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全日本自転車競技選手権MM30~39 4位

6/25に表記のレースに出場。このレースのエリートクラスは年1回の日本チャンピオンを決める非常に重要なレース。一方でマスターズクラスを設けて年代別でも日本チャンピオンを競うのが私が出場したカテゴリーである。場所は静岡県修善寺のサイクルスポーツセンターで1周8km×7周=56km 獲得標高1650m程度のコースでアップダウンしかないサバイバルコースである。

レースリポに@yuki_asato様の写真を活用させて頂きました。ありがとうございます。

ハリネズミのようなコースをマスターズは時計回りに7周。エリートは20周する超過酷レイアウト

レースに向けた準備

6月は富士ヒル→ニセコクラシック→そして今回の全日本と連戦となった。よって全日本だけに焦点を当てた練習はできず、前2つのレースで体力とレース感を磨いて今回迎えるという感じである。

コースのポイント

この修善寺特有要素はあまり取り組めていなかった。前述の通り「アップダウンしかない=激しいインターバル繰り返し」を意味する。強度が上がりやすい場所は主に3ヶ所。
①秀峰亭からの坂2:00~2:30
②①を下り切った登り返し1:00~1:30
③3km看板を越えて2号橋からの坂3:00
秀峰亭からの登りは終盤勾配が10%以上のため非常に負荷が高い。一方2号橋からの登りは比較的緩斜面で後半にやや平坦もある。富士ヒルやニセコよりも短時間高負荷&反復数が圧倒的に多いため、直前の平日に付け焼き刃のインターバルトレーニングを実施。少しは役立つことを願った。

コーナリング

このコースは下りコーナリングもポイント。試走時に危険と思ったのは下記。
・秀峰亭前のオメガ型コーナー
・5km地点のS字下りコーナー
・2号橋前のS字下りコーナー
自分が知るコーナリングの仕方を頭の中で復習して細心の注意を払う。

展開の予測

自分が考える予想展開は可能性順に以下の通り
・アタックで徐々に削られ小集団スプリント
・クライマー系の逃げ切り
・ルーラー系の抜け出しで後続を離して逃げ切り
猛者が集まるレースだけに一芸秀でた選手に攻撃受けると現実的に耐えられないと自覚している。一方毎登りで全開アタックがあるわけではないので遅れても絶対復帰すると強く信じて粘る。
とにかくサバイバルに走る。緩くなるようであれば自分で負荷を上げてもいい。もし最後まで残った場合、2号橋からの登りは下から掛ける。足を貯めた後のゴールスプリントは勝機が低い。

機材について

フレーム:Emonda slr
ホイール:Aeolus RSL37
タイヤ:AGILEST light 28C (Fr/Rr:5.5/5.7bar)
チューブ:Vittoria latex
コンポ:R9270
ギア:Fr52-36 Rr11-30
サドル:S~WORKS power
ハンドル:Aeolus RSL
パワーメーター:assioma duo
今回は登りが多いため、ホイールはリムハイトは37mmとタイヤは軽いAGILEST lightを選択。コーナーに安定感を感じたので28Cで重量は約185g
トータル重量はサイコン&ボトル抜きで6.9kg

補給について
レース時間は2hかからないため、入念なカーボローディングはなし。前日に糖質多めの食事を心掛けた。補給食はお守り代わりにMag-onジェル2本。ドリンクは750ml×2で各々CCDとアクエリアスにMag-on顆粒を入れた。

レース

スタート

レースは8時スタートなので朝食は5時頃に済ます。6時半前には会場着しホームストレート手前の坂でアップ。恐らくドッカンスタートになると予想して負荷も掛けておいた。

8時に30代+40代で80名ほどの中、前から2列目左からスタート。最初のバンク気味の右コーナーは左が広いので距離は出るが曲がりやすい。集団真ん中の少し前くらいで秀峰亭登りに入る。そして負荷が高い。「やはりか」いきなりサバイバルな展開になった。どの登りも負荷が高く、1周目完了時には半分程度まで減ったと思う。

2周目

相変わらず負荷が高く乳酸が溜まる感じ。しばらく根比べだと思った。2号橋の登りでペースが少し落ち着いたと思う。確かその隙に2~3人飛び出した。ゼッケン300番台で同カテゴリー。集団が落ち着こうとしていたので前へ出る。このコースは逃げ切られやすいし、一度落ち着いて脚貯められた後、特定箇所でそこが得意な選手に踏まれたら厳しい。その回避のために終始負荷高めで走りアタックの効力を弱めたいと思っていた。つまりサバイバル歓迎である。
自分がスルッと前出て集団と少し間が出来る。これが呼び水で集団ペースが上がるのを待つと見事に来た、してやったり。

集団のラインを外している。地味に脚に来るのでもっと脚節約できる位置に居るべき

3~4周目

あまり覚えていないが、決してゆるい展開ではなかった。秀峰亭の登りは毎回負荷上がり徐々に人数が削られる。この付近でゼッケン308と330が先行していたと思う。2人とも強い。後に優勝する選手とニセコクラシックで入賞した選手。15秒ほど先行されたまま5周目に突入。

ただ着いていくだけよりも少しでも自ら動いて意義あるレースにしたかった

5周目

ホームストレート後の登りコーナーで一気にペースアップ。恐らく中川選手だと思った。必死に追いギリギリで着く。秀峰亭の登りでもペースが上がり先頭と若干ギャップを作ってしまったが、下ってからの登り返しで必死に復帰。

6周目

やはり秀峰亭の登りでガツンとペースが上がる。

また千切れかける。

登り返しで必死に復帰。

2号橋の下りS字でギャップを作ってしまう。下りコーナーは苦手だ。
どうしても前と間が空く。コーナーリングスピードの入りが少し遅いためだ。なので復帰で脚を使う。この頃には逃げは吸収していたと思う。

最終ラップ

既に先頭集団は10名ほどで有名どころしかいない。その中に混ざっている。もし観客が知っているor知らないで順番に指差しした場合、

「知ってる、知ってる、知ってる、…誰コイツ?」

十中八九ではなく十中十でなるだろう。

そんな状況下で最後の秀峰亭の登りへ。問答無用でペースが上がる。

粘りに粘って

千切れそう、でも振り絞る。ここで終わるわけにはいかない。





だが千切れた。


でもまだ終わりではない。前を追う。



下りに入るが前は見えない。


登り返しでやっと前が見える。十分過ぎるほどギャップがある。

普通ならば絶望するだろうが、なぜかそう思わなかった。踏む。

ひたすら回す。

5,6周目では2度千切れ掛け、その度に必死に復帰した。

まるでゾンビ。
復帰直後、前の選手から二度見された。「えっ!?お前戻ってきたの!?」目でそう言われたように感じた。

「えぇ、そうです。」

心でそう思った。


でも今回の登りはギャップが大きい。


クラクションが鳴る。
審判カーが前へ出る。MAVICカーも入ってくる。


普通なら、この時落胆して踏み止める。


ツールドおきなわ2018 210kmで同じ光景に遭遇した。その時は180km付近、慶佐次越えた位だった。踏み止めて先頭から脱落した。
とても後悔した。
だから絶対に踏み止めない。先頭が平坦に入ると速度差でギャップは更に広がる。

追う。

本当に尽きるまで踏んでダメならしょうがない。でもまだその時ではない。

近づいて来た。車の隣に並んだ時、初めて復帰して来たことを認知された。左手を横に出して、避けてくれとジェスチャーを送る。審判カーは予想外であろう。脱落したと思って、前へ入り込んで行ったのだから。

車の前へ出る。既に2号橋前のS字コーナーに入っているのでまたギャップは広がる。50mはあるか。

2号橋を越えて登りに入る。前とは30mない。

ジワジワ差が縮まり



戻ってきた。



万一、最後まで先頭に残ったならば…が現実になった。しかし当初の作戦、登り始めから掛けるは無茶である。わずかに牽制して脚貯めた集団に対し、全力で追ってきた自分が引き離せるなんて現実的ではない。
集団を見回すとゼッケン308がいない。これは行ってしまったのか。状況が分からない。
そんな中揺さぶりが掛かりながら登り終えて、下り入る。
下るとあとはゴールに向けて登り、スプリントになる。ロードレースのゴールスプリントは片手で数えられるほどしか経験ない。だが覚悟を決めた。

残り300m看板越えたら最大警戒。

と思った矢先、多分300mよりもっと手前だったと思う、腰を上げて踏み出した。予想が甘かった。遅れをとり、慌てて踏み出す。

ギャップが広がる。

やらかした。

掛け出しが遅れた構図

もう踏み込むのみ。最後まで出し切ろう。

高岡選手が手を上げたのが見える。

@JCF_event Twitterより引用

その3秒ほど遅れてゴールラインを越えた。


スタッフが近付いて来てゼッケン確認される。
そして告げられた。


「はい、着外。」


30代の4位だった。


振り返り

先週のブログで最後まで先頭集団で戦いたいと書いたが、今回それを実現できた。その中できっと見える景色も違うだろうとも書いた。
以下の事を感じた。
・先頭集団というレースの主人公とも言える場所にいる高揚感
・勝てる可能性を終始持ち続けるワクワク、緊張感
そのような場所に入れたからこそ、一度千切れても絶対に諦めないという気持ちも非常に強かった。もちろん今回のレースに限った話ではあるが、もっと色々なレースでの先頭集団を味わいたくなった。

今回のレース結果4位に対して思うこと、非常に上位だがこの順位がとにかく悔しくて堪らない。非常に欲深い事ではあるがポディウムに上がりたかった。

この結果に終わった原因を考察する。
・高負荷のPWRが足りない
このコースは登りで1分以下のアタックがかかる。ゆえにL6域のPWRが重要である。レース後半は特に遅れを取ることが多くなった。
今回のパワー分布を下に載せる。非常に独特な分布であり、L6が如何に大事だったかよく分かる。この無酸素域の多さでレース全体のPWRがNP5.1W/kgに達した。


・下りコーナリングの入り方
これも遅れをとる要因になった。コーナーに入ってしまうとスピードの上げ下げはほとんどできないため入口で大方のスピードは決まる。それは安全マージンとトレードオフのため安全側へ振りすぎると遅れをとる。安全面としては決して悪いことではないが、安全に曲がれると判断する閾値をもう少し上げてもいい。そのためにはコーナリングのスキル向上と経験を積むことが必要だろう。今回のレースでもいい経験を積んだと思っている。

・力の抜きどころが的確であったか
今回のコースでは下りでは休む事ができ、常時全開走行ではない。緩急の"緩"で体力温存できたのか、反省点も多い。肩に力が入っていたり、ライン&位置取りで温存できる場所がもっとあったと思う。もしアタック地点でPWRが足りないと冷静に判断できたならば坂の下で前で入り、徐々に下がって頂上で集団後方クリアもできたはず。ガーミンのスタミナデータを確認すると下記の状態であった。1hで使い果たし、残りの40分は普段得られない何かからエネルギーを得ていたようだ。(それが先頭に残っている高揚感から与えられたのか…?)結構信頼していた指標なので驚きであった。

・スプリント
誰が300mより手前では掛け始めないと言っただろうか。勝手な思い込みも甚だしい。相手の動きをよく見て反応すべきである。そしていざ踏み始めてもスカスカである。踏み込むたびに上体が負けて浮き上がっていたが、それではペダルに力が入るはずがない。踏み込んだ力に上体が負けないようにしっかり体を押さえ込むべきだと思った。スプリントの知識は非常に乏しいのでもっと勉強しようと思う。

今回のレースは何度も書くが「非常に悔しいレース」だった。でも後悔はほとんどない。持っていた力を遺憾無く発揮して、そして負けた。
こういう機会を経験した結果、また先頭で競う素晴らしい経験を味わいたいと思うので、そういうチャンスが来た際に逃す事ないように準備したい。

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