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下北沢本屋B&B『マンゴー通り、ときどきさよなら』刊行記念イベント 金原瑞人×温又柔×くぼたのぞみ 「今の日本で光を放つ、移民文学の魅力」

訳者のくぼたのぞみさんを迎え、温又柔さんと金原瑞人さんが壇上左右に…
超豪華メンバーが揃ったイベント。

こういう時、関東に引っ越してきてラッキーだったとしみじみする。
電車を1回乗り換えるだけでこんな最前線の人の生の話を聞けるなんて。

イベントではサンドラ・シスネロスのエピソードから、文学の中での「国」についてなど。

サンドラの『マンゴー通り・・・』は彼女の日記の延長だと言われ、
それに対して怒っていたという話から「自伝はフィクションになり、
フィクションは自伝になる」という話へ。

日記がなぜか外に向かう文章になり、手紙はその反対で内に向かう文章になる、という話を読んだことをふと思い出す。

人が綴ることにジャンルなんて必要なのだろうか。それによって評価を変えることもナンセンスだ。そんなことから、好きだった宮本輝が好きじゃなくなった件を思い出したり。

さてシスネロス。
彼女は今、コミュニティのために働いているそう(Macondo Foundation)。
コミュニティから出られない、弱い者たちの声を聞く。それは『マンゴー通り…』の女たちを思い出させる。簡単にはあの町から出られない人たちを彼女はいつも救いたいのだ。
その声が、作品としてまた聴けるかもしれない。

トランプ政権発足後、反動でアフリカ系アメリカンの映画や文学作品が売れている、という話に。
そこから「アメリカ文学」とはなにか、と。今や英語圏作家とも言えるほど文学の中で「国」は消えていっているのだと。

しつこいけど、だから宮本輝にわたしは失望した。

移民文学は世界の希望だと思う。
日本の国籍を何世代も持った人間から生まれた日本人が書く文学が日本文学なのではない。
世界はどんどん変わっていっている。
ナイジェリアで生まれアメリカで育つ作家。
インドで生まれ、生まれた地域が占領され、ロンドンとアメリカで育ち、家ではベンガル語で話す作家。
台湾で生まれ東京で育ち日本語で物語をつむぐ作家。
それが新しい世界なんだと思う。
だからいわゆる「移民文学」は強い魅力でわたしを惹きつけるのだ。

くぼたのぞみさんは『翻訳文学は日本語文学』だと言った。
日本語で世界の声が聞けるしあわせを、毎日本屋さんで、図書館で噛みしめる。
ただ、追いつけない…もっとたくさんの本が読める力がほしい。

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