、及び学科試験受験時の学習時間とその点数からおおよそ外れていないと思っています。
学科の合格に必要な学習時間は「学科試験について」にも書いた通り700時間程度ですが、これは通っていた高校の入学偏差値が60くらいの人にちょうど当てはまるように思います。つまりより高い偏差値の高校に行っていたならば(机上の勉強が得意であったならば)それより少ない学習時間での学科合格も可能であるように思います。一方、逆の場合は700時間以上の勉強が必要になる方の方が多いでしょう。これは単に地頭の良し悪しというわけではなく、純粋に「勉強慣れ」しているかどうかという問題だと感じています。
ともあれ、「学科試験について」にも書いた通り学科合格には「努力が必要」ではあるものの「出来ない難しさ」はありません。講師の立場からすると建築士としての知識というよりは、製図試験の「学習」に対する耐性の有る無しが見られているとも感じられます。

こうした学科試験に「合格しさえ」すれば70%〜80%の人は一級建築士になることが出来る、と考えると受け取り方は人それぞれでしょうが国家資格の割にハードルは高くない=勝算は高い、ように感じます。

製図の難易度

製図試験の難しいところは学科試験というフィルターを潜り抜けてきた、「努力ができる人」と「元々の地頭が良い人」しかいない中での競争であることです。
そして学科試験とは違い「明確な答え」がないため合否が「運」にも左右されることがあるということです。これによって地頭が良くて努力もできる人が不合格になることもあり得ます。
製図試験のみの合格率は近年35%を切っており、この数字が30%となっても大きな驚きではない水準に下がってきています。これは3人中2人以上が不合格になるという厳しさですが、最初に触れた通り「最終的には」4人中3人程度は合格しています。これは単年で見ると非常に難しいが複数年で考えると難しくはないといえます。ここで重要なことが「複数年で考えると」というところで、つまり「努力し続ける忍耐力があるか、あるいはその覚悟があるか」を問われている、ということになると思います。

最終合格率

ここで4人中3人程度は合格している、という実際の数字を見たいと思います。

学科合格者の最終合格率

データは製図が3回受験可能になったH21年の新試験導入以降のものです。
カド落数の詳細な算出については「2024年一級建築士学科試験合格者数予想、製図受験有資格者数について」に書いた通りです。
「カド落=学科合格したものの製図に合格出来なかった」なので「カド落以外は製図に合格している」ことになります。このことから「1ー2年後のカド落数/学科合格者数=最終的に合格した割合」になります(例:H21:1ー1761/8323=0.788)。
赤文字のカド落数は「2024年一級建築士学科試験合格者数予想、製図受験有資格者数について」で推察した数字、また赤文字の最終合格率はその推察した数字を用いた割合であることを示しています。

新試験以降、この割合は例外を除いて8割近い数字で推移しており4人中3人以上は合格していることを示しています。
例外となっているH29:71.8% についてですが、カド落までいった方はH29、H30、R1の製図試験を受けています。この3年はH29:敷地図がエスキス用紙に記載、H30:課題文がA2に拡大、R1:法令遵守化と学科合格者多数のための難度化、という近年の大きなサプライズが集中した3年であって対応が難しかったこと、またR1年製図試験が「2024年一級建築士学科試験合格者数予想、製図受験有資格者数について」に書いた通り翌年以降に向けた環境整備の意味合いもあってカド番合格率が急落したこと、それらの影響で大きく数字が落ちているのではないかと思われます。
次に例外となっているR1:64.4%ですが、これは「2024年一級建築士学科試験合格者数予想、製図受験有資格者数について」で考察したR1年学科合格者の属性に寄るところが大きいと思われます。

今後の最終合格率推移予測

R4のカド落数:1216人は「2024年一級建築士学科試験合格者数予想、製図受験有資格者数について」において推測した数字ですが、R2からは学科合格者の製図保留が可能になったため、R2の学科合格者からのカド落者は1216人で全てではありません。1回保留者のカド落者はR5のカド落数に含まれますし、2回保留者でカド落になる方はR6のカド落数に含まれることになります。
ここ数年合格率が厳しくなっている中、最終合格率にも変化があるのかは興味深いところですがR2からはR1以前のように最終合格率を算出することが出来なくなってしまいました。

ただ、これを推測することは可能です。

※以下、R2の学科合格者の最終的なカド落数、およびそこから得られる最終合格率の予測をしています。
※有料部分となりますが興味がある方はXで該当ポストをリポストして頂くことで全て無料でお読みいただけます。よろしくお願いします。

ここから先は

1,016字 / 2画像

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?