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『天使の翼』第12章(87)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 強く、不思議なメロディーを数小節奏でて――
 一転、静かに、リズミカルに、エスニックなテーマを流していく……エリザの背に乗って、大空を勇躍するイメージ……早く、ゆったり……強く、小さく……
 わたしは、自信のあるギターで存分に聴衆を引き付ける……これだけで、皆はもううっとり……わたしは、音楽の驚き、心揺さぶる力を思いの丈を込めて紡ぎだす!
 そして―—

  まばゆく照り輝く、
   雪の冠頂きし峰々を遥かに望む
  見渡す限りの、
   岩石と砂礫の荒野のただなか
  大いなる碧き湖が姿を現す
  西方の峰々に向かいて長く伸び、
   対岸は霞の中
  この地には、わずかばかりの緑が、
   ところどころ
  あの木や草は、
   明日もあそこに生えているのだろうか
  わたしは、一人ぼっち
   吹き渡る風の中、誰もいない湖岸を歩く
  寂しく打ち寄せる波と砂利の音に
   耳を澄ませながら
   コートを翻し、長い髪をなびかせて
   あてもなく、ただただ、
   あの高き峰々のたもとに辿り着かんと
 

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