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『天使の翼』第13章(5)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 盆地の中に、盆地の上空に入った瞬間、エリザの巨体がフッと軽くなり、わたし達は、風のない静かな世界を、文字通り軽やかに漂う、いや、滑空していた。
 眼下に広がるのは、あのデビルの生息地のあった高山の盆地よりは小振りだったけど、大きな都市であることに変わりはなく、盆地中央の湖――カルデラ湖だろうか――を取り巻く高層ビル群と、その周囲に広がる大小様々、新旧様々な建物と緑地帯のパッチワークが美しい。その緑と人工物のパッチワークは、盆地を取り巻く山肌の稜線近くまで覆いつくしており、盆地の外の荒涼として過酷な環境とは別世界のようだった。……稜線上に立つ建物は、おそらく高価な別荘なのでもあろう、そのガラス張りの居間からは、盆地の都会的な風景と、その反対側の荒涼とした岩山の広がり、そこで繰り広げられる朝陽から夕陽までの光の饗宴を心行くまで楽しめるに違いない……

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