見出し画像

2019ブルベの旅#5:スキー場と神話の山を走り回る冒険の旅。427中国山地1000km

ブルベのコース設定には主催団体ごとにカラーがある。わけても厳しいコース設定で有名なAJ岡山さんの1000kmを走った。AJ岡山さんの1000kmは昨年の四国山地に続いて二本目。

獲得標高13165m(ルートラボ)。見ての通り平地がほとんどない。

攻略を練る。どこもかしこも上りで貯金を作りにくい上、宿の場所が限られておりとても難しい。結局、252kmの三朝温泉、634kmの浜田駅前、805kmの奥出雲の3か所で仮眠を取る計画にした。三朝温泉と奥出雲はペースによっては風呂と着替えだけとなることも覚悟。補給場所をチェックすると80km以上何も無い区間が少なくとも2か所。油断できない。残念ながら途中のグルメもあまり期待できなさそう。

[4/27]AJ岡山代表岡島さんのブリーフィングは、内容は厳しいものばかりなのだが、お人柄に和まされる。車検を終えて11:00にスタート。

初日は倉敷から鳥取へ中国山地を縦断する。兵庫と鳥取の県境の新戸倉トンネルまで165kmをいくつかピークを越えて緩やかに上る。128km地点のPC1時点で制限時間から-2:33の貯金。いいペースだ。さらに登って新戸倉トンネルを超えると鳥取市郊外まで40kmの下り。日本最大の池、湖山池の横を抜けて山地に戻り、一つ峠を超えて、2230三朝温泉着。順調な出足だ。

お世話になったちくま旅館さんは、到着・出発時間の無理を聞いていただいた上に、部屋にバイクラックを入れてくださる神対応。かけ流しの温泉につかり、栄養補給・ストレッチ・充電等行って、3時間仮眠する。

[4/28]二日目は中国山地を東から西へ横断し折り返すコース。320に宿を出発、蒜山高原に上る。気温は0度。289kmPC2に0534着(-0:42)。もう一つ峠を越えて通過チェックポイントへ下る。

主催者から、三国山トンネル方面が通行止めなので迂回するよう指示される。楽になったか?と思ったが、迂回先は高度は低いものの9%近い上りの続く鍵掛峠。甘やかしてはくれない。

497kmPC3に1722着(-2:46)。貯金を取り戻す。次の通過チェックまで100km弱補給難区間なのでがっつりと補給。

スキー場からスキー場へ、真っ暗な中黙々と登る。コース最高地点、標高829mの東八幡原を超え、584km通過チェックに23:38着(-2:44)。タクシーの運転手さんが「この辺はイノシシに気ぃ付けてね。イノシシは向かってきよるからね!」と親切なアドバイス。なるほど。

その先は、2018年全日本ロードレース選手権のコースとなった石見西部広域農道。7%強を超える上りと下りが繰り返される、インターバルトレーニングのために作ったとしか思えないルート。本当に心が折れそうになった。

なんとか予定通り0100に浜田のホテル着、634kmをクリア。二日目はひたすらアップダウン、心を洗われるような景色もグルメも無く、精神力を試される一日だった。5時間の仮眠を取る。

[4/29]三日目は中国山地を西から東へ横断する。0700にリスタート。山間部のアップダウンを繰り返しながら、今日のメイン三瓶山に向かう。こんな感じでまっすぐ行けるところをわざわざ回り道して登らせるところもAJ岡山さんらしい。

とはいえ昨日とは違い美しい風景が広がる国立公園内のヒルクライム。男女三瓶山と高原の風景を堪能。

三瓶山を下り、二つ三つきつい峠を越える。その後出雲市郊外まで27kmのダウンヒル、そしてその後奥出雲まで27kmの上り。土砂降りになってきた。

奥出雲のPC5は18:05着(-2:46)。予約しておいた田中屋旅館さんに向かう。貯金は少ないが、この先ゴールまで(時間制限のない)通過チェックのみなので余裕はある。風呂に入り、レインウェアやシューズを乾かし、送っておいた着替えに交換。チェーンルブも補給する。3時間ほど仮眠。

[4/30]最終日は中国山地を斜めに横断して倉敷へ向かう。23:30リスタート。島根と広島の分水嶺、おろちループに向けて上る。天候は大雨、気温は5度でかなり厳しい。

そしてこの後最大のピンチに直面する。おろちループからは26kmの下り。途中は何もない。どしゃぶりの中の下りでどんどん体温を奪われ、ついに震えが止まらなくなってしまう。トンネルに避難し、肌着をモンベルのLWからHWに替えても震えが止まらない。一瞬「遭難?」が頭によぎる。

が、たまたま通りがかったランドヌールさんがかけてくれた「大丈夫?がんばりましょう!」の一声で気持ちが蘇る。エマージェンシーシートになるマルトの非常用輪行袋をジャージの上から体に巻き付け、上にレインウェアを重ねると、ようやく体の震えが止まった!下ってコンビニにたどり着き、カップヌードルで暖まり、使い捨てのレインウェアを買ってピンチを脱した。

その後は無事帝釈峡を抜け通過チェックの866km地点神石郵便局に3:13着(+0:51)。

そして今回のブルベで唯一最も心を洗われた風景に出会う。空が徐々に白む中、いくつかの峠を超え、森の中の一本道をしばらく登る。すると突然この風景があらわれる。

吹屋の町。かって近くの銅山の鉱山町であり、銅から作るベンガラという塗料の唯一の産地として繁栄を極めたらしい。付近には八つ墓村のロケに使われた、やはり銅の豪商の邸宅だった広兼邸もあり、昼間は観光地として人気のようだ。しかし到着は0630(-0:20)。人一人おらず、何の物音もしない。まるで天空の失われた町に入り込んでしまったよう。しばし瞑想する。

吹屋を過ぎれば残りは80km。しばらく下り基調でこのまま倉敷か?と思わせて、最後に二つ峠を越えさせるあたりは(失礼ながら)本当にAJ岡山さんらしい。

11:07、認定時間72:07(-2:53)で完走。

やはりAJ岡山さんらしく、走力、知力、精神力全てが問われるコース。派手な大きな山は無いけど次から次へとピークが現れる渋い厳しさだった。完走の嬉しさはひとしお。

今回も楽しい旅をさせて頂きました。AJ岡山さんありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?