10月の蝶たち
朝夕など肌寒い日の増える10月、昆虫撮影のシーズンも終わり、かと言えば実はそうでもない。
例えばクツワムシ・マツムシ・キリギリスなど秋の鳴く虫がどんどん出てくる、というのもあるが、私の場合は断然チョウの仲間である。気温が下がり、動きが鈍くなり、花や葉の上に留まることが多くなり、また、太陽の光を浴びるためだろうか、夏場なかなか翅を開いて止まってくれなかったチョウが、翅を開いた状態で葉の上などに留まってくれるようになる……
私は、この時期はチョウの仲間を撮影する絶好の機会だと思っている。そこで、今回は、10月に入ってから私が自然の撮影によく訪れる白金台の国立科学博物館附属自然教育園で撮影した美しい『10月の蝶たち』を紹介しようと思う。
まず、本稿冒頭の画像でも紹介したトップバッターは、初夏から夏にかけてかなり高い所を高速で飛び回っていた(=撮影しにくい)アオスジアゲハ
だ。あのころに比べればグンと撮影しやすい。
一つ決定的な理由もある。初秋のこの時期、その蜜や花粉で多くの昆虫たちを支えているアザミの花に(この件に関しては別の機会に稿を改めて触れようと思っている)アオスジアゲハもやってくるのだ。アザミの花はそれこそ道端に咲いており、近くて低くて撮影し易いことこの上ないのである。
続いて登場のアゲハチョウは、翅を開いた状態で葉の上などに留まっているのをよく見かけるようになる。この時期は熾烈な生存競争の場でもある夏場を生き延びてきた個体もあり、翅がボロボロになっている勇者を見ることも多いが、この個体の翅はきれいな状態だった。
このアサギマダラに関しては、夏場よりかえって秋口の方が見かける機会が増えるようだ。アゲハチョウよりも大きな体を利したグライダー効果を使っているのか、あまり羽ばたくことなく、ゆらゆらと舞うように飛ぶ。
ムラサキシジミは、天候、個体差、光の加減や角度などによってそのメタリックな青紫の輝きが半減してしまうことがあるので、撮影には注意が必要だ。
ウラギンシジミは、その名の通り翅の裏面が粉を吹いたような真っ白で、飛んでいる時にはその裏面の白と表面の鮮やかな橙色がミラーボールのようにチカチカと交互に目に飛び込んでくる。そして、夏場はたまに葉の上などに留まってくれても翅を閉じた状態で(=味気ない白一色)、なかなかそのだいだい色を見せてくれない難物だ。それが、秋口には御覧の通り、葉の上でジッと休息状態に入ってくれる。大きなシジミチョウでインパクトがある。
そしてラストバッターは、ウラギンと比べるとずっと小さくて可憐なウラナミシジミ。その名の通り、翅の裏面に茶と白の波模様がある。翅の表にも裏にも個性があって、私が好きな蝶の一つだ。
このうっかりすると見過ごして通り過ぎてしまってもおかしくないウラナミシジミは、おとなしくて、撮影している20分ほどの間、この花の周囲を全く離れようとはしなかった……
さて、以上10月に入ってから今の時点で撮影できている蝶たちのいくつかを紹介してきたが、これからもまだまだシャッターチャンスがあると期待しつつ筆をおくこととしよう。
【以上、『随想自然』第17話】
(インスタグラムhttps://www.instagram.com/angelwingsessay2015/で、主に東京都心で見れる自然の写真を紹介しています。)
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