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あなたが始めるんだ。さあ、二人の親密性というグラウンドに足を踏み入れよう。

「妻が婚外恋愛を許可して欲しいと言うんです」

「もう触れられたくないと言うんです」

「会話をする気にもなれないと言うんです」

そんな男性たちの話をいくつも聞いた。

彼らに共通していることは、妻が抱く夫への恨みがとてつもなく激しく、その恨みに圧倒され、受け止めることができないこと。

それは時速186kmで飛んでくる大リーグ投手のボールのよう。一瞬でボールはミットに収まり、何が起こったか理解できるまま、ただバットを握り茫然とすることしかできない。

何度も飛来する豪速球が二人の精神と肉体の親密性を消滅させ、セックスレス、不倫、コミュニケーションの欠落といった絶望の嵐に襲われる。

男性の反応は2パターンに分かれることが多い。

一つは、妻の反応に反発し、責め立てるパターン。

もう一つは、戸惑いながらも妻の恨みを紐解こうとするパターン。

後者の方が夫婦関係を改善しやすいが、それは妻の恨みを受け止められた場合に限る。

なぜ、妻の恨みを受け止めることが重要なのか?

その必要性について書こうと思う。

気がつくことから始まる。

妻が「おはよう」や「おやすみ」といった日常の挨拶をしてくれない。家に帰ると部屋に閉じこもり、顔を合わせてくれない。知り合いと浮気をした。

妻を問いただすと、雨上がりのグラウンドのようにドロドロになった不満が飛び出してくる。

子どもが産まれたばかりで大変だった頃、育児をまったく手伝ってくれなかったこと、自分と子供たちがインフルエンザに罹り苦しんでいた際に看病してくれなかったこと、こちらの言葉をさえぎり話を聞いてくれなかったこと。

これらの言葉を聞いて、あなたはどう思うだろうか?

気の利かない自分を素直に反省するだろうか?

おそらく、そうならないはずだ。あなたにも言い分があるはず。

子どもが生まれた当時、収入も貯金もなく、家族を養うため一生懸命働かないといけなかったんだ。長時間働き、成果を出さないと評価されないんだ。

君と子どもたちがインフルエンザになった時、確かに君は電話してきた。だけど、切羽詰まった様子は見せなかったじゃないか。「できれば早く帰ってきて欲しい。無理ならいいんだけど」と君は言った。

そんなに追い込まれていたなら、すぐに助けて欲しいとはっきり言うべきじゃないのか?思っていることはきちんと言葉にしないと相手に伝わらないだろ?

話を聞いてくれなかったと君は言うが、仕事から疲れて帰ってきて何の脈絡もないとっ散らかった話を聞くのは辛いんだ。アドバイスを言っても君は聞く耳を持たないし、だいたい、君だって俺の話をいつも聞いてくれないじゃないか。

こんなことが、コミュニケーションの欠落や、部屋に閉じこもることや、不倫の言い訳になるのか?

おかしいだろ!?

と、あなたは思うだろう。

だが、その感情を妻にぶつけられず、ただ頭を抱えて悩む込むしかない。

確かに一理あると思う。

夫婦の問題はどちらか片方だけに罪があるわけではなく、二人の関係性そのものに原因があるのだから、どちらかだけが反省すればいいわけではないはずだ。

それに相手から不満をぶつけられても、こちらにも不満はあるわけで、そう簡単に相手に頭を下げることもできないだろう。

だが、もしあなたが、妻の感情に反応し激しい怒りの螺旋階段を登っていることに気がつけば、関係修復は一気に楽になるはずだ。

泥だらけのグラウンドに足を踏み入れる。

この記事に書いたように、妻の恨みの発生原因には次のようなものがある。

まとめると、妻の恨みという時限爆弾は、無意識に生まれ、非主張的自己表現によって成長し、産後クライシスなどのトラウマによるPTSDによって決定的なものになるということです。

出産直後は夫が多少自分勝手でも、妻には(時間が経てばこの人も変わるのでは?)という淡い期待があるのですぐには恨まれないが、子供の成長にしたがって「変わらない夫」へのモヤモヤはイライラへと変わっていく。

しかし、夫に直接不満を伝えるのが怖くてできない非主張的自己表現や、逆に怒りの感情で攻撃してしまう攻撃的自己表現のトラップにハマることで、夫の心に届く主張をすることができないまま時が流れる。

夫が「言ってくれればいいのに」や「そんなに責めなくても」と思っている間に、夫婦を引き裂く出来事の発生により妻はPTSDレベルのトラウマを負い、恨みを決定的なものへと進化させる。

そして、女性自身はこういった変化に気づくことなく、ただ単純に「夫を嫌い」になっていく。

彼女たちは気がついていないが、「夫を恨み続けること」は自己肯定感を保つための燃料であり、生きるために欠かせない感情なのだ。

夫を恨むことで、自分のすべての行動を正当化しているのだ。

夫が悪いから挨拶をしない。夫が悪いから夫の洗濯物だけ洗わない。夫が悪いから別居する。夫が悪いから子供に夫の悪口を言う。夫が悪いから不倫する。

フェアじゃないと思うだろうか?そんなの俺の責任じゃないと?

ぼくもフェアな話ではないと思う。妻の非主張的自己表現や攻撃的自己表現は妻の気質の話でもある。

だけど、このままでいいのだろうか?

妻が本当の原因もわからず、ただあなたへの嫌悪を膨らまし続ける日々を、あなたは生きたいのだろうか?

妻から愛されることのない世界から抜け出したいのではないだろうか?

お互いに愛し愛されている実感を感じたいのではないだろうか?

もし、あなたがそう思うなら、「あなた」から始めるしかない。

あなたの妻は、あなたを恨む理由を自分でもわかっていない。飛んでくるボールを見ずにバットを降り続けている。もしくは、ファールが続いているのにボールの芯を捉えていないことに気がついていないようなものだ。

整備されていないドロドロのグラウンドで、あなたたちは乱闘試合をしている。まずは何をすべきか?自分たちが立っているグラウンドから水気をはき、綺麗にならす必要があるはずだ。

「妻がやらないのになぜ俺だけがやるんだ?」と、あなたは思うかもしれない。

俺だけのせいじゃない。こんな広いグラウンド、たった一人で整備できるわけがない。

だが、夫への嫌悪感がなぜ生まれるのかを知ったあなたならできるはずだ。あなたが最初にトンボを手に取り、ぬかるんだグラウンドにその刃をあてるんだ。

泥だらけの地面に足を埋めらせ、少しづつならしていくその行為が、妻からあなたへの信頼を時間をかけて蘇らせていく。

あなたが妻のケアに集中することで、少しづつあなたは「お前のためにやっているのに」「なんで俺ばかりが損をするんだ」といった感情から解放されていくだろう。

誰かに対する思いやり(compassion)の行為はオキシトシンを分泌させ、その人に対して愛着を感じやすくなるからだ。

コンパッション・フォーカスト・セラピーの生みの親であり英国認知行動療法協会元会長でもあるダービー大学教授ポール・ギルバートは、それを「脅威システムからスージングシステムへの移行」と呼ぶ。

あなたが承認欲求から解放された時、妻もまたトンボを取り、くるぶしまで浸かる泥の中に足を踏み入れてくれるだろう。

二人で手を取り地面をならし終えることができれば、今度は対戦相手ではなく、同じチームメンバーとして試合に出られるはずだ。人生という試合を仲間として戦えるはずだ。

温かなコミュニケーションの欠落、セックスレス、不倫。それらは夫に裏切られた絶望感と素直な感情を表現できない親密性の欠如から生まれる。

妻の恨みの源泉に触れることは、激しい痛みを伴い、勇気を必要とする行為だが、それができれば、受け止める準備ができるはずだ。

荒れ果てたグラウンドという二人の心を、愛着溢れる親密性へと変えていく。

あなたが、そのグラウンドに最初に足を踏み入れるんだ。

愛されない絶望感を胸に歩き続けることは辛い。だけど、誰かが始めないといけない。

二人の親密性構築の可能性があることを知ったあなたならできるはずだ。

怖いだろうが大丈夫。多くの男性がこのイバラの道を歩んでいる。ぼくもそうだった。

次第に芽生えるオキシトシンを微かに感じ、時間をかけて愛着の道を進む中で、いつか棘だらけのイバラは二人を取り囲む美しいバラの花々と変わることだろう。

あなたがその一歩を踏み出すことを、心から祈っている。




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この記事は「男性向け夫婦関係改善本」のための下書きであり、下の目次に沿って記事を書き足していき、最後に一冊の本にします。

下線がある目次は執筆済み記事へのリンクです。クリックすると記事に飛びます。

本が完成するまで記事を書き続けますので、応援していただけると幸いです。


第一部:なぜ、あなたは妻から嫌われたのか?

◾️第一章:恋から愛への移行不具合

恋のメカニズム
○産後の妻の変化への無理解
産後の妻の変化1:オキシトシン分泌によるガルガル期突入
産後の妻の変化2:肉体と精神がズタボロになる産褥期
産後の妻の変化3:産後女性の性欲減少メカニズム
産後の妻の変化4:圧倒的な社会的孤立
産後の妻の変化5:失われたアインデンティティ
絆を構築する共同体験の欠如

◾️第二章:無から愛の生成不良

○「Who you are? 」ではなく「What you have ?」であなたが選ばれた場合

◾️第三章:夫への恨みの生成過程

○未完に終わった夫婦の発達課題
結婚前に獲得すべきだった「本当の親密さ」とは?
未確立な夫婦のアイデンティティ
親になること、夫婦になること
○非主張的自己表現の呪いから抜け出せない妻
○攻撃的自己表現をやめられない夫たち
○妻の不信感を募らせる、夫の非自己開示
○「夫への恨み」はいかにして生まれるのか?
○なぜ、あなたの妻は「婚外恋愛」を望むのか?

◾️第四章:セックスに関する無理解

○産後にセックスに興味を失う理由
○生理周期に伴う性欲の変化
○性に関する夫婦の話し合いの不在

◾️第五章:現状把握と事態の受け入れ

○妻の恨みの根幹を知る(←今ここ)
○思い込みにとらわれず質問を恐れない
○客観的に自分たちを見つめる

◾️第六章:妻から嫌われる3つのパターン

○家庭より仕事を優先してきた
○家族の幸せより自己実現を優先させてきた
○妻への思いやりより自己の欲望を優先させてきた

第二部:では、どうするか?

◾️第一章:皿洗いをする前にやるべきこと

○夫婦の絆の土台となる”親密性”
○「受け止めてもらえる」安心感を妻に与える
○柔らかな感情の掘り起こし

◾️第ニ章:愛着の形成が二人の絆を作る

○柔らかな感情の共有
○相互理解という快感
○夫婦に恋愛は必要ない
○ドーパミンではなく、オキシトシンが愛を作る

◾️第三章:自分も相手も大切にするアサーティブコミュニケーション

→詳細考え中

◾️第四章:セルフコンパッションで関係改善の努力を継続

→詳細考え中

◾️第五章:セックスは愛の最終形態

○セックスは手段、目的は親密性への触れ合い
○性の話し合いを恐れない

第三部:フェニックスマンの特徴

○夫婦関係を改善できる男性の特徴とは?


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