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子どもが暮らす環境を自由に選べるように(SG在住草埜健太さん、圭紀さん)

子育てはどの国が一番なの!?
これまで、いくつもの国の子育てのお話を聞いてきましたが、何にせよ一長一短あって、すべてが最高の子育て環境はおそらくないんだろうと思います。
そりゃそうですよね。
すべてが思ったとおりなんて、この世のどこにもありません。
だからこそ、もっと一生懸命考えないといけなんだなぁと思うに至っています。
子どもの将来にどんなこと(ギフト)を届けたい?
いろんな国のいろんな事情は子どもの生きる力を育めるだろうか?
自分たちの現状ならどこまでを届けられるだろう?

とはいえ、すぐにやりましょう!といってもなかなか難しい。
なので、定期的にゲストをお招きして、実践のイロハを教えてもらっているも、「なるほど!子育てザ・ワールド」の魅力なのかなと手前味噌ながら感じております。
今回は、夫婦で決断されてシンガポールに移住された草埜健太さんと圭紀(たまき)さんにお話を伺いました。
今回もどうぞお付き合いください。

草埜健太さんのご紹介

第6回目(10月18日(日))ゲストは、草埜健太(くさの・けんた)さん。

10歳で渡米した帰国子女。
ハーバード大学を卒業後、数々の外資系金融企業を経て、現在日系IT企業トランスコスモスの新規事業開発に取り組む執行役員。
子供に英語を身につけさせるため、2012年からシンガポールに生活の拠点を置く。
YouTubeチャンネル「ハーバード大卒の英会話 by Kenta」を運営。

もうウェビナーでは少し詳しくご紹介いただきました。
生まれは北九州で、ごくごく普通のサラリーマン家庭で育てられたそうです。
お父さんの転勤で、10歳の頃にアメリカにいくことになります。
その後、4年で家族は日本に帰国するも、健太さんは英語のほうが慣れていたため、日本に戻って受験するよりも、そのままいたほうがいいんじゃないかということで、残られてそのままアメリカで学業をおさめられ、米IT企業に就職するわけですが、奥さんとなる圭紀さんに出会い、日本に帰ってこられるんですね。

奥さん(当時は彼女)を追っかけて仕事をやめて日本に戻ってくるという選択ができるというところがすごい!

そして、結婚。
2人のお子さんを授かったのちに、震災をひとつのきっかけにシンガポールに移られます。

自分は何者なのかに悩んだことがプラスに

アメリカで一人で生活してハーバード卒って聞いたら、もうその時点で人生の勝組!的なイメージを、我々はつい持ってしまいますが、健太さん自身は、自分は日本人なのに、アメリカにいるとアジア人に、日本に帰ると外国人に、旅行すると先進国民に。
自分の居場所が無いように感じてしまうこと、アイデンティティに悩まれたそうです。

ですが、この悩んだ経験が活きて、社会人になってからは居場所やアイデンティティをそのときどきで合理的に選ぶことができるようになったといいます。
居場所はともかくアイデンティティを合理的に選ぶという考えって、目から鱗ですね。

そんなご経験があったからこそ、「我が子にも同じように暮らす環境を自由に選べるようにさせてあげたい」と思うようになって、海外での生活をされるにいたるわけですね。

なぜシンガポールへ?

本当、なんでシンガポールなのか?ってことですよね。
僕は今までシンガポールは縁のない国だと思っていたので(物価が高いと聞くから)、ここすごく気になります!

健太さん)
子どもには、英語をしゃべれるようになってほしかったんですよね。
私は、けっこう得したと思ってるんですよね、バイリンガルだったから。
日本でもよかったんだけど、英語のスクールに行かせるもののまったく伸びなくて。
インターナショナルスクールもものすごく学費が高くって。
そうしたなかで、震災が起きて背中を押されたっていうのはありましたね。

Linda)
いろんな決断をするのに、健太さんのこれまでの生い立ちが関連しているなって気がしますね。

健太さん)
本当にその通りですね。

それにこの広い世界で、彼女たちの最も暮らしやすい場所は日本とは限らないんじゃないかなと思ったりもして。
というのも、「世界の経済成長率」は、日本は世界でもかなり低くて、先進国では最下位なんですよね。
「世界男女平等度ランキング」を見ると、日本の女性の所得は男性の半分しかなくて。
日本企業の女性役員の割合はノルウェーやフランスの10分の1以下ですし。
トップ大学の女子学生比率は、東大が19%に対してハーバード大は47%もあって。
いっぽうで、日本人女性は海外からものすごくモテることもわかっていて。
最近は、日本人男性もBTS効果で持てるようになっているとかいないとか(笑)

Linda)
うちの長男が、アメリカ留学したときにモテモテだっただけで、BTS効果を語るには十分かと(笑)

健太さん)
こういうデータやニュースは一部分で、個人差はあると思います。
最終的にどこで暮らすかは本人次第だし、本人が日本で暮らしたいといえばそれはもちろん尊重したいと思っています。

ただ、私自身がしたいのは、言語という力を身につけさせてあげて、どういう国で暮らすかを選べるようになってほしいという、「選択肢を与えてあげたい」ということなんです。
そこで選んだのがシンガポールだったんですね。

理由は結構単純で、「英語と中国語の両方を身につけられる」からなんですね。
英語と中国語を身につけることができれば、世界のほとんどどこでも言語が通じるようになるんです。

ほかにもシンガポールの理由をあげるとすると、学力レベルが相当高いということですね。
国際学力テスト(PISA)では読解力、数学、科学がすべて一位です。
治安面もシンガポールは日本よりも安全だし、世界の天災リスクも低い。
セーブ・ザ・チルドレンによる子どもが育つ環境ランキングでも、シンガポールは第1位。
住んでいて本当にそうだなって思いますし、とにかく子どもを育てていて安全安心だなと思うんですよね。

Linda)
そっかぁ・・・データで見るとやっぱり納得ですね。

ATSUSHI)
いやぁホントに。
僕もLindaさんと一緒にこのプロジェクトやりたいって話した一番の理由も、「子どもが暮らす環境を自分で選べる選択肢を提供してあげる」にはどうすればいいかなっていうことがあって、すごくわかるなぁと思って聞いてました。

Linda)
でも、そこの背景には草埜さんが紹介してくださったように「このまま日本でいいんだろうか?」っていう前提があるからなんだろうね。

健太さん)
逆に、私たちは日本のことをよく知らないから、未知への不安というのもありましたよ。

シンガポールで、お子さんたちの学校はどうしてる?

圭紀さん)
子どもたちは現地校に通わせています。
来たばっかりのとき、幼稚園の頃はインター(ナショナルスクール)に通わせていましたけど、小1にあがるタイミングで、英語と中国語をマスターしてほしいと思って現地校に入りました。

健太さん)
あと、安いからです(笑)

圭紀さん)
ただ、現地に来たときは、現地校について悪いうわさしか聞かなかったので、現地校でいいのかなって悩みましたね。
「ホントに現地校入れんの!?」「かわいそうだからやめたほうがいい!」とかすごく言われました。
よくよく聞くと、人生を決めるテストが小6であって、勉強を苦に自殺する子がいたりとか、みんなメガネばっかりで遊ばないとか、子育てするうえで恐怖をあおるようなことは言われましたね。

情報を仕入れずに来たので、直前でいろいろ見て回りました(笑)

でも、実際に入れてみるとすごくよくて。

健太さん)
シンガポールの現地校は詰め込み式っていわれるんですよね。
インターナショナルスクールは、それよりも想像力を育む教育をするということがあって。
詰め込み式だけだったらダメかもって思うんですけど、それだけでさっき言ったような結果が出るかなぁって思いますよね。
たしかに、「?」って思うことはありますよ。
娘の学校で「タレントショー」っていう自分の特技を見せるイベントがあって、それに娘が出たときのことなんですけど。
それまでのショーは小学校ということもあって、歌だったら童謡とか子どもっぽいことをやってたなか、娘がポップを歌ったらもう大好評で!

Linda)
ホントはみんな歌いたかったけど、同調圧力的なものがあったりしたんですね。

健太さん)
そうそう。
歌いたいけどやっちゃいけないって思ってたみたいで。
娘の歌で解放されたのか、それで次の年はすごく参加者が増えてたんですけど、うち9組くらいが「娘が歌った曲」で参加したんですよ(笑)
想像力ないなぁって思って。
日本ではまぁないと思うんですけど・・・

Linda)
いや、あるんじゃない?

ATSUSHI)
僕はこれ日本っぽいなぁと思って聞いてましたよ。

健太さん)
あの子みたいにじゃなくて、あの子の歌を上回るような・・・っていう想像が生まれなかったのががっかりで・・・全く同じですよ!

Linda)
それでも辞めることなく現地校に行き続けることになったわけですね。

圭紀さん)
期待してなかったのでよかったことのほうが大きかったなと思います。

Linda)
具体的にいうとどういうところが?

圭紀さん)
先生がちゃんと向き合ってくれるところですかね。
親に対しても媚を売らずに、おかしなところはおかしいって言ってくれるし、人としてちゃんと一生懸命に考えてくれるというところがすごく大きいですね。

ATSUSHI)
シンガポールでは、教育方針っていうのは学校ごとに決められるもんなんですか?
それとも、教育委員会のもとに学校運営がされるようなもんなんでしょうか?

圭紀さん)
国全体の教育方針は同じですが、学校ごとに違っていたりする事もあります。
アートが盛んな学校があったり、パイロットスクール(試験的に試みる学校)を設置して、いくつかの学校で試してみたり、なんでも早く試していくことが多いです。
あとは、政府が作った学校じゃなく、修道院とか教会とか、成り立ちの違う学校もけっこう残っていて、そこはそこで独自の取り組みを組み込んだりしているんですけど、政府もその辺りは尊重するようにしています。
あと、シンガポールではみんな現地校に行くことになっていて、お金持ちだろうが通わせたくなかろうが関係なく。
全員が小6までの教育を一定レベルまで受けさせることを徹底しているんですね。(その結果を確認するのが小6のテストなんですけど)

Linda)
現地の子たちは、学校学区は指定されているもの?
それともいい学校に行くのに引っ越したりしているの?

圭紀さん)
いい学校(人気の学校)に入れたい人は、そこに入れるために引っ越します(1km〜2km圏内に入っていないと応募が多かった場合にはくじ引きに混じれないため)。
永住権持ちや外国人は選べないんですけど、そういう人が多く集まる現地校というのがあって、そこはいろんな人種の人がいて、インターみたいになってます。

健太さん)
インターは高くて、施設はすごくいいんですけど、この全部を使いこなせんのかな?って、費用対効果考えたらどうだろうって。
現地校も、国が教育に力を入れているから施設は全然不自由ないんですよ。
あと、先生の質。
現地校でも優秀な先生が多く、インターの先生に劣ってるとは思えません。少なくとも学費の差ほどは。

圭紀さん)
常にアップデートしていかないといけないんですよね。
資格を取ったら終わりというわけではないところ、どこもそうだと思うんですけど、その真剣度が違う気がします。

健太さん)
あと、コロナのときの対応っていうのも全然違っていて、日本でも学校が閉鎖されて大変なことになっていたと思うんですけど、シンガポールは本当に早かったんです。
現地校のほうが早かったくらいで。
インターはしばらく授業にならなくて、学費返せ~とかっていうのが起きてたらしいんですけど。
オンライン化も準備がされていて、すぐに対応できたんですよね。
シンガポールの規模だからできたことかもしれないけど、そういう時代にマッチしたことが常にできていますよね。

シンガポールって高くないの?

ATSUSHI)
そんな話聞いたらシンガポールえぇやん~って思いますよね。
高いイメージがあるなかで現地校安いっていうお話があったんですけど、生活面はいかがですか?

圭紀さん)
やっぱり生活費は高いですよ。
でも、安く暮らそうと思えば、ローカルの人たちが暮らしているような場所に住むとかにすると、できると思います。
外国人も抽選にあたれば現地校に入ることができるんですけど、年々値段が上がってきていて、中学校入学時にインターと値段を比較したり、日本に帰られる人もいたりします。
足りないと感じるものが家庭によって違ったりするので、日本的なことが育っていないと感じたりということもあるみたいです。

健太さん)
懸念点としては、よすぎるので平和ボケしてるところと、小さな国なので井の中の蛙的にならないかなってことかなぁと。
小さい国なので、チョット特殊ですしね。

ATSUSHI)
それは意外!?
シンガポールは進んでるイメージだったのでここでやれたらどこでもやれる!っていうイメージありました。

健太さん)
やはり人口が圧倒的に少ないせいか、特にアートやスポーツではシンガポールのトップレベルというのが、世界のなかではそれほどでもないって感じなんですよね。

日本でも国際感覚は養われる!?

ATSUSHI)
海外で子育てされている方々って、日本のことを子どもに残しておきたいっていうことをすごくおっしゃいますよね。
海外での子育て経験がない僕なんかからすると、もう・・・いいんちゃう?って思ったりもしますけど、そういうもんでもないんですかね。

圭紀さん)
そうですね、やっぱり日本人なのでいいところは知ってほしいなっていうのはありますね。
ただ、それに縛られてんのもチョットどうなんだろうって思うんですけど。

健太さん)
僕は自分が日本人だなって思ってるんですけど、まわりからはズレてるっていわれるんですよね。
娘たちはもうその先を行ってると思うんですよね。
私が常識と思っていることが、彼女たちはもうそうじゃないんでしょうね。
彼女たちの日本はヒカキンとかのいる日本だから。
私自身も、日系企業で働いていて知らずに傷つけてしまっていることもあるかもしれないなと思っていますし、日本のことを知っておくっていうのはやっぱりプラスだと思うので、そういう意味で、知っておいてほしいなと思いますね。

ATSUSHI)
なるほど~。
さっきの話でもそうでしたけど、時代にマッチした動きをすっと取れるシンガポールをはじめ海外を見ていて、日本はそれがなかなかできないので、だからもういいんちゃうかって思って聞いたんですけど、たぶんそうじゃないんですね。
僕らが海外の文化を知ってほしいっていう思い出提供するのと同じ感覚なんですね。
だから、残したいっていうよりアップデートというか、新しく取り入れてほしい知識として日本を伝えようとしているんだろうなっていうことを、お話をお聞きしていて感じました。

学歴は効率がいいブランドのようなもの

Linda)
学歴って大事だと思いますか?
ハーバードを卒業されていることもあって、誰もが知る名だたる大学に進学することっていうのは重きは感じてますか?

健太さん)
知らない人と初めて会ったときに、その人のことを知るのって時間がかかるものだと思うんですよね。
特に、自分が雇用主だった場合に、その人が言うことや提出したものだけで判断すのはすごく重たいじゃないですか。
そういうときに学歴ってすごく効率がいいんですよ。
少なくともこの水準は満たしている人なんだってことがわかるので。
でも、必ずしも大学自体が大事かというとそうでもないなとも思っていて。
ほかに、テストとかほかの手段があればいいんじゃないかって思いますよ。

これってよくある話なんですけど、ハーバード大生が優秀なのは、決してハーバードで何か特別な訓練を受けているから、というわけじゃないと思うんです。
要は、ハーバードで教えていることがすごいんじゃなくて、その合格水準を満たしたということがすごいってことなんですね。

だから、学歴は重要なんだけど、必ずしも学歴じゃないといけないかというとそうでもないと思います。

私たちがシンガポールで見つけたなるほど!

圭紀さん)
なるほど・・・ないですけど(笑)
う~ん、でもどこに住んでも、どこの学校に行っても、目指す方向は同じで、グローバルに生きていくことを目指してるんだなってことは、シンガポールに来てすごく感じました。
ひとつの答えはなくて、みんないろんなことを知って、情報を選んで、子どもの個性を観察しつつ、ピンとくることをやっていくしかなんだろうなぁと。

Linda)
わたしは今の話なるほどって思った。
健太さんは?ハードルあがっちゃった?

健太さん)
合理主義っていうのはこういうことかっていうのを、シンガポールにきて感じましたね。
シンガポールは、お金を有効に使って物事を解決していく国なんですね。
たとえば、車の渋滞の問題をどうやって解決していくかというと、ただただ値段を上げるんですね。
シンガポールって、車を持つだけでも権利を買わないといけないんですよ。
それが500~600万円くらいするんですよ。
そこから車を買わないといけなくて、それが日本の3倍くらい。
そうやって車を持てる人口を減らして、渋滞を緩和させようとしたりするんです。
教育に力を入れていることもすごく合理的で。
教育水準が高い国って、経済成長率も高いし、治安もいいし、いろんなメリットが得られるんですよね。
ここまでやるかっていうくらいお金をうまく使っていて、優秀な生徒にはお金(商品券)をあげるんですよね。
とにかく合理的なところが、シンガポールのなるほどでしたね。

Linda)
わかりやすいよね。
日本は逆にわかりにくい、わかりにくすぎるのかもしれない。

ATSUSHI)
いやぁ、めっちゃ勉強になるわ。
シンガポールって本当にちゃんと勉強したことなかったんですけど、合理的に物事判断することと、みんなが同じ方向を向いているってことは、日本ではほぼほぼないので、それが実現されている国ということがわかって、遠い気がしていたけど、実はすごく近道なのかもしれないなと思いました。

いかがでしたか?

今回もおつき合いいただきありがとうございました!
シンガポールもメチャクチャ素敵でしたね。
そしてやろうと思ったら何でもできるんだろうなっていうことが改めて分かりました。
いっぽうで、住んだら住んだで課題も見つかるわけで、そのなかで自分たちがどうふるまっていくのかを常にアップデートしていくことを忘れないようにしないといけませんね。
たぶん、日本っていうのは合理主義から少し離れてしまったからなのか、アップデートを続けることを忘れているような気がしました。

教育や子育ては常に変わっていくことを忘れないようにして、今後もお付き合いをいただければと思います。

で、次回なんですが、12月はお休みです。
次は年が明けて1月を予定していますので、そのときまでどうぞお楽しみに!

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