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ビジネスを考える

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2019年3月の記事一覧

人間がロボットに近付くか、ロボットが人間に近付くか?~ロボ同士の会話の本質的な意味とは~

 日経電子版の記事【ロボット同士の会話って難しい? セコマ、北大が実験】は、とても好奇心をそそる内容です。異なるメーカーのロボット同士が自然言語で会話するという情景は、まるで手品を見ているようで、子どもならずとも視線が釘付けになるでしょう。  ところが、異なるメーカーのロボット同士が自然言語で会話するというのは、私達の想像する以上の技術的な困難があるようで、記事では、「あらかじめ入力した筋書きどおりに話すだけ」と種明かしされています。そして、当然の疑問として出てくるのが、ロ

図鑑の力~図鑑vs.ネット検索、その本質的な違いとは~

 日経電子版の記事【「進化する図鑑」人気沸騰】は、改めてネット時代における『書籍』の立ち位置について考えさせてくれます。  そもそも、一般的に、特定の事物について調べたい時、最初に当たるのは総覧的な情報源だと言えます。関係する情報がまとめてあり、全体を見渡せるようになった情報システムの中から、探している情報を見付けだす訳です。そうやって、特定の事物についての概略を知ってから、必要に応じてさらに専門的な情報源に当たる、というステップを踏むことになります。  このような『総覧

実質1株で売買可能な新制度とは~投資を学ぶ環境が整う~

 日経電子版の記事【実質1株で売買可能に 東証、新制度検討】でリポートされている『実質1株で売買可能』という制度は、様々な意味で有意義なものだと思います。  1株から買えるのですから、文字通り最低投資金額が100分の1になり、『資金的』なハードルが著しく低減するのはもとよりですが、それよりも大きな効果は『心理的』なものだと考えられます。  投資をしていて常々感じるのは、『買う』という決断には、『論理的決断』と『心理的決断』の2つの要素があるという事です。論理的にこれは「買

MOTTAINAIがシーズになる~日本の老舗中小企業が底力を発揮~

 日経電子版の記事【創業100年超の中小企業がReスタートアップ】は、スタートアップはその気になればどこでも起こせる、という事を改めて教えてくれているようです。スタートアップというと、新しい、若い、ITに長けている、といったイメージがあるかも知れませんが、中小であっても、老舗であってもスタートアップは起こせる、そのポイントは何なのか、記事から探ってみました。 (1)『MOTTAINAI』をシーズにする まず、記事に紹介されている3企業のイノベーションのアイデアを見て気付くの

終電という心配がなくなる?~自動運転実用化のインパクト~

 日経電子版の記事【MaaSの本命? 自動運転タクシーの衝撃を探る】は、MaaSに関する出色のリポートだと思います。MaaSの実現によって起きてくるであろうことが、広く体系的に語られており、近未来におけるその情景が瞼に浮かんでくるようです。  まず、記事から、その予測の流れを整理してみると―― ▶自動運転タクシーのインパクト予測 24時間どこでも  マイカーよりも  ドア・ツー・ドア  交通弱者の 使える      低い総コスト   の利便性      需要取り込み  

世界初の意味するもの~技術・人間・社会~

 少し前の日経電子版に、人間とテクノロジーの関係を象徴するような記事【米ヴァージン「宇宙旅行」成功、乗客乗せ高度90キロへ】が掲載されました。世界初の民間宇宙旅行は、改めて人間とテクノロジー、そして社会との関係について考えさせてくれます。  世界初の民間人の宇宙旅行は、文字通り『始まりの始まり』です。その意味するものは、非常に大きいと思います。  第1に、民間での宇宙旅行を夢見た人たちがいて、第2に、民間宇宙旅行を事業化しようと考えた人たちがいた。そして、第3に、実際に民間

ロボット、派遣します!?~人材派遣の比率が低下する時代~

 日経電子版の記事【人材各社、AI・ロボも提供 労働力減に備え スタートアップと組む】でリポートされているロボットの派遣ですが、さらに想像をふくらますなら、AI搭載の切れ者アンドロイドが会社にやってくるようで、まるでSF映画の一コマを彷彿とさせるようなシーンです。  この機会に、人材業界で起きていることを考えてみることにしました。  まず、今後の労働市場を展望してみると、何と言っても少子高齢化によって生産年齢人口が大幅に減少する見通しで、それに対する企業の仕事量が減らなけ

ターゲティングはもう古い、セレンディピティーな動画広告の時代!~会社説明会に隠されたヒントとは?~

 日経電子版の記事【会社説明会で「刺さった」「ガッカリ」 違いは何?】は、就活生の真剣な眼差しの注がれる会社説明会にも出来不出来がある、というリポートです。一読、「なるほどね」と思ったものの、その時はそのままスルーしてしまいました。ところが、数日して日経電子版の保存記事を見直していた時、あることに気付きました――  「会社説明会って、ある意味、『動画広告』じゃなかろうか!」  会社説明会という『動画広告』は、就活生という『ユーザー』に、会社という『商品』をアピールする場で

『StaaS』(ステーション・アズ・ア・サービス)という発想

 日経電子版の記事【アパレル大手、試着は駅で 通販の弱点補う】で、ネット通販の弱点である『試着』の機会を駅に設けた拠点で提供しよう、という動きがリポートされています。  そもそも、ネットとリアルには、それぞれに、ユーザーの買物体験を阻害する要因が存在しています―― ▶買物体験の阻害要因 (ネットの場合)  試着の機会がないので、サイズをはじめとして、着心地、フィット感、質感、色目、手持ちの服との相性、全体の印象などが定かには分からず、極論すれば、『買う』という行為が『賭

待ったなし、ソーシャルメディアのリデザイン~脆弱性・CSR・人間らしさドリブン~

 様々な問題が噴出するソーシャルメディアも、ここへ来てコーナーに追い詰められ、いよいよ自らのビジネスモデルをデザインし直す時が来たのでしょうか。何故なら、現行のソーシャルメディアのビジネスモデルには、(1)それ特有の脆弱性、(2)長年にわたって果たして来なかったCSR、そして、(3)『人間らしさドリブン』の欠如したUXデザインという3つの時限爆弾が仕掛けられているからです。  日経電子版の好記事【FBの広告転機、データ企業「エシカル」が競争左右】なども参考にしながら考えてみ

岐路に立つターゲティング広告~『人間らしさ』ドリブンな発想が不可欠~

 2016年米大統領選でのフェイクニュース問題以来、不祥事が多発するソーシャルメディアですが、ここへ来て、また新たな課題が浮き彫りとなってきました。ターゲティング広告と『差別』に関する問題です。  そもそも、ターゲティング広告とは、広告主が様々な属性によって広告対象を絞り込んだ『カテゴリー』と、プラットフォーマーの持つ『個人データ』を掛け合わせて、特定のユーザーのページに特定の広告を表示するものです―― ▶ ユーザーのページに表示される『ターゲティング広告』  =広告主の

『人間らしさ』に寄り添うAI~『人間らしさ』ドリブンなUXデザインとは~

 『人間』に寄り添う人工知能AIのサービスには、一つの特技が要求されると思います。  『人間らしさ』を理解して反応することです。  人間はロボットではないので、『心配したり』、『遠慮したり』、『戸惑ったり』します。そのような『人間らしさ』への対応が出来ないと、真にユーザーに寄り添ったサービスとは言えません。  もちろん、何が『人間らしさ』であるか、サービスをデザインする人間が判断する場合もありますが、最近では、人間の行為の中から『人間らしさ』の部分を抽出できるAIも出てき

不可解な不正入学~時代の遺物となる「汚職と強欲の文化」~

 少し前になりますが、日経電子版に【一流大への不正入学関与、米セレブ数十人を起訴】という記事が出ていました。この手の記事、事件に接していつも思うのは、「何で、多額のお金を払ってまで、自ら『不幸』を買おうとするのだろう?」という疑問です。  不正入学をしていいことは、何一つあろうはずがありません。不正入学のような行為は、公正な競争を原理とした現代社会への明らかな裏切り行為であり、場合によっては刑事責任を問われかねないものです。そして、何よりも、不正入学の最大の被害者は子どもで

噴出するソーシャルメディアの課題

 SNSを含むソーシャルメディアの抱える課題が浮き彫りになるような記事、事件は絶えることがありません。つい最近の日経電子版の記事からだけでも、【フェイスブック、転向の意味 曲がり角の「自由」なネット】、【フェイスブック、防げなかった銃撃生中継 NZ乱射】、【NZ銃乱射、SNSに犯行声明 ネットが犯行に影響か】など枚挙に暇がないほどです。  これら、様々な記事で取り上げられるソーシャルメディアの課題を一覧してみると―― ▶ソーシャルメディアの課題 ① ネット広告での個人情