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テクノロジーと社会

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2019年9月の記事一覧

すぐそこにあるイノベーションの種

 日経電子版の記事【さらば蓋の重し、共同印刷がカップ麺でピタリ素材】は、カップ麺をお湯で温める時に生じるあの難問――「蓋が開いてしまう」、「蓋が密閉できず熱が逃げてしまう」――を見事に解決するアイデアを紹介しています。  カップ麺をお湯で戻す時、蓋の縁を折り込んでみたり、箸で重しをしたりと様々に試みますが、どれも密閉とはいかず、隙間が出来てしまい、戻りが悪いような、食べる頃には冷めてしまうような不満を感じたことのある人は、それこそ無数にいると思います。問題は、なのに何故、今

急拡大する音声UIと個人情報

 日経電子版の記事【アマゾン「アレクサ」眼鏡や車にも 米IT、音声AIに力】は、ほんの1年ほど前まではその普及に半信半疑な向きもないではなかった音声UI(ユーザー・インターフェース)を利用したデバイスが、家電から自動車、ウェアラブル・デバイスへと急拡大している状況をリポートしています。  そもそも、音声は人間にとって最も自然なインタラクションであり、音声UIであらあゆる機器を操作できるようになれば、その利便性は大きく、音声UIを搭載したデバイスの優位性は明白です―― ▶音

『VR経済圏』の胎動~『VR✖SNS』は何をもたらすのか?~

 日経電子版の記事【フェイスブック、仮想現実のSNS「ホライズン」を開始へ】は、VRのSNSという新しいサービスに関するリポートです。  仮想現実と交流サイトを結び付けると一体どのような世界が実現するのでしょうか?――この2つを結び付けることで生まれるイノベーションには、計り知れないポテンシャルがありそうです。  そこで、具体的なサービスはさておき、一般論として『VR✖SNS』は何をもたらすのか、まず、その世界を構成する要素を、一般の『SNS』の場合と対比して考えてみます

「できるコト」と「やってはいけないコト」~「内定辞退率」問題を考える~

 日経電子版の記事【リクルート、焦りが裏目に 内定辞退率データ問題 マイナビと激しい競争】は、「内定辞退率」問題を深掘りした好記事だと思います。  個々の企業の問題はさておき、一般論として、そもそも「内定辞退率」はどのように使われるのでしょうか?採用する企業の立場になって考えてみると―― ▶「内定辞退率」の使われ方とは?(1)是非とも採用したいが、辞退する可能性の高い人材を発見して、   強力に勧誘する、または、有利な条件を提示するなどして勧誘する   ための施策を検討す

AIを始める前にやるべき事~会社の組織はイノベーションのエコシステムになっているか?~

 日経電子版の記事【AIを加速させる組織 WAVE)米エヌビディア日本代表 大崎 真孝氏】は、第4次産業革命の時代のアクセラレータであるAIを導入するためには、それ以前にやっておくべきことがある、という事を改めて認識させてくれます。  そもそも、会社がプロダクト(モノ・サービス)イノベーションを達成し、また、継続的にイノベーションを起こし続けられるようなプロセスイノベーションを達成するには、会社が、イノベーションを起こせるような組織=イノベーションのエコシステムになっている

『機能性』へと回帰するアパレル

 日経電子版の記事【カジメイク、防水×カジュアルに進出 レインコートで成長】は、アパレル業界の今後の動向について改めて考えさせてくれます。  記事でリポートされるカジメイクやワークマンの躍進に見られるように、私達消費者が衣料品に求める体験価値は、『ファッション性(流行)』や『デザイン性』から『機能性』へと変化してきているように思えます。もちろん、衣料品は、私達の体という外面にまとうものですから、衣料品の体験価値の要素から『デザイン性』がなくなることはありえませんが、ここへ来

時代は『3R+U』へと動く

 日経電子版の記事【関西でも「アップサイクル」の波 黒染めでユニホーム再生、衣服でスマホケースも】は、廃棄物(不要物・不用物)を原材料・エネルギー源として有効活用するリサイクルとは一味違う、廃棄物(不要物・不用物)となったプロダクトを(元のプロダクトの特徴を生かして)再加工し、新たなプロダクトに生まれ変わらせる取り組み=『アップサイクル』に関するリポートです。  まず、広くモノを大切に長く使おう、廃棄せずに有効活用しようという取り組み=『3R』を整理してみると―― ▶『3

イノベーションとは何か?~金属銘板のメーカーが作るワサビのおろし板~

 日経電子版の記事【ワサビの力引き出すおろし板「鋼鮫」、静岡の金属加工会社 (わが社の一押し)】は、金属加工会社がワサビのおろし板を作るという、まさに卓越した商品の開発、小さなイノベーションの好例ではないでしょうか。  まず、記事から、おろし板製作の経緯を整理してみると―― ▶おろし板製作の経緯(1)『ワサビの辛み成分の特性』・・・細胞組織が壊れ、空気に触れること                  で生じる。  ⇩ (2)『従来の最適なおろし板』・・・表面に細かい凹凸のあ

コト消費の時代のCSR(企業の社会的責任)

 日経電子版の記事【食品ロス減、製造現場から 大手各社が新法施行にらみ知恵】は、食べられるのに廃棄されてしまう『食品ロス問題』に取り組む企業に関するリポートです。  まず、記事などからロス削減に向けた施策の事例を整理してみると―― ▶ロス削減に向けた施策(1)鶏肉加工メーカー・・・X線検査では骨がないのにあるとの誤認の             多かったのを、AIによる識別で改善。 (2)菓子メーカー・・・製造工程を見直して賞味期限を延長。        ・・・賞味期限表

AIの可能性と限界

 日経電子版に限らず、AIに関する記事、ニュースは途切れることがなく、紙面のタイトルにAIの文字を見ない日はほぼない、と言ってよいくらいです。  AIは、5Gの普及に伴って加速するIoTによって収集される膨大なビッグデータを解析するのに不可欠な、第4次産業革命のアクセラレータですが、その可能性、ポテンシャルの一方で、AI警戒論、AI脅威論もまた盛んに論じられています。そのようなAIの限界について、最近の日経電子版の記事3本が大変参考になるので、そのポイントをピックアップして

不可能に挑む仕事

 日経電子版の記事【年収2000万円、週休3日 「できないと言わない」社長】は、明らかに不可能に見える案件にも「できないと言わない」会社のリポートです。  もし、技術的に不可能に見える案件を依頼されたらどうするか?――この記事を読むと、そこがきわめて重要な企業にとっての分岐点である事が分かります。  そこで、まず、そのような仕事のフローを記事から整理してみると―― ▶不可能に見える案件を依頼されたら……   ⇩        ⇩             ⇩   ①断る 

『IEaaS』のポテンシャル

 日経電子版の記事【ダイキン、売り物は「空気」 快適空間を定額提供 XaaSの衝撃】は、「空気」を売るという発想をリポートした興味深い内容になっています。  確かに、コト消費の時代のエアコンというものを突き詰めていけば、それは、エアコンという『モノ』(機械)ではなくて、空気の状態という『サービス』ということになり、エアコンの設置やメンテナンスなども含めた快適な「空気」の提供ということがメインテーマになってくるはずです。まさに記事でいうところの『AaaS(エア・アズ・ア・サー

ありえない『手段ファースト』

 日経電子版の記事【なぜ全社員プログラマーに 半導体製造装置のディスコ ディスコの大作戦(上)】は、全社員=プログラマーという、ちょっと聞いただけでは突飛な施策に関するリポートです。  そもそも、会社には『目的』と『手段』があり、より目的に近い部署と、より手段に近い部署があるようなケースが多いのではないでしょうか――例えば商品開発部と情報システム部です――。そのような場合には、よく言われるような『手段の目的化』、『手段ファースト』な組織運営がまかり通ってしまうリスクが潜在し

事業承継の本当の敵~立ちはだかる流儀~

 日経電子版の記事【奮闘する「ムコ殿起業家」 衝突覚悟で老舗を大変革】は、改めて事業承継の難しさを考えさせてくれます。  そもそも、歴史の長い同族会社など、中小企業の存続が危ぶまれる昨今、盛んに後継者難、後継ぎ不在が叫ばれますが、本当にそれが根本原因なのでしょうか?  ――何故、後を継ごうと名乗り出る者がいないのか?  ――何故、後継者がいないような状態になってしまったのか?  この問いに対する答えが、この記事にはあるように思います―― ● これまでの流儀を否定され