マイナス面の最小化とプラス面の最大化

 ネットとリアルの境界を取り払って、顧客が多様なチャネルから購買できる流通の仕組みを模索するオムニチャネルの戦場。日々のニュースに接していると、ここへきて一段とネット陣営とリアル陣営のバトルが激しさを増してきているようです。そして、今その主戦場は、ネットの領域ではなくリアルの世界にあるのではないでしょうか。

2月10日付の日経電子版の記事『京東、無人スーパー500店』は、とても示唆に富んでおり、色々と考えさせられたのですが、私がまず思ったのは、ネットとリアルという事が言われて久しい中、何故リアルは無くならないのか、という根本的な問いかけです。全くの自分流で考えてみたのですが、無くならない理由はいくらもあることに気付きました――

・買い物の楽しみ、というのはなくならないだろう。
・仕事帰りの買い物など、『ついで買い(何かをしに出掛けたついでの買い物)』というのもなくならないだろう。
・どんなにバーチャルリアリティーが進化しても、自分の手に取って、現物を見て買い物する、というのはなくならないだろう。
・高額品・医薬品等、ネットに馴染まない商品はいくらでもある。
・ありえない仮定だが、リアルがゼロになって、全てがネットになったら、それは、あらゆる物が宅配される、という事で、コストが膨大云々以前に、物流がパンクする。
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そこまで考えて、私は、はたと気付きました。以上挙げたようなリアルの存在理由は、すべてネットがリアルに進出する動機の裏返しであると――

・小売全体というパイの中で、リアルのシェアを無くせないのなら(リアルの占めるシェアが無視できない大きさがあるのなら)、ネットがさらに自分のシェアを拡大するには、競合するネットとのシェア争いより、リアルに切り込んだ方が勝算がある。
・その事が、オムニチャネルの充実となって、自社の顧客満足を高め、より多くの顧客を囲い込むことにもつながる。
・また、ネットで培ったテクノロジーを駆使して既成概念にとらわれない店舗を作るという戦略をとれば、勝機はさらに高まる。
・常に物流コストに悩まされてきたネットにとって、顧客が買った物を自分で自宅に持って帰ってくれるというのは、究極のコストカットである。
・リアルをネットのショーウィンドウ、アンテナショップとして活用できる。
・ファッション通販の最大のネックであるサイズ合わせなどを、リアル店舗の一角で行う、といったサービスも考えられる(リアルをネットの試着室として活用)。
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はたしてリアルはネットの攻勢を跳ね返せるのでしょうか?そう遠くない将来、リアルのマイナス面(レジ会計のわずらわしさ・品減りロス……)を最小化し、プラス面を最大化できた企業が勝ち残っているのでは……。

それは、リアルもネットもない、単に祖業がリアルだったかネットだったかというだけの、リアルとネットが完全に融合した『小売り』の姿なのではないでしょうか。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26749640Z00C18A2FFE000/

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