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プリニウスについて

前回に続き、私の敬愛すらプリニウスについて書きます。
今回は私の好きなプリニウスのエピソードから1つ。

皆様は「ラオコーン」というヘレニズム期の傑作である群像を知っていますか?
かなり有名な大理石彫刻であり、ヴァチカン美術館に展示してあるので知っている人、見たことある人も多いかと思います。

プリニウスはラオコーンについても博物誌の中で記述を残しています。
彼のラオコーンに対する最も有名な言葉は「全ての絵画、彫刻の中で最も称賛すべき芸術作品」です。
私がこの言葉を知ったのは受験生の頃にレッシング著の「ラオコオン」を読んだ時です。
かなりインパクトの強い文章だったので、はっきりと記憶に残りました。
そして、年月を経て、これがプリニウスの言葉だと知ったときの衝撃たるや。。

そんなラオコーンは古代ローマ時代はパラティーノの丘にあったティトゥス帝の邸宅の中庭に飾られていた、とプリニウスが記述しており、先述の言葉が続いています。
そして、彼はこの傑作は「1つの大理石」から彫られている。と明言しました。

そして、ルネサンス期に多くの天才芸術家がプリニウスのこの記述を読み、信じ、その彫刻に負けない素晴らしい彫刻を彫ろうと切磋琢磨しました。
ミケランジェロ、ジャンボローニャ、そしてドナテッロと素晴らしい技術を持った彫刻家が挑戦しました。
彼らは高い志のもとに必死にヘレニズム期の傑作に挑み続けました。
「必ずつくってみせる!越えてみせる!」そんな言葉と共に必死に彫っている姿を思い浮かべてしまいます。
その結果としての最も有名な彫刻がフィレンツェのアカデミア美術館にあるダヴィデ像といわれています。
こちらに関する小話はまた今度。

そして1506年にローマのコロッセオ近くにあるネロ帝のドムス・アウレア近辺からラオコーンが発掘されました。
ミケランジェロはすぐさま現場に駆けつけ、遂にその彫刻を彼の眼で観ることができました。
そして、調査の結果、ラオコーンは大きく4つ、合計7つのパーツで造られていました。

なんと!プリニウスの記述は完全に間違っていました!
ただ、その彫刻の接合部は物凄く高い技術力で認知できにくくなっていたとのことです。
私はその時のミケランジェロの気持ちを勝手に想像しました。
「なんだよ!1つじゃないじゃん!めっちゃ頑張ったのに!」

ただ、プリニウスのその記述のお陰かは分かりませんが、少なからずの影響をミケランジェロがダヴィデ像を彫る際のモチベーションに与えたのかもしれません。

まさに歴史的大迷惑??
ではないのかな、

彼のおかげでルネサンス期の傑作が生まれた、とも言える気がします。

プリニウスの人間的面白さを実によくあらわしたエピソードだと思います!

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